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異界の師、弟子の世界に転生する  作者: 猫狐
三章 破滅のタルタロス
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一方授業では

ゴーンゴーン……と不気味な音が鳴ると、スイロウ先生が声を上げる。


「皆こっちだ!一旦魔法の行使はやめてこっちに!」


見守っていたスイロウ先生の位置は少し距離があったが、それでもこの鐘の音を聞けば集まるしかない。


「敵が万が一にでも出てきた時は、先生に任せておきなさい。それでもダメな時は……皆はゆっくりと狙いをつけて最大威力の魔法を敵に撃つ。わかった?」


こくり、と私も含む皆が頷く中ふとレテ君のことが心配になる。


(……大丈夫かな。医務室に敵が出てくるとは思えないけど。ううん、彼は負けない。けど……)


その正体を考えるとシアは少し不安になる。敵が出てくれば彼は自然と力を使わなければいけなくなる。優しい彼の事だ。自分が学院の枠を超えた魔法であろうと使うのであろう。

そう思っていると、リーン、リーンと音が鳴る。どうやら敵が出てこずに終わったようだ。ふぅ、と息を吐くと皆も先生も安心した顔になっていた。


「よぉし!続きをやるぞぉ!」


そう言うとドン!とまた訓練用の的が先生によって生成される。私達もグラウンドに戻ると、それぞれ魔法を撃つ。


「はっ!」


私はレテ君に習って、色んな魔法の使い方を覚えた。魔力の練習法も、威力の上げ方も。上手くいかないことの方が多かったけれど、彼は根気強く教えてくれた。その中でも、自分の得意とする収縮系統を使って撃つ。

魔力を練り、人差し指だけ前に出して他の指を折りたたむ。そしてその人差し指に全ての水を文字通り収縮させ、一気に放つ。

結果は凄かった。的を素早く貫くと、結界に弾かれて盛大な音を出す。ぱちぱち、と皆から拍手が送られてくる。


「凄いなぁ!収縮系統の基礎が完成されている形のやり方だったぞぉ!」


先生が褒めてくれる中、皆も次々に感想を口にする。


「ほんとすごいな!冬休みの間にそんなに威力あがるものなんだな」

「しかも魔法の練り方も早かったね〜特訓したんだね〜」


クロウとダイナが感想を言う中、ファレスとフォレスが片方ずつ肩を掴んで聞いてくる。


「ねえねえ!どんな訓練法したの!?本読んだ?それとも誰かに教えてもらった!?」

「……それは、私も知りたい。同じ収縮系統として、学べる事がありそう」


誰かに教えてもらった、の部分で少しチクリとする。

彼に教えてもらった、と言えば納得はしてくれるだろう。しかしそれでは何故彼と一緒にいたのかを追求されてしまう。彼にこれ以上迷惑はかけられない。そう思って話した。


「えっとね、魔法の威力の上げ方とか……ほら、図書室にある本。あの中に丁度系統に関する本があったから、自分で考えてみて冬休みの間特訓してたんだ。勿論、本は持って帰れるから家で読んで特訓したけど!」


そう話すとスイロウ先生がふむ、と何か少し考える顔をする。先生には孤児である事は伝えてある。元々寮に泊まる気満々だったのだから、先生にも話を通しておかなければならない。


「そうかそうかぁ!良い術だったぞシア君!他の皆も是非彼女のように本を読んで、地下室や先生に声をかけて訓練所を借りるなりして特訓を重ねるんだぞぉ!繰り返すけれど、魔法は撃てば撃つだけ磨かれていくからなぁ!次!」


うまーく家の話題を避けている。どうやら地下室の本の事は本当だと信じてくれているようだ。その後も順番に魔法が放たれていく。皆確かに特訓をしたようだ。目を見張るものがある。

ファレスは付与系統で石ころに風を纏わせて打ち出したり。

ショウは火の剣をイメージした物を投げつけていた。少し時間がかかるが、出来るようになったという。ショウも珍しい顕現系統の使い手らしく、ポロッと漏らしていた。


「いや、これ俺努力したけどよ……レテのやつどうなってるんだ?剣を一瞬で生成して普通の剣と撃ち合うレベルまで持っていくって相当やべーぞ?」

「……彼に教えを請おう」

「レンターそれありだな!いつか詰まったら声かけてみるわ!」


元気な彼らしい。どうやら顕現系統同士でいがみ合わないようだ。というか、レテ君の顕現が異次元すぎていがむにいがめない、といったところか。

レンターとミトロに関しては、二人とも複合属性……つまり別の属性を織りまぜて的を倒した。皆がぱちぱちと拍手をすると、先生が一際大きな拍手をして声を出す。


「いやはや……皆すごいなぁ!冬休み一つあるだけでここまで伸びるなんて先生は感動したぞぉ!それじゃあこの時間はここまでだぁ!」


そう言って教室へと帰る。皆で知識の共有をしながら、ワイワイと帰る中、スイロウ先生はそれを楽しそうに見守っていた。



「あ、先に戻っちゃったか」

「レテ君!」


教室に戻ると、レテ君が机で本を読みながら待っていた。私達が戻ったことに気づくと、直ぐに本に栞を差してこちらに視線を向ける。


「皆強くなったけどよ、ただ……異界からの侵攻、大丈夫だったか?何も無かったか?」


ショウが結果と疑問を同時にぶつける。彼は少し苦い顔をすると、衝撃の話をした。


「実は医務室に異界からの敵が来てな。自分も戦おうとしたんだがジェンス総長が丁度その場にいたから、自分は邪魔になるから下がってたんだ。そうしたらアグラタム様が救援に駆けつけてくれてな、何とか無事だったよ」

「えっ!?ほんと!?無事で良かった!」


ニアが声を出すと、次々に皆も良かったと声を出す。その中、私も良かったと言いながら、彼の実力がバレていないことにホッとした。

いつも読んでくださりありがとうございます!

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