レテ、十五歳の誕生日 1
「そういえばさ、レテって十五歳になったんだっけか?」
冬が過ぎ、雪が溶けて過ごしやすくなった四月。ふとそんな時にショウが話しかけてくる。
「ん?……あぁ、たしかに。自分は今日で十五歳だね」
「なんか……反応薄いな。俺の時とか見てたろ?」
ショウの言葉に釣られてお昼ご飯の後の休み時間に自分の机に皆が集まる。
「そうそうだね。ショウなんて本当に飛び上がってたからね〜」
「たしかに、それに比べるとレテはあんまり興味無いって感じがするな」
ダイナとクロウが言うと、自分は苦笑するしかない。確かに行動できるまでの時間はかかったが、年齢はあんまり考えていなかった。
「興味無い訳じゃないよ?ただちょっと忘れてただけで……」
「えー!?自分の誕生日忘れちゃダメだよー!皆でお祝いしなくちゃ!」
ニアがそう言うと、レンターとミトロが頷く。と言われても、と言った感じだ。
「……そうだ!ウチ来ない?」
「ファレス、レテ君は家に返してあげようよ……」
ファレスとフォレスがお互いに別々の意見を言うのは珍しい。が、要は四月の一週間休みのある期間に二人の家に来ないかということだろう。
「なんで二人の家になるの?」
シアが首を傾げながら聞くと、二人は答える。
「ウチはね!とにかく広いの!だから、ここにいる皆で来て盛大に祝ってあげるのがいいかなって!」
「……勿論、無理強いはしない。でも来てくれたら皆喜んでくれると思う」
(皆?皆って、そんなに人いるのか!?)
自分は少しばかり冷や汗をかきながらも、どうしようかと思う。
「私は賛成!どっちにせよ、このまま寮に居ようと思ってたからね!」
「私もそうですね。本を読んで過ごそうと思っていましたが休みをそうやって過ごすのも良いと思います」
「俺も賛成だ!」
シア、ミトロ、ショウが賛成。父さんと母さんならきっと許してくれるだろうと思い、自分が口を開く。
「まぁ、自分の誕生日を盛大に祝って貰えるなら……嬉しいかな。今まで父さんと母さんにしか祝ってもらってなかったから、皆に祝って貰えるなら父さんと母さんも賛成してくれると思う」
自分が賛成を表明した事で、残ったクラスメイトたちも賛成の意を示した。
「……なら、俺も行こう」
「よし、そしたら自分も行くぞ。ファレス、フォレス、この人数本当に入るんだろうな?」
クロウの問いかけに対して勿論!とばかりに二人が顔を縦に振る。
(いや、どんな豪邸だ……?お偉いさんか?)
家に出す手紙はどうしようと考えながら、授業が始まるまでとりあえずのお祝いという事で皆から祝福の声を貰った。
思えば前世でもこんなに大量に貰った記憶が無い。不思議だ。前世でも学生時代があったはずだけれど……忘れてしまったのか。
(今は今、それでいいか)
「あら、父さんお帰りなさい。レテからお手紙が届いたのよ!」
レテ宅にて、父さんが帰ってきたのを見ると料理の手を止めずに顔だけ向けて、父さんに声をかける。
「お?手紙か!レテのやつから珍しいな。誕生日だからか?」
「それがね、中々面白いのよ」
くすくす、と笑う私に対して父さんははてなマークを浮かべながら手紙を朗読する。
「ええーっと?
『父さんと母さんへ。誕生日を迎えて十五歳になりました。いつも仕送りとかしてくれてありがとう。でも、今年は帰れそうにないです。一週間の休みを、友達の家で、クラスメイトの皆が祝ってくれるそうです。折角なので、シアも連れて盛大に祝われて来ようと思います。なので、ケーキはまた今度帰れる時にお願いします。レテより』
……あっはは!なるほどな!いい友達を持ったんだな。レテは。そういう事なら父さんは今度の休みに合わせてアグラタム様に交渉してみるかな」
そういう父さんに私は微笑みながら言う。
「もう。次の休みって多分夏休みよ?いつ取れるのかしら……それはそうと、はい!今日は帰って来れるって言ってたからアナタの好物作ったわよ!」
「おぉ……!シチューじゃないか!ホワイトシチュー!早く食べよう!」
「そんなに急かさなくてもホワイトシチューは逃げないわよ、もう……」
笑いながら父さんが着替えて、私が用意する。そこに一つ、お酒を添えて。
「それじゃあ我が子の」
「ええ、レテの誕生日が迎えられた事に」
「「乾杯」」
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