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異界の師、弟子の世界に転生する  作者: 猫狐
四章 黄昏のステラ
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会議とタイマン

数日後、ギルドには自分たちSクラスの皆とベールさんのパーティー、他の魔物狩りをする人達、ギルドの職員の人たちと学院の先生が集められていた。


大きな会議室で時計の針が十時のマークを示し、静かな音を鳴らしたときタレイアさんが立ち上がる。


「まずはこの度集まって頂きありがとうございます。ギルドマスターとして礼を言います」


頭を下げる彼女は直ぐに顔を上げると、資料を配るようにギルドの職員に指示する。


「先日、グリームワームが三匹、平原にて連携して仕掛けてくるという事態を把握しました」


その言葉に魔物狩りの人から戸惑いの声が上がる。しかし、その言葉に茶々を入れる人は誰もいない。これがギルドマスターとしての貫禄だろう。


「詳しい事情は彼らから話してもらいたいと思います。……ベール」


ベールとそのメンバーは名前を呼ばれるとタレイアのそばまで行き、一礼する。


「皆様の手元に資料があるかと思います。それを踏まえつつ、お聞きください」


そう述べて、ベールさんは話し始めた。

グリームワームが平原に一匹出現したこと。それを倒し、帰ろうとしたところ今度は二匹がかりで奇襲してきたこと。

そしてそれが、砂漠地帯ではなく街からもそんなに遠くない場所であったこと。

話し終えると、タレイアが話のバトンを受け継ぐ。


「これを踏まえた上で、我々は早急に砂漠地帯へと調査隊、及び元凶の討伐部隊を組みたいと思います」


砂漠地帯。熱気とカラカラの風が吹く一種の異常地帯だ。主に砂で構成されており、水が少ないのも特徴とされている。

そしてそこが、魔物狩りの人々にとっても危険地域だということも。


「調査隊って言っても……砂漠地帯じゃ、何が異常かすらわかりませんよ?あそこ、年中異常発生地帯なもんじゃないですか」


一人の魔物狩りが困惑気味に言うと、周囲の人も頷く。それに対してタレイアが告げる。


「確かに、砂漠地帯は大小様々な異常が年中起きている地域です。ですが、グリームワームは砂漠地帯の主のような存在。それが追いやられた、となれば今までより大きな異変が起きていることでしょう。それを持ち帰ってきてほしいのです。無論、報酬は弾みますよ」


皆戸惑いつつも、報酬は弾む、という言葉に誘惑されてどうしようか迷っているようだった。

その間に他のクラスの先生が質問する。 


「すみません、その間我々はどうすれば……?」


タレイアは少し考えた後、答える。


「ナコクの外へ通じる門から徒歩二十分以内の圏内で訓練をお願いします。それ以上範囲での訓練は危険です。日にちも分けることになりますが、何卒危険性をご理解ください」

「承知しました」


先生が下がると、一部の魔物狩りの人から声が上がる。


「おいおい、こんな子供達も魔物狩りに駆り出すのか?」

「流石に面倒は見きれんぞ?」


まぁ当然の声だろう。頷くと、若い一人の魔物狩りから自分に声がかけられる。


「頷くってことは自分たちが足を引っ張るって理解してるってことだよな?」

「ええ。自分たちは魔物の知識は貴方達よりも無く、戦闘経験値も低い。足を引っ張る以外の何が出来るのでしょう?」


自分がそう言うと、突っかかってきた魔物狩りの人はまだ何か言おうとする。

それを止めたのは、意外にもタレイアだった。


「その辺にしておいたほうが良いですよ。ここはあくまでもグリームワームに関する会議の場です。それに貴方、それ以上その子にイチャモンをつけるなら二人でタイマンしてもらいますよ?」

「はぁ!?ガキのおもりは無理だって話したばっかりでしょうが!」


突っかかってきた魔物狩りの人が声を上げる。一方で熟練者と見られる人達が自分の周りに集まってくる。


「……マジ?この子マジなの?」

「いやそうは見えないけど……。ギルドマスターが言うならガチでしょ」


なんの事だろう、と思っているとアストライアが近づいてきて自分に話す。


「タレイアさんね、たまにタイマンを提案をするの。面白いのは、そのタイマンの提案する状況よ」

「状況……?」


周りの人達の好奇心の目に晒されつつ、自分は首を傾げる。


「タレイアさんはね、突っかかった方がその相手より強ければその辺りにしておきなさい、で済ませるの。

逆に突っかかった人より突っかかわれた人……今で言うなら貴方よ。レテ君。

突っ込んだ人の方が弱ければ、タイマンを提案するの。そして、それは外れないわ。間違いなく、タイマンは突っ込んだ人が負けるの」

「えぇー……」


困惑の声を上げるが、納得である。

つまり、今デカイ声を上げている魔物狩りよりも、謙遜していた小さい子供の方が強い、と判断されたのだ。それは皆興味を持つだろう。

そこで一人の熟練の魔物狩りであろう大男がにかっと笑って叫ぶ。


「ギルドマスター!提案がある!

おい、そこのお前!その辺にしとけ!代わりに案がある!俺がこの子とタイマンしてえ!」

「えぇぇ……?」


やはり困惑の声を上げると、若い魔物狩りは渋々、といった形で黙る。タレイアもふむ、と考えてから言う。


「……一度だけ警告します。その戦いの結果がどうであろうと、貴方の知名度、信頼が下がる可能性があります。それでもやるというのですね?」

「あぁ!なんならこの子が勝ったら自分のパーティーが砂漠地帯の調査隊になろう!」

「では、この会議が終わったら許可します。それまではグリームワームの会議に集中してください」


その言葉を聞くと、熟練者の大男は笑顔で告げる。


「俺の名前はアデルカイン。お前は?」

「レテ、と申します」


そう言って、アデルカインと自分のタイマンが決定したのであった。


暑いですね。この小説を読み終わったら、是非一口水を飲んでください……

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