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異界の師、弟子の世界に転生する  作者: 猫狐
四章 黄昏のステラ
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砂漠地帯の異変

「……おい、何だ……これは……」


アデルカインの仲間の一人がポツリと呟く。アデルカインも、その光景には絶句せざるを得なかった。


目の前に広がるのは『雪原』。それも、ある一定の境界線を踏み越えた時に砂漠から変化したのだ。 


「冗談じゃねえ……いつからここはセッカになったんだ……へっくしゅ!」

「おい、気持ちはわかるがとりあえず撤退だ。

まさか砂漠が雪原になってるなんて異常事態の騒ぎじゃねえぞ。それに……」


アデルカインは斧を構えると、雪原の方を見る。メンバーも合わせて武器を取り出すと呟く。


「そりゃグリームワームも居られなくなるわけだな……」


虫型の魔物、グリームワーム。その天敵である鳥型の魔物であるグリフォンがそこには待ち構えていた。


『グギャオオオオオッ!』


グリフォンが吼えた。それはアデルカイン達の意思を一つにするのに、十分な脅威であった。


「逃げるぞッ!」


アデルカインの掛け声と共に、メンバーの一人が目くらましの煙を撒く。

同時にアデルカインは炎を纏った斧でグリフォンの足を狙い、突撃した。


『ギャオオオオッ!』


「ッ!?いない!?」


アデルカインは確かにグリフォンの居た位置に斧を振るった。しかし手応えはなく、斧は宙を斬る。


「アデルカイン!上だ!」

「なるほどな!」


仲間の声に応じて、アデルカインは空振った勢いをそのままにジャンプする。


「せいりゃあっ!」


煙の上、約二メートル上を飛んでいたグリフォンを斧が捉えると、一気に叩き落とす。


『グギャアアアアアアッ!』


ズドン、と音を立てて落とされたグリフォン。その隙を見てアデルカインは後ろに下がる。

これなら撤退ぐらいはできる、そう思った矢先だった。


「チッ!アデルカイン!厄介な事になった!」

「どうした!」


斥候役の仲間から心底腹立たしそうな声が聞こえた。それに応じてアデルカインは問いかける。


「結界が貼られてやがる!丁度草原地帯と砂漠を挟んで、雪原に変わったあの境目だ!」

「破れるか!?」

「五分だけ時間を稼いでくれ!」


斥候役の言葉に、撤退しようとしていた仲間もアデルカインに合流する。


「このグリフォン相手に五分?冗談キツイぞ!」


アデルカインが叫ぶのも無理はない。

何故なら目の前のグリフォンは脳天から叩き落とされたのにも関わらず、ピンピン動いていたからだ。


「左翼を頼む!俺は右翼を潰す!」

「「了解!」」


パーティーメンバーに左翼を任せると、アデルカインは右翼に向かって突撃する。

先程の一撃を警戒したのか、グリフォンは氷のブレスをアデルカインに向かって吐く。


「はっ!ぬるいな!」


アデルカインは物ともせず、少し横に避けてから翼に向かって斧を振るう。


『グガアアアッ!?』


苦痛の声を上げるグリフォンはアデルカインを標的と定めて突進を仕掛ける。

斧を構え、その突進を正面から受け止めると残りの二人が左翼を叩く。


『ガアアアアアッ!』


グリフォンにとって翼は弱点。そこを両方叩かれたことで、グリフォンの標的は二手に分かれた。


直後の左足による鋭い蹴りを三人で避けると、アデルカインは上から炎の斧を叩きつける。

ほぼ同時に、仲間の魔法が足に着弾する。水の魔法だが、それは雪原であるこの場所で氷へと変化した。 


「よし!」

「よくやった!」


氷に変化したことにより、グリフォンの足が地面と共に凍る。グリフォンは苦痛の声を上げているが、それでもブレスによる攻撃を緩めない。


「おい!まだか!?」

「……よし!解けた!あと一度、お前たちが撤退する隙を作ってくれ!」


バキン、と音がしてグリフォンの足が地面から離れると、アデルカインは不敵に笑う。


「そうか!よくやった!」


仲間がもう一度煙を撒くと、グリフォンは即座に翼で煙を薙ぎ払った。

しかし、刹那を作るのには十分な時間稼ぎだった。


「眠ってなァ!」


アデルカインの斧が豪快にグリフォンの胴体に直撃する。炎を纏った上にフルスイングだ。

流石のグリフォンもよろめくと、アデルカインは号令を発した。


「撤退!」

「「「了解!」」」


その言葉とともに、アデルカインのパーティーは元砂漠、現雪原地帯を脱した。


結界が貼られていた場所を全員で通り、全力で逃げる。

ふとアデルカインは後ろを振り向く。グリフォンは追ってきていないだろうか。


グリフォンは追ってきていない。しかし、そこから見えたのは『砂漠』の景色だった。


「……あの結界、グリフォンが貼ったとは考えづらいよな」

「おいアデルカインそんな話は後だ!俺は命が惜しいぞ!」

「それもそうだ!」


雪原、結界、グリフォン。何もかもがナコクに馴染みのないものだが考えるのは後だ。


生き延びて、ギルドマスターに報告しなくては。


ただそれだけを目的に、四人は一目散に走って街へと戻っていった。

最近涼しくなりましたね(日によります)

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