表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異界の師、弟子の世界に転生する  作者: 猫狐
四章 黄昏のステラ
270/270

ナコクの対策

「話し合い終わったよー!」


リアーが扉を中から開けると、スイロウ先生がぴくっと反応してリアーに寄る。


「そうかぁ。タレイアから何か変なこと言われなかったかぁ?」

「ううん?全然大丈夫でした!貴女を呼んだのは新鮮な意見が欲しいから、って!」


笑顔を浮かべながらいう彼女に、ベールもニコニコと笑顔を浮かべて対応する。


「確かに未知の事象を解明するなら、ある程度道に通じた者よりいっそリアーちゃんぐらい魔物と関わらない生活を送ってきた方が……あ、いや!馬鹿にしたわけじゃない!だからその、スイロウさん、そんなに睨まないでもらえると……」

「……まぁ、言いたいことは分かるがなぁ?言い方というものがなぁ?」


怒ったスイロウ先生に、ベールのあたふたした様が合わさってクスリと皆が笑う。

コホン、と中から声が掛かると皆が一転して真剣な表情になると室内に入る。


「……確かに、リアーちゃんからは新鮮な意見が聞けました。そういう事ならナコクの内々で処理を検討するよりも、早々にイシュリア様とアグラタム様に報告するべきだ、と」

「ごもっともすぎるな。あれは魔物狩りで何とか出来るレベルじゃねえぜ。……ん?」


アデルカインが賛同すると、ふとタレイアの腕を見る。


「タレイア、どうした?腕……っていうか、身体が震えてないか?」

「あぁ……すみません、最近ロクに睡眠が取れてなくて。そろそろツケが回ってきたのでしょうか」


眠れなくて、身体が震える。確かにふらつきという話ではそうだろう。

けれど、目の前の震え方はガチガチに緊張した震え方だった。それを見れば、リアーが何をしたのかは凡その事は分かる。


(正体、バラしたな)


それ以外考えられない。二人で話していたはずなのに、話し声が完全に遮断されていたのはリアーの気遣いだろう。


「……それはともかく!ギルドは正式にナコク上層部にこの件を報告し、増援を求めます。しかし、ここで留まるわけにはいきません。

スイロウ、少し授業の方針を変えて頂けますか?この状態で学院生を外に出すのは非常に危険、と判断せざるを得ないでしょう。

次にベール。貴方達は魔物のイレギュラーに対しての座学を提示します。本当はアデルカイン達に加わってほしかったのですが、まだ何とかなるでしょう。

最後にアデルカイン。貴方のパーティーは北側地帯の偵察を。もし南の砂漠地帯と同様に異変があれば合わせて報告を」


その言葉に一番最初に反応したのはスイロウ先生だった。


「よぉし!なら私は今来ている先生達に情報を共有してくる!幸い今日は先日の事があったから全員座学のはずだぁ!」


そう言って退出すると、アデルカインが両手の拳を胸の前でぶつけて宣言する。


「んじゃ偵察任された!行くぞ!」

「「「おう!」」」


アデルカインのパーティーメンバーもそれに合わせて出ていく。

最後に残ったのはベール達と自分、リアーだ。


「カイ、すまないけれど座学は君が担当してもらって良いかな?僕はナコクでしか狩りをしていないから、雪原地帯に関しては詳しくないんだ」

「任された」


授業の方針を決定すると、ベールを先頭に出ていく。

歩いている中で自分は考える。


(砂漠地帯が雪原地帯に……かなり大掛かりで、それを可能とする人物はそれこそイシュリア様ぐらいだろう……。恐らく、ナイダから聞いた異世界の話の影響。

だが、目的が見えない。イシュリア様と同じ力量があったとして、砂漠地帯を雪原地帯に態々変えた目的は何だ……?)


別に、砂漠地帯に干渉してグリームワームを増やすだけでも良かったはずだ。 

けれど、そうはしなかった。態々グリームワームの天敵、グリフォンを配置してまで雪原地帯に塗り替えた。


(……分からないなあ)


ベール達に付いていきながら、そこで考えることをやめた。


宿に到着すると、皆がいるニアの部屋でベールが話しかける。


「すまないね。ちょっとこれは外で実戦、というわけにもいかなくなった。だから座学になるけれど……命は何よりも大切だ。我慢してほしい」


その言葉に皆が頷くとガゼルがグスッと泣き出す。


「命の重さをこの年で分かってくれるなんて……!なんていい子たちなんだーっ!」

「ガゼル、普通の人は命は一番大切だと思うのね……」


リセットが呆れながらツッコミを入れると、横からアストライアがふふっと笑う。  


「皆が皆、ガゼルみたいに頑丈じゃないもの。ところでおやつはあるかしら?」 

「おやつ?」


反射的にクロウが反応すると、アストライアはニコニコとした笑顔で手を合わせる。  

 

「ええ、おやつ!出来れば甘い物がよいわね〜!」 

「この人もこの人でよくわからないぜ……」


ショウがぼやくと、皆で頷きながら各自のおやつを取り出してテーブルでアストライアが満足そうにおやつを食べていた。

ベールが後から謝罪して、お菓子を補填してくれたのは秘密である。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ