ギルドとギルドマスター
ナコクの門を潜ると、何とも言えぬ安堵感が身体を襲ってくる。同時に、どっと疲れが出てくる。
皆も同じようで、特にニアが疲労困憊といった感じであった。門番に見守られながら、床に座り込んでしまう。
「おう大丈夫か!?もしあれだったら俺の背中使うか!?」
ガゼルがニアに心配そうに問いかける。ニアは首を横に振ると、立ち上がる。
「大丈夫、です!がんばります!」
「うおおおおお!やっぱりいい子だなあああああ!!!」
ガゼルが泣きながらも、無理はしないでくれよな!と言うとニアに合わせて皆で頷く。
一方で、先頭を歩くスイロウ先生とベールは真剣な話をしていた。
「グリームワームの棲家……砂漠地帯に問題があると考えますが、スイロウさんはどうですか?」
「うむ。私も同意見だぁ。だがグリームワームは砂漠地帯でも屈指の強さの魔物。それが追いやられるとなると、かなりの強さの魔物が居ると思っていいだろうなぁ」
スイロウ先生が魔物狩りをしていたことは知っている。その先生が言うのだから、グリームワームは強いのだろう。
魔物狩りを専門に扱う施設……通称、ギルドに到着するとベールが入っていく。
「ベールだ。緊急の要件につき、ギルド長に面会を希望したい」
彼が緊迫した表現でそう言うと、受付の人が階段を上っていく。どうやら、ベールは相当位の高い魔物狩りらしい。
そういえばラクザにもギルドはあるのだろうか?そう思って双子に尋ねる。
「ラクザにもギルドってあるの?」
「あるよー!ただ、まぁ……」
「……タルタロスの襲撃で建物が壊れて、魔物狩りの人たちは丁度船に乗ってた。でも、影の被害に会わなかったから良かったかも」
なるほど、と思っていると受付の人が降りてくる。
「皆様、どうぞお通りください。ギルドマスターがお待ちです」
「恩に着る」
ベールを先頭にして、皆で上っていく。
一つの部屋にたどり着くと、コンコンと扉を鳴らす。
「入ってください」
丁寧な声でそう言われてベールが扉を開けるとそこに居たのは、書類仕事に追われる、見た目は二十歳に見える若い女性だった。
「お久しぶりです。タレイア」
「お久しぶりです、ベール。お茶も出せませんが、少しお待ちください」
そう言って彼女が仕事の書類をトントン、と整えて上を向く。
「……おや。これはまたお久しぶりですね。スイロウ」
「名前を聞いたときにまさかとは思ったが、タレイアだったかぁ……」
知り合いだったのか、とベール達と自分たちがスイロウ先生を見ると、くすりとタレイアが笑う。
「スイロウは私の魔物狩りの元パートナーです。それこそ、ナコクだけじゃなくセッカ、ノボリビ、ラクザなど色んな場所に行きましたが……。後ろの子達を見るに、無事教師になれたのですね」
「うむ。そちらも自由気ままにやると言っていたからここで会うのはびっくりだぁ。……と語り合いたいことはあるが、その前に彼らの話を聞いてあげてほしいんだぁ」
その言葉で、カイとガゼルが前に出る。
「まずはこちらをご覧ください」
そう言うと、ガゼルがグリームワームの部位が入った袋を渡す。
「これは……ふむ。グリームワームですね。しかし数が多いのでは?砂漠地帯まで行ってもこんな狩ってこいとは言えませんよ?」
「グリームワームが、草原地帯に現れました。それも、三体で連携を取って」
カイのその言葉に彼女はがたっと椅子から立ち上がる。
「……今、グリームワームが草原地帯に現れた、と言いましたか?」
「はい。間違いありません」
カイが冷静にそう言うと、タレイアは座ってから唸る。
「……まずは、よく生還してくれました。それが一番喜ばしいことです。
ですが砂漠地帯の魔物であるグリームワームが草原地帯に……となると……。初心者やスイロウの学院の子たちには荷が重いですね……」
ブツブツと独り言を呟いたあと、グリームワームの入った袋を観察して頷く。
「どこからどう見ても砂漠地帯生息の魔物、グリームワームで間違いないです。似た新たな魔物、という線ではありません。しかし……連携を?」
「はい。一匹を囮にして、二匹が潜伏して、隙を見て我々を捕食する予定だったと考えています」
カイの事実を述べる言葉に、タレイアは頭を抱える。
「単独行動だからまだギリギリ許されていたようなグリームワームが連携を取るとなると、早急に知恵を付けた親玉個体と、住処を脅かしていると推測されている魔物の討伐が必要ですね。……分かりました。他に伝えることはありますか?」
全員で首を横に振ると、ベールが以上です、と述べる。
「貴重な情報提供に感謝します。後の連絡はこちらからしますので、まずはゆっくり休んでください。……ああ、後スイロウ。こんな状況ではありますが貴方の泊まっている宿を教えて頂けますか?久しぶりに話をしましょう。お酒、飲めるようになりましたよ」
「うむ!私が泊まっているのは……」
スイロウ先生が饒舌に喋る横で、自分はベールにこっそり尋ねる。
『タレイアさんっておいくつなんですか?』
『今年で二十四……だったかな……?』
『えっ、じゃあ未成年で魔物狩りしてたってことですか……?』
『そうなるね』
そりゃギルドマスターにもなれるはずだ、と思いながら二人は頷く。
「よし皆宿に戻るぞぉ!ベールさんたちも、お疲れ様だぁ!」
「こちらこそ、ありがとうございました」
そう言って握手を交わした。
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