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異界の師、弟子の世界に転生する  作者: 猫狐
二章 学院編
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休日鍛錬 その夜

「レテ君、どこ行ってたの?」


ニコニコと笑顔を見せながらベッドの上からテーブルでシアが運んでくれていていたご飯を食べている。


「……ひ、秘密ということで」

「ふーん……?」


流石に軍に混ざって鍛錬したきたとは言えないので誤魔化すと、シアは面白いものを見つけた、という反応をする。これは追求されてしまう。ということで話題を切り替えることにした。


「まぁ、自分も別の場所で鍛錬してただけだからさ。それよりも、シア達は鍛錬できたの?地下の施設、結構充実してたと思うけど」

「あ!そう、それがね。中々面白いことになったんだよ」


そう言ってシアは話し出した。



「レテ……は来ないか、本を読むって?」


クロウが言うので、私は頷く。


「うん。それに私達の鍛錬に付き合ってもらうのも少し悪いしね」


実力差を考えれば私達の鍛錬は基礎だが、彼は応用を学びたいのだろう。実際、彼は自分達のような鍛錬は毎日しているような口ぶりであったし。


「うーん。ちょっと待ってて〜」

「……ダイナ?」

「あっ、ちょ!私達も行く!」


ふらりとどこかへ向かうダイナにフォレスとファレスが着いていく。何をしに行くのだろうと皆が待っていると、少ししてスイロウ先生を連れて三人が戻ってきた。


「聞いて来れば皆で鍛錬って聞いたじゃないかぁ!感心感心!レテ君は居ないみたいだねぇ。まぁ彼に教える魔術は無いと思うけれど……どうだぁ、ここで皆で成長して彼を驚かせてみてみるのはぁ!」


スイロウ先生、仕事をしていた所を少し切り上げてやって来てくれてらしい。それに感謝しつつ、魔術の鍛錬に打ち込む。

まずは昨日の基礎から。皆が球を作れるようになると、今度はそれを複数生み出してみるように言われた。


「自分の周りに一個球を置いておく感じで魔力を供給しながら順番に作っていくんだぁ!皆なら出来るぞぉ!」

「レテのやつ、サラっとやってたけど何だよこの難しさ……!」


ショウが火の球を浮かせながらもう一個浮かせるのに苦戦している。確かに、同時に四つ生み出して身体の周りに纏わせる彼の技術力の高さが改めて凄いことだと知る。


(けど、私だって出来る……!)


海をイメージして、一つを浮かせ、もう一個浮かせ……その繰り返しをした。


「おお!シア君!沢山浮かべているなぁ!」

「え?あ……!」


周りには浮遊する水の球体が複数あった。それを見て、皆にアドバイスする。


「えっと……私は海をイメージしたんだ。水が得意だから。だから、空間に何かを浮かべるイメージをして集中すると浮くかも」

「なるほど……」


そう言うとミトロもどんどん沢山の闇の球が出てくる。ほかの皆も浮かべている。


「おぉ!皆本当に凄いなぁ!これだけの実力があればきっと聞かせればレテ君も驚くぞぉ!じゃあそれを使って、今度は攻撃魔法にして撃ってみるんだぁ!使えば使うほどその魔法は身が覚えて洗練されていくから、反復あるのみだぁ!」


そう言ってスイロウ先生は訓練場を一つ借りて、移動させてくれた。

そこで私たちは先生が用意してくれた的にひたすら当てていく。弾け、壊し、また生んで。皆ただ飛ばすだけではなく、系統を使ったり身体を使ってどうやったら威力を上げられるか、そんなことを試していた。


「……うむ!いい感じだぁ!けどそろそろご飯の時間だなぁ!食堂に行くぞぉ!」



そこで思わず自分はツッコミを入れる。


「え?じゃあ自分の分の昼ごはんは?」

「……ごめん、普通に忘れてた!夜終わってから思い出した!けど昼いなかったでしょ?続けるね?」

「うぐぅ……」



レテ君はてっきりいると思ったので昼ごはんは運ばず、皆で意見の交換をしていた。


「なぁ、球を投げるってレテ言ってたじゃないか?あれを使って、思い切り投擲するのもありだと思うんだ」

「それなら〜球じゃなくて、鋭い槍とかそんな形の方がいいかもね〜」


クロウとダイナが雑談する中、レンターとミトロは光と闇同士、複合属性について話をしていた。


「……なるほど。確かに光は火と相性が良さそうだ。ならば闇は……そうだな、闇なら逆に覆い隠す水や土の相性がいいんじゃないか?」

「そうですね。闇に紛れ込ませて地面から突き刺す……という点で、土の方が使いやすいかもしれません。午後試してみましょう。相談に乗ってくれてありがとうございます」

「……お互い様だ」


そう言いながら皆で和気あいあいとご飯を食べていた。


午後はそのアドバイスを元に、皆で威力を上げる鍛錬をしていた。ひたすら、力を求めて。スイロウ先生も的の感触で魔力の練度が上がっているのが分かるようで、事ある事に褒めてくれたりアドバイスをくれたのでとても助かった。


「ふぅ……」

(想像するのは滝。流れ落ちる滝。その勢いをイメージして、私の収縮系統に乗せて……今!)

「せいっ!」


上空に待機させておいた水の球が勢いよく、激流の如く的に襲いかかる。的を完全に潰すように流れたそれは、一番手応えがあった。


「今のは凄いなぁ!今度はシアがみんなに教えてあげてくれぇ!」

「あぁ!今のはすげぇぞ!やっぱりイメージか?イメージが大事なのか?」

「……気になる」

「うんうん!」


皆も別々のやり方で威力を出していた。だから威力が出たら皆で共有していた。

そうしているうちにあっという間に休日が終わり、ご飯を食べ終わって思い出す。


(あれ、レテ君……いない?)


そう思ってプレートを一つ自室に持ち込むと、一人ぼっちだった。机においたままベッドに転がっていると、下のベッドから慌てて転げてくるレテ君が見えた。


「ご飯ならそこにあるよー?」



「ってことがあったんだ!」


そうか、皆自分という存在があるから、一発食わしてやろうと思っていたわけだ。それで今年のSクラスの生徒が育つのなら師として教えていた頃を思い出して嬉しくなる。


「そうか……!今度はその鍛錬、自分も参加しようかな」

「うん!……あ、でもレテ君」

「うん?」

「結局どこ行ってたの?鍛錬に」

「げほっ、げほっ……」


盛り返された。噎せると慌ててシアが降りてきて背中を摩る。すると、何かに気がついたように手を見る。


「……土?それも森とかじゃない。訓練場みたいな……」

「あ……」


しまった。慌ててフードを取って身体を清潔にしたつもりだったが、取り残しがあったようだ。


「……レテ君。誰にも言わないから正直に言って?どこに行ってたの?」

「……軍の人と鍛錬に」

「そっか……やっぱり、レテ君って学院の枠には収まらないんだね。でも……いいんだ。私は、レテ君が強くなる為に努力してくれてるって、私達と同じだって思えるから」

「……!」


どうして、彼女は努力をそこまで認めてくれるのだろう。何か、努力に対して特別な思いがあるような……そんな感じがする。

しかし、今はその時ではない。ご飯を食べ終わると、自分は「下げてくるよ」と部屋を一旦出る。

その姿を見てシアはふふ、と微笑む。


「……努力するレテ君、カッコイイなぁ……って、何考えてるんだろ、私。皆努力してるのに」


同室だから、同じ時間を過ごすことが多いから。彼が強いのにまだ高みを目指そうとしているから。

色んな理由をつけて特別視する事を無理やり納得させると、下のベッドでゴロンと横になる。



「戻ったぞー。ついでに風呂も入ってき……た……」


何でシアが下で寝ているんだ。分からない。疲れすぎて倒れたのか。

まぁいいかと思いつつ、上段に行くかそれとも下に行くか悩む。すると、ブレスレットに魔力が通り、アグラタムから連絡が来る。それを取ると、口を開く。


「……どうした?」

「据え膳食わぬは男の恥、という言葉があります。師よ」

「……」


ガラッと窓を開けるとニコニコしながら滞空するアグラタムがいた。


「吹っ飛べバカ弟子!」

「あぐぁ!?」


風魔力、最大威力。その力は突風の槍の如し。

遥か彼方まで飛んで行ったことを確認すると窓を閉めて、シアを見つめる。


「……すぅ、すぅ……」

「……おやすみ、シア」


結局下で寝ることにしたのだった。

いつも読んでいただきありがとうございます!

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