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異界の師、弟子の世界に転生する  作者: 猫狐
二章 学院編
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学院交流 1

冬休みも間近に迫った十二月初め。ドン、とスイロウ先生が構えると皆がピシッと姿勢を正す。


「よーし!今日も全員出席だなぁ!今のところ皆が皆勤賞で嬉しいぞぉ!そして今日はお知らせがある!明日、武術学院との交流会を開くんだぁ!」


え、知りませんでした。とばかりに周りを見渡すと皆も首を傾げている。


「本来ならもう少し前に伝えておくはずだったんだが今回は侵攻の件があったせいで伝えるのを忘れていたんだぁ!ごめんなぁ!」


そう言って頭を下げると、スイロウ先生が説明をし始めた。


そもそも何故学院が武術、魔術に分けてあるのか。

それは武術で戦う、つまり武器を持ったり素手で戦うのが得意な人と魔術を用いて戦う人、それぞれを特化で育成するからである。

そして二つの学院は協力して戦うこともあれば、盗賊などの不埒な輩に対して戦う時、相手がどういう戦い方をするかを見極めるために交流会を開くのだと言う。


「といっても今回は顔合わせみたいなもので、戦闘はまだしちゃダメだぞぉ!結界があるとはいえ、喧嘩になることは少なくないんだぁ!わかったなぁ!」


はーい!と全員で返事をすると、いい子達だぁ!と返答があり、そのまま今日の授業が始まった。



「交流会かぁ〜。どんなお話が聞けるんだろうね?」


ダイナが昼ご飯のシチューにパンを浸しながら話す。自分も同じように浸して食べる。


「んー、今回は顔合わせだし……一年生同士、戦闘とかまだあんまり習わないから本当にお話するだけじゃない?」

「……レテ、君だけは魔術学院から一年生に魔術に対する方法も教えられると思うけれど」

「買いかぶりすぎだよ」


サラダを食べていたクロウに苦笑すると、皆でワイワイと食べ続ける。

ふと、光と闇の混ざった魔力……門を開いた感覚がした。恐らく屋上だろう。そしてこんな時間にこの場所へやって来るとしたら一人しかいない。


「……すまん、御手洗」

「いってらっしゃーい!」


そういうと食堂を抜け出して、急いで屋上に向かう。階段は面倒くさかったので、窓を開けて飛び降りると、下に土の板を作ってそれを風で浮かせる。そうして屋上まで辿り着くと、予想通りの人物がいた。


「……せめて授業終わってからにしてくれないか?」

「すみません。ですが、早急に渡したい物がありまして……」


アグラタムがそう言うと、自分にブレスレットのような物を渡してくる。


「これは?」

「簡単に言えば、危険を知らせる装置と思ってください。貴方のクラスメイトや他の生徒、他にも急な異界からの侵攻の気配も察知できる上に私と魔法回線を繋いで連絡を取ることが出来ます」

「……まぁ、高性能なものを作ったものだ。有難く受け取っておくよ」


そう言うとブレスレットを自分の腕に隠すように付ける。するとアグラタムは膝を片方ついて、礼をする。


「ありがとうございます。師よ。先日の件も併せてお礼をさせてください」

「……流石にあの剣は刺激が強すぎたんじゃないか?」


先日使った剣は特異能力の中でも異質なものだ。あれと打ち合える武術学院生はおろか、現職でも太刀打ち出来ないだろう。


「いえ、イシュリアは今以上に強く在らねばなりません。より強き者に触れる事で我々は強くなるのです」

「……そういうことにしておこう。さて、自分はご飯食べるために戻るからな」

「はい。それでは」


そう言うとアグラタムは門を通って帰って行った。自分も、ご飯を食べに急いで食堂に戻った。


「お手洗い行っただけなのに迷子になった……」

「……もしかしてレテは方向音痴か」

「そんな事ないと思うんだ……レンター……」


言い訳はどうやら通ったようだ。その後は和気あいあいとご飯を食べ、午後の授業を受けて一日が終わった。



アグラタムはイシュリアの元へ戻ると、報告をする。


「渡してくれましたか。ありがとうございます。……彼には重荷を背負わせてしまいますね」

「……師は強い。ですが、味方を怯えさせない優しさが故に本気で相対することが今は出来ない。だからこそ、守護者である私が今は守らないといけないのです」


その言葉にイシュリアはくすくすと笑う。


「私よりも、ですか?」

「うぐ、痛いところを突きますね」


こうして二人も今日の政務を雑談しながら処理していったのであった。

いつも読んでくださりありがとうございます!

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