表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異界の師、弟子の世界に転生する  作者: 猫狐
二章 学院編
30/270

学院交流 3

「ちょ、ナイダー!まだ始まってないから!」


慌ててクラスメイトらしき子がずりずりと引き摺って武術学院の方に戻していく。


「……早々に声かけられたね」

「なんでだろう?」


シアの呟きにボソッと返すと、両学院が整列したのを見てそれぞれの先生が両方の学院生を立ち上がらせる。


「それでは学院交流を始める!喧嘩などはあまりしないように!戦闘行為などをする時は必ず先生に許可をとること!では好きにして良いぞ!」

(あ、戦闘一応していいんだ……)


心の中で突っ込みを入れながらも自分も立ち上がり、交流会が始まる。

総学院長のジェンス先生がそう切り出すと、いきなりさっきのナイダさんがこちらにやってくる。他の皆は他のクラスの子や馴染みがいたのか、ペアなどを作って話したり走り出していく子、隅で縮まる子に話しかける子などがいた。


「……貴方がレテ君。間違いないよね?私はナイダ。武術学院の首席」

「そうだよ、自分がレテ。あの入学式の時以来かな?覚えてるよ」


握手を求められたのでその手を握る。

女性らしいのに、どこかゴツゴツとしている。鍛錬を重ねたのだろう。


「……いっぱい、武器を振るったんだね。わかる。この手は武器を愛する手だ」

「……愛、する。そうかもしれない。私は武術に適正があった。けれど、私自身が剣を取って振るうのが好きだった。だからその表現は的確」


論理的なのか、それともクール系なのか。そう思っていると、思わぬ一言が飛んでくる。


「聞いた。貴方、学年対抗戦で二年生を完封したって。その力、少し見せて欲しい」


どこから漏れたんだ、この情報。かと言って相手を騙すわけにもいかず、隠す情報でもないので言葉を返す。


「完封……かは分からないけどね。力を見せて欲しいって?」

「一太刀、私は一太刀でいい。貴方は魔術でも、武術を使えるならそれでもいい。防いでみて」

「えぇ……」


いきなり戦闘行為を申し込まれるとは恐れ入った。首を傾げてこてん、としている彼女は次にはこんなことを言ってきた。


「……一太刀じゃ不満?」

「逆に一太刀も振るわせなくてもいい?」

「言ったね。出来るならやってみて」


そう言うとナイダは先生の元に走り、許可を取る。


「おーい!皆!ちょっとスペースを空けてくれ!戦闘行為の申し出があったから簡易的な結界を作る!」


そう先生が響かせると、皆がなんだなんだと離れていく。

はぁ、とため息をつきながら作成された結界の中に入る。


「……私の武器はこれ。ただの剣。だけど本物の剣。だからもし当たりそうになったら止める」

「はは、お手柔らかに……」


そう言うと、先生に合図を頼む。

先生がベルを持つと、ナイダが剣を上に掲げる。


(……武術学院首席の実力、見ておこうかな?)


チリン、と鳴るとナイダは飛び、前に一回転して着地した。

その直後、一直線に爆風が吹き荒れる。


(……強くない?普通に強いよね!?)


そんなことを頭の片隅で考えながらそれを土の壁を顕現させて防ぐ。


「……一太刀、防がれたね。私の負け」


ナイダはそう言って剣を仕舞うが、彼女の実力は気になる。だから提案をする。


「こちらも珍しいものが見れたよ、だからお返しをしよう。さぁ、構えて」

「……!わかった」


彼女が構えたの見ると、三方向に風を吹かせる。

少しぐらい、構わないだろう。



ナイダは構えて、と言われ構えた。さっきの大ぶりの一撃ではない、迎撃のために。

風が吹く。風の魔力が三方向に飛ぶ。


(これが……騎士……!)


そこで形作られた騎士が三体同時にこちらへと向かってくる。

ナイダはこちらも剣に風の魔力を纏わせてそれを切り裂こうとするが、するりとすり抜ける。


「っ!」


咄嗟に斜め後ろに飛んで回避する。危なかった。これが彼が二学年を追い詰めたという騎士だろう。


「こちらも一太刀だけだよ」


……なんだって?

そう聞こえた方を見ると、レテ君が歩いてくるのが見えた。

騎士が消えていく。しかし、騎士が通った丁度中心点の所に風の剣が生成されていく。


(顕現……風の騎士の爆風を利用した剣の生成、言わば顕現からの顕界……!)


彼がそっとそれを手に取ると、こちらも構える。


「ふっ!」

「ぁっ!」


彼がそれを一振すると、暴風と共に風の剣の魔力が伸びていく感覚がした。

咄嗟に身体を土魔法で覆うものの、得意ではない属性な上に彼の剣の威力を相殺し損ねた。


(この、威力では……!)


確かに結界は貼ってあるが、簡易的なものである。果たして耐えきれるのだろうか。

そう思っていると、レテ君が右手から何か、魔力の塊としか分からない物を生成して結界に投げた。

すると自分の後ろから優しくクッションのような何かが出現し、ふにょんと弾かれる。


「ごめんごめん、やり過ぎた。怪我はない?」


そう言ってこちらに向かってくる彼は、どこまでも慈愛に溢れている、聖母のような笑顔だった。

いつも読んでいただきありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ