表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異界の師、弟子の世界に転生する  作者: 猫狐
三章 破滅のタルタロス
45/270

休みが明けて

新章突入です

列車から降りて、学院へとシアと向かう。他の生徒もいる手前、手を繋いだりはしないが行きと比べると距離が縮まって、話す量が増えた気がする。行く前は話す量というか、シアがガチガチに緊張していたり不安だったりしていたから量が自然と少なくなったのだが。

学院の休み明け一日目はほぼ自由のような感じである。既に午後であるため、各自荷物を置き、全クラス共通で最後の授業の時刻までに席に着けば良いことになっている。全院集会は翌日の午前にして、そこから普通の授業に移るようだ。


「いやー、サンドイッチ美味しかった!似たようなものなら作れるかな!?」

「食堂のオバチャンに聞いてみよっか。材料持ち込みもアリなら似たようなものは作れると思うよ」


食べ終わってニッコリとしているシアに対して答えると、ふと唇の横にソースがちょっとだけついているのを見つける。


「シア、ちょっと止まって」

「何?……ひゃっ!」


そっと指でその部分を取って舐める。うん、ケチャップの味がして美味しい。そう思っていると、シアが恥ずかしそうにこちらを見てくる。


「……レテ君、言ってくれれば自分で取ったのに」

「……確かに」

「もー!天然!レテ君のいじわるー!」


言えば口の横を舐めたり拭くだけで済む話だな、と考えているとシアが軽く肩を叩いてくる。ぽこぽこぽこ。可愛らしい擬音がつくような、軽いグーパンチだ。


「ごめんって、じゃあ行こうか」

「うぅー!いつか仕返しするからっ!」

(いつかされるのか、気をつけねば)


口の横に食べカスをあまり残さないよう、丁寧に食べないとなと思いつつ笑いながら寮の方へと向かった。


「よいしょ、っと……」

「ふぅ、私たち、あんまり多くない方だけどやっぱり疲れるね」


荷解きが終わって冬休み前の部屋の形を取り戻す。それ程多くはないが、シアが両親の好意に甘えて何冊か本を借りてきたので、その分だけは増えたといった感じか。


「それじゃあ教室に行く?」

「いや、その前にサンドイッチが作れるかオバチャンに挨拶も兼ねて聞きに行こうか」

「あ!それ賛成っ!」


二人できちんと鍵を閉めて部屋を出る。

オバチャンはいつも通り、というか夜ご飯の為に働いていた。しかしどこか嬉しそうに見える。


「オバチャン、お久しぶりです」

「おやおや!嬉しいねぇ……皆こちらにぺこりと頭を下げてくれるんだけど、挨拶をしてくれる子は少ないんだよ。少し待っててね……はい。大丈夫だ」


オバチャンは本当に嬉しそうな声で振り向かずに言うと、何やら火の調整をしてこちらを向く。ニコニコとしていて本当にオバチャンは変わらない。


「冬休み、楽しかったかい?」

「とっても!楽しかったです!」

「はい。楽しかったです!」

「ほっほ!それは良かったね!やっぱりオバチャンは皆の帰る場所でありたいけれど、本当に帰る場所に帰られるっていうのは幸せな事だからね」


そう言うと、シアが頬を赤らめながらうんうん、と頷く。それをオバチャンがにこやかに見ているのを見て、オバチャンは知っていたんだなと思う。

思えばカウンセラー……相談役も誰も居ない中、誰に相談するかといったらオバチャンだ。きっとオバチャンに出自を明かして寮に残ることを前もって言っていたのだろう。


(おっと、本題を忘れるところだった)

「オバチャン。ここの厨房って、土日とか祝日とか借りられますか?」

「うん?あぁ、お菓子作りとかで使う子は全然いるから、朝昼晩、それぞれの料理を作る時間以外は使って大丈夫だよ!この厨房も広いからね!もちろんオバチャンが傍にいて見てる事が条件だけどね!」


そりゃそうだ。と思いつつ、安心して作れる環境があるのは幸せだと思いつつ頷くと、二人でありがとうと礼を言う。

そして教室に向かおうとした時、シアが引き止められたので自分も止まって戻る。


「シアちゃん、レテちゃんの家は……楽しかったかい?」

「とっても。暖かくて……私の、帰るべき本当の家になれました」

「そうかい!ほっほ、本当に良かったね……」


ちょっと涙ぐむオバチャンを後目に、二人で歩き出す。さて、何人いるのか。



「おっ。お前ら二人が最後か」

「みたいだね〜」


自分達以外全員いた。とりあえず席に座ると、ショウがこちらに来る。


「二人とも遅かったな!時間がキツかったか?」

「皆が早すぎるんだよ、なんでそんなに早いのさ」


笑いながら時間を確認する。リミットは最後の授業、今は午後の二つ目。後二つ残した状態で集まっているクラスがおかしい。


「それにしてもそれにしても!二人同時なんて!」

「……部屋の掃除?」


ファレスとフォレスは変わりない。ほかの皆も本を読んでいたり談笑していたりと全く変わらない。


「うん。ちょっと私が手間取ってた所にレテ君が来たから、手伝ってくれたんだ」


そうだな、今二人で同じ家に帰っていることがバレるとどんな事になるか分からない。ましてや擬似的に結婚の約束までしているのがバレたら最早話題どころか全生徒のネタになってしまう。それは避けたい。


「あぁ!なるほどね〜」

「……納得。シア、多そう」

「ちょっと!?何でレテ君は多くないみたいな印象を持ってるのかな!?」


そう言ってわー!と飛びかかりに行く彼女を見ていると、ニアがこちらに来る。


「シアちゃん、明るくなったよね!?レテ君、冬休み明けに手伝っただけ?それだけ?」

(なんて勘のいい女子なんだこの子は!?)


表情では穏やかな顔を浮かべるようにしつつ、ニアの視線に合わせてそうだよ、と頷く。するとニアはそれだけ素敵な助けだったんだね!と言って今度はミトロに絡みに行った。本を読んでいるのだから……と思ったが、本を閉じて話している。あれはあれで気が合うのかもしれない。同室であるし。

レンターもダイナやクロウ、ショウと混ざって雑談している。自分も混ざるべく、立ち上がってそちらへ行く。

結局スイロウ先生が来るまでSクラスは冬休み明け早々ごっちゃごちゃになったのは言うまでもない。

いつも読んでくださりありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ