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異界の師、弟子の世界に転生する  作者: 猫狐
三章 破滅のタルタロス
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スイロウ先生の忠告

「おっ!皆集まってるなぁ!感心感心!」


スイロウ先生が来ると、皆が慌てて自分の席に戻る。その様子を見てうんうんと頷きながら皆の前に立つと、笑顔で口を開いた。


「よーし!皆顔をちょっと伏せろー!」


何をする気だろうか。とりあえず机に顔を付けると、皆も同じようにしているようだった。


「よし!全員伏せたな!それじゃ一つだけ質問するから答えてくれ!

冬休み、満喫できたやつは手を上げろー!」


バッと手を上げる。他にも手を挙げた子がいたようで、端々から音が聞こえる。


「……よし!手を下ろして顔を上げろー!」


そう言われたので顔を上げる。スイロウ先生は朗らかで、優しい笑みを浮かべていた。


「皆楽しめてよかったぞ!まさか全員手が上がるとは思わなかった!

先生は別に魔術の鍛錬でも、勉強でも、その他の事でも……そう!寝ることだってイイ!要は楽しめているかを確認したかったんだ!皆が楽しめたのならそれだけで先生は嬉しいぞぉ!」


皆は全員手が上がると思っていたのだろう。うんうん、と頷く中自分は横のシアを見る。

ニコッと笑う彼女を見て、本当に連れて行って良かったと思う。そうでなければ彼女は優しさ故に曇った笑顔で手を挙げてスイロウ先生にはバレたであろうから。


「いやぁ!皆曇りない笑顔だ!本当に楽しめた証拠だな!……さて、ここからは本当はジェンス総長が濁して言うのだが君たちは魔力が強いSクラスだ。先に授業より大事なもの……そう、命の為に伝えておく」


何時にもなく真剣な表情をした先生に皆が注目する。無論、自分とて例外ではない。


「……実は今日、両学院の生徒や他の人も含む一つの列車が襲われた。その場にいた人から聞いた話では守護者様とフードを被った人が撃退したらしい。しかし、ただ襲われただけでなく贄……つまり人質や生贄にされる可能性がある発言が敵から出てきたとの事だ。恐らくジェンス総長は攫う人が増えるから注意するように、と言うだろうが君たちは特にそういった者に狙われやすいだろう。くれぐれも注意してくれ」


その言葉に皆が怯える。それもそうだ、この年で攫われて何かの生贄に……なんて、怖くないはずがない。しかしこれは聞かせて正解な事だったと思う。これでSクラスの生徒は警戒を強めるだろう。


「……という事で、外に出るときは十分気をつけて欲しい!今日はこのぐらいで、後は明日の集会で言われるだろう!さぁ皆寮に戻っていいぞぉ!初日は自由時間だぁ!」


パンパン、と手を叩いてスイロウ先生が出ていく。すると皆が緊張が抜けたように息をつく。


「……贄、生贄……ですか。闇の魔法の禁忌の例であり、残酷なものです」


ミトロがポツリと呟く。自分も闇の魔法は使うが、生贄を使うような魔法は決して使わない。


「なんか怖いね〜対策のしようもないわけだし〜?休日は学院からあんまり離れないようにするぐらい〜?」


ダイナはいつも通りふんわりしているが、その声にも若干の怯えが混じっている。


「……生贄、か。なんでそんな事をするんだろうな。こんな平和なイシュリアに住んでいながら」

「さぁなぁ……?問題が無いとは思わねえけどよ、俺は本当に平和なイシュリアが好きだぜ」


二人の話を聞く。そうだ。イシュリアは平和だ。長寿であり、軍により平和は守られている。他の国からの侵攻なんてましてや……。


(……待て?イシュリア以外、この世界に国がない。確かに小さな村や国と言える領地はあるが、基本的に世界の全てがイシュリア統治だ。となれば、身を隠せる場所なんて少ない。軍の住み込みだってあるはずだ。どうやってアイツらは隠れている?)


タルタロス、と言っていた連中を思い出す。もし数ヶ月前に起きた失踪がアイツらの仕業ならばイシュリアの首都で起きたことになる。そんな事をすれば首都から逃げられるはずもない。

どこに、どうやって隠れている?


「レーテー君?ほら、私達も帰るよー?」


横から頬っぺをぷに、とされて我に返る。そうだ、それはアグラタムの方が諜報を動かしているのだから自分は考えなくても良い。


「あ!シアちゃん頬っぺた突っついてる!前は声をかけるだけだったのに!」

「……何か、やっぱり変化があった?」


ファレスとフォレスが興味津々とばかりに見てくる。シアもしまった、という顔をしたが落ち着いて言い繕う。


「ほら、さっきの顔見たら声掛けただけじゃ気づかなさそうだったからさ?同じ部屋な訳だし、もう突っつくぐらいは許されるかなーって」


「自分は嫌じゃないし、確かに声をかけられても気づかなかったかも。ありがとうシア」


どういたしまして!とお礼を言って長い髪を揺らす彼女に二人はそんなものかなー?と言いつつ教室を出ていった。

それを見てふぅ、と息をつく。そしてその後を着いていった。

頬を突っつくのは、彼女が自分に何か用事がある時に我が家で自然と出来た交流だ。上手くごまかせてよかった。

いつも読んでくださりありがとうございます!

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