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異界の師、弟子の世界に転生する  作者: 猫狐
二章 学院編
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微かな異変

レテは飛び級で入学し、その上Sクラスの首席、更には二年生に勝つという実績を身につけていた。

勿論それを賞賛するものや負けずと努力する者もいるが、中にはいるのだ。

なんでアイツが、と。

自分の方が才がある。自分の方が上手くやれる。そんな感情を持つ者たちが生徒たちの中にも少なくないほど存在していた。


「ちくしょう、なんであんな野郎が……」


休日。名も知らぬ生徒達が休日、町外れまで徒党を組んで歩いていた。

町外れ、少しだけ首都から離れたところまで来ていた。


「ホントよほんと。二年生相手だって、何かイカサマしたに決まってるわ」

「わざと負けるように、ってか?けっ」


そう言いながら少しの暗がりに差し掛かったところだった。


「……贄。見つけた……」


どこからともなく囁くような声に誰かが疑問を持つ。


「なぁ、今誰か声掛けたか?」

「ううん……私は何も言ってない……それに何か……」


悪寒が走る。誰かがそろそろ戻ろうぜ、と提案した時だった。


「見つけた……ッ!」


路地裏から何か魔法で生徒達が包まれる。

気絶したのか、その場に倒れる生徒達を見て何者かはニヤリとしながら、生徒を一人一人、袋に詰めてどこかへと歩いていった。



「誘拐事件、ですか?」


その数日後。レテのいるSクラスで注意が入った。


「そうだぁ。休日に学院から出た一学年の生徒が戻ってこなくてなぁ。表向きは脱走した、ってことになっているがこの学院の制服や子供は……あー、誘拐されやすいんだ。色んな事情でなぁ。だから一応誘拐には気をつけて、あんまり学院を離れすぎないようにって注意だぁ!」


一応ごにょごにょと誤魔化したが、要は金になるから拐われるよ、という事だろう。気をつけなければ。

他の皆も誘拐と聞いて少し怯えているみたいだ。だがこの程度なら少ししたら治るだろう。授業も始まることであるし。


「それじゃ授業を始めるぞぉ!まずは教科書の……」


一応後でアグラタムにも確認を取るか、と思いつつ授業に集中することにした。


夜。アグラタムに会いに行こうと思ったが問題があった。


「ねぇねぇレテ君、なんで寝ないの?」


シアが起きている事だ。正確に言えば起こしてしまった、と言うべきか。

一旦寝たフリをして、シアが寝たのを確認してからこの前アグラタムがくれたブレスレットで連絡しようとしたのだが、何やらムズムズした感じがしたと言って起き上がってしまったのだ。

だいぶ困った。どうするべきか否か。


「ほ、ほら……魔力の鍛錬を今日忘れてたから」

「寝る前にしてたよね?」

「寝付けない時はこっそりやることにしているんだ、家にいる時から」

「じゃあ見せて!」


そう言い合っているとブレスレットに魔力が通る感覚がする。今は話せない、と無理やり魔力を切る。

なんでこの日に限ってシアが起きてしまったのか。あぁ、どうしようと迷っていると、後ろに門が開く気配がした。


(……あ)

「何あれ……?」


シアが呆然と見つめる中、そこから現れたのは今訪問しようとしていたアグラタム、その人だった。


「深夜遅く失礼します。魔力通信を切るような事態に……おや、貴女は……」

「え、あ、アグラタむぅ、むぅぅぅ!?」

「シア!大声出さないで!」


静かに収めると、シアの口を暫く塞ぎ続けていると、バレちゃったものは仕方ないとばかりにアグラタムは口を開く。


「……シア様、というのですね。私の事もご存知の通りのはず。……えぇとレテ、様」

「……むず痒いな。シア、ここだけの秘密にしてくれるか?他のみんなには秘密だよ」


こくこくと頷くシアを見て、口から手を離す。


「……ではいつもの呼び名で呼ばせてもらいます。

師よ、学院から何名か居なくなったという話はお聞きになられましたか?」


シアは呆然と片膝を着くアグラタムと堂々と立つ自分を見比べていた。

そりゃそうだろう、相手はこの国のトップ、逆にこちらはその雛。それが逆転しているのだから。


「聞いた。自分もその詳細を聞こうと思っていたんだ」

「はい。あれは誘拐なのですが……少々きな臭い噂が城内でも流れていまして。この情報はご内密に」

「わかった」


頷くと、シアはえっ、あっ、はいというように釣られてブンブンと頭を縦に振る。


「……何やら、ただ拐われただけでなくそれを生贄に使い、何かを企んでいるかもしれないという噂が流れております」

「情報源は?」

「不明です。私が顔を出した時には既に城内に広まっており、誰が最初に言い出したのかも不明です」

「……ちっ、それが本当だとしたら城内に噂をわざと流した、もしくは噂するように誘導した奴がいるわけだ。分かった。警戒しよう」

「ありがとうございます。……シア様、この事はくれぐれも、師の為にも秘密でお願いします」


アグラタムはそう締めると、シアに頭を下げる。シアは慌てながら静かに「はい」と答えると頭を上げてほしそうにしていた。国のトップが自分に頭を下げて欲しくないのだろう。


「それでは帰ります。……何かあれば、私からも、師からも来てください。それでは」


そう言ってアグラタムは門から帰って行った。


「……ねぇ、レテ君ってアグラタム様の……」

「……師だよ、それ以上でもそれ以下でもない。でも、シアがよく知っているレテで合っているよ」


そう言ってベッドに入る。シアはどこか混乱しながらも、上のベッドに入って寝ていた。

いつも読んでいただきありがとうございます!

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