学院交流 4
まずい、そう感じたのは振るった後だった。
悲鳴と共に飛ばされていく彼女を見ながらここが決闘場の結界ではなく、簡易結界であることを思い出す。
(怪我をさせてはいけない……!)
わざわざ自分と手合わせを願ってきたナイダさん相手に怪我などさせられない。
右手に慈愛の盾を顕現させると、それを即座に魔力の塊にして結界へ投げつける。
結界に慈愛の盾が干渉したのを確認すると、愛を込める。
(強きを求める彼女に救いを……!)
すると彼女の方に何か、自分の力で出来たものがあるのがわかった。
それを確認すると、ナイダさんの方に歩いていって安全確認をする。
ニコリ、と微笑む自分に彼女は呆然としていたが、やがてハッとなって立ち上がる。
「貴方の一太刀、本物の武器を使っていないのにそれ以上の威力……ううん、魔力があった。貴重なものが見れた」
そう言って剣を収める彼女に頭を下げる。
「ごめんなさい。ちょっと力を入れすぎたみたいで……」
「……謝らないでいい。私が仕掛けた勝負、それに貴方は結界に干渉して私を守ってくれた。そうでしょう?」
「……バレてた?うん。力を入れすぎたからせめてナイダさんが痛くないように……と思ってちょっとね」
それに驚いた顔をすると、少し下を向いたあとこちらをじっと見る。
「……ナイダ」
「え?」
「さん、は要らない。ナイダ。今度からはそれで呼んで。レテ」
「……わかったよ、ナイダ」
そう言うと先生に終わったことを伝える。武術学院のクラスメイトらしき人物が慌ててナイダに駆け寄っていく。
「ナ、ナイダ!?無事!?」
「無事。レテ、今度相見える時は、武器を持って戦って」
「……あんまり得意じゃないけど、頑張るよ」
そう言うと今度は魔術学院の生徒がわっとやってくる。
「レテ!?お前……あんな魔法使えたのか!?」
「どれ!?」
興奮しているショウが問いかけてくるので勢いに押されてつい勢いよく返してしまった。それに対して、ファレスとフォレスが聞いてくる。
「……風の剣の顕現」
「あんな武具の顕現の仕方見たことないよー!どこで覚えたの!?」
それそれ!と同意するようにショウが頷くので、地下室の本を読んで……と答える。
「……顕現系統の応用法、そこまで書いてあるのか」
「私ももっと知識をつけなきゃね」
レンターとミトロの二人の知識欲に火をつけてしまったようで、あはは……と愛想笑いを浮べる。
全くのウソである。前世同じ事をアグラタムにして、剣を引き寄せたことがあったのでそれをマイルドにしただけだ。その気になれば騎士が通り過ぎた瞬間には手に握る事も可能である。
他のクラスの人からも質問攻めにされそうな中、逃げようとしたら目の前にいたのはナイダだった。
「……私を受け止めた何か、結界から出てきた何か。あれから温もりを感じた。けれど、あれは火の魔法じゃない。私は魔法にも少し知識があるから分かる。……あれは、何?」
少し困ったが、そっと隣を通り過ぎるときに耳元に呟く。
「……あれが、自分の特異能力だよ」
「……!」
ビックリしたように振り返る彼女の気配を感じるが、その前に彼女のクラスメイトや他の武術学院生に捕まっておく。
こうして質問をさせないことで追求を避けるのだ。
……結果、ヘトヘトになりながら学院交流は終わった。
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