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異界の師、弟子の世界に転生する  作者: 猫狐
三章 破滅のタルタロス
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レテ、十五歳の誕生日 2

四月の半ばにある一週間の休み。そこで皆と列車に揺られながら駄弁っていた。


「いや、それでさー。ショウが上のベッドから勢いつけすぎてさー」

「ダイナーッ!その話はやめてくれ!」

「落ちたんだよね〜」


あっはははと笑う自分達に対してショウはがっくしとしている。というかあのベッドの構造で落ちるのか。凄いな。ある意味で、だが。


「そうだ、シアとレテの部屋って何か起きたりしないのか?」

「ん?私達?」


ショウが自分達に話を振ってきた。何か、何かと言われても……。


「特に何も無い……な」

「うん、特に何も無いね……」


絶対そんなことはないとばかりにこちらを見てくるニアやファレス、それにショウ。

何が起こるというんだ。


「でもでも、レテ君が置いてくれたあのお香の魔道具はリラックス効果本当にある!寝る前につけてくれるんだけど、ぐっすりだもん!」

「寝つきが元々良いから、それに追加した感じだな。自分も寝付き悪くはないし」


そんなこんなで話していると、ファレスが次の駅で降りるよー!と話す。皆で頷くと、降りるために最低限持ってきた手荷物を纏めた。


列車から降りて、少しばかり馬車に揺られてファレスがココ!と到着した場所を指さす。皆唖然としている。その中で初めに口を開いたのはクロウだった。


「でっけぇ……」


その言葉通りでかい。四階はあろう高さに端から端まで視界に入り切らない大きさ。いや本当にデカい。


「ふふーん!大きいでしょ!だから皆でレテ君のお祝いできるってわけ!」

「……先に手紙送っておいたから、部屋も大丈夫」


ドヤ顔する二人に対して、シアが問いかける。


「二人、もしかして……どっかの貴族……?」


その問いかけに二人は頷く。


「イシュリアからちょっと離れた場所に領地を持っていてねー!あ、そこはラクザ、って言うんだけど」


ラクザ、ラクザ……自分の頭の中で検索をかけると思わず「うぇっ!?」と声が出る。


「レテ、知っているのか?」


クロウの問いかけに勢いよく答える。


「ラクザって言えば有名な港町だぞ!?海産物……海から取れるものが滅茶苦茶美味しかったり、真珠っていう宝石や綺麗なものが沢山売っていたり……とにかく、イシュリアの貴族の中でも無くてはならない場所を統括しているって事だぞ!?」


「うげぇ……」


皆がちょっと怯えた視線を向ける中、ファレスとフォレスは笑う。


「いいよそんなに畏まらなくてー!私たちはそもそも友達、でしょ?」

「……うん、友達。だから緊張とか遠慮とか要らない。……あ、入っちゃダメな所は鍵がかかってるから大丈夫」

(緊張と遠慮をするなって方が無理だよ二人とも……)


何となくファレスの豪胆さが分かった気がしながら、家の中に入った。



「おかえりなさいませ、ファレスお嬢様、フォレスお嬢様」


中に入ると、どこか落ち着いた雰囲気のあるおじ様が迎えてくれる。恐らく執事長だろう。


「ただいまおじいちゃん!」

「ただいま……友達、連れてきた」


二人が挨拶すると、自分がペコッと頭を下げるのを見て皆が慌てて下げる。すると何やら撫でられる。横を見ると、皆の頭を撫でているようだ。


「お嬢様のお友達でありますね、皆良い子ばかりでございます……。申し遅れました。私はここの執事長として家を統括しております、フレッドと申します。他の執事やメイドは皆、緊張させないようにと最低限の姿しか表さないようにと言っておりますが、何かお申し付けの際は何なりとお呼びください」

「ハ、ハイ……」


思った以上のヤバさに自分がガチゴチになる。すると、ファレスがフレッドに自慢し始める。……自分、レテの事を。


「この子がレテ君!私とフォレス二人相手にして完封、しかも学年対抗で上の子にも勝っちゃったの!」

「……底が見えない。おじいちゃんも、戦ってみる?」

(なんで戦う流れに持っていこうとするフォレスーッ!)


自分を紹介されながら、自分も自己紹介をする。


「えっと……今回、誕生日で呼ばれたレテです。……さっきの話は本当です。けれど、戦うなどは勘弁して頂きたく……」

「ほっほ、なるほど。私ではなくこの家を守る警備の執事と一戦交えて実力を見たく存じますが……戦闘を望まないのであればその意志を尊重いたします。そして、お誕生日。誠におめでとうございます」

「はい、ありがとうございます!」


周りの皆も自己紹介していく。ニコニコと見守るフレッドさんは全員の自己紹介が終わると、部屋へと案内すると申し出てくれた。


「まずは皆様の部屋へとご案内致します。一人一部屋用意できるようなっておりますが、どなたか一緒に居たいなどの要望があればお聞きしますよ」


皆が大丈夫、というと自分も大丈夫ですという。すると一礼して、二階へと上がった。


「……一部屋が大きいね」

「いやほんとでかい」


ニアが唖然とし、ショウが混乱しそうな目ででかいと言っている。まぁ、確かに一人一部屋、学院の部屋よりも大きければそりゃそうなるだろう。流石貴族の豪邸といった感じである。


「……ん?」


何やら下では訓練をしている。戦闘訓練だろうか。それにしてはまだ若い……。


「おや、レテ様。お気づきになられましたか?我が家では、武術や魔術学院以外の場所で戦闘経験を積んだものに対してこうやって訓練をしているのですよ。家が大きいのも、その人数が多いためです」

「なるほど、納得しました」


自分達以外にも住み込みで訓練している人やメイド、執事さんがいるならこの大きさも納得である。するとファレスが爆弾を落とした。


「混ざってきなよ!」

「えっ」


皆もうんうん、と頷く。おいシア、お前まで頷くな。


「……誕生日だけどね。代わりに、どんなに全力を出してもここの秘密にする。ラクザに誓って」

「うん。どんな力を使っても、庭を壊しても……えっと庭を壊しても大丈夫?おじいちゃん」

「ほっほ、庭が壊れるなど日常茶飯事でございます。それにお嬢様二人を退けたその実力……本気を見られるのであれば、私もラクザに誓って」


全力、本当に全力を出しても良いのだろうか。


「本当に、全力を出して良いのですか?」

最近全力を出す機会は無かった。軍にフードとして混ざっている期間でも、全力は出せなかった。元々あちらはファレスとフォレスのような連携を学ぶための姿だ。


「はい。そしてどのような力を使っても私達、ここに住んでいる者は口外しないと約束いたしましょう」

「……では、混ざらせてもらいます」


そう言うと皆が喜ぶ。


「……レテの全力、かなり気になるな」

「ほんと、底が見えませんね」


レンターとミトロが言うとはは……と笑うしかない。

全力でやらせてもらおう。

いつも読んでくださりありがとうございます!

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