魔物狩り
少々トラブルはあったが、ベールや他の皆さんがしきりに謝っていたこともあり流すことにした。
「じゃあ早速魔物討伐といきましょう。最近はどこでも魔物が増えていますからね」
ベールが門番に頷くと、門番が門の扉を開く。
ベール達のグループが前、自分たちが後ろで付いていき、門を完全に通り抜けると後ろで扉が閉まる。
「さて。リゼット、今日はどこに罠を仕掛ける?」
ベールが彼女に問いかけると、彼女は元気に答える。
「はいはい!まずは各々の力量を確認しておきたいのね!だから、まずは魔物の中でも比較的脅威が低い、兎型……ラビットクローを狙おうと思うのね!ラビットクローが出現するのはここから少し南西方向に向かったところだから、そこに罠を仕掛けようと考えるのね!」
「ふむ。確かに力量の確認は大事だ。学院の方もそれで良いですか?」
スイロウ先生が最初に、自分たちがそれに続いて頷くと決まりだというように歩き出す。
「初見でアストライアの均衡化を防ぐ力量、知識。興味がありますね。学院生は皆こうなのでしょうか?」
歩いている途中にカイに尋ねられる。それを聞いて横を歩いていたクロウがブンブンと首を横に振る。
「流石にレテ……あぁ、コイツレテって言うんですけど。彼が強すぎるだけです。俺達が全員で束になっても勝てません」
「ほう……。それは特異能力故なのか、実力故なのか。どちらにせよ、興味が尽きませんね」
どうやらカイに気に入られたらしい。微笑まれたので、自分はお辞儀で返す。
その横ではショウとガゼルが熱く語り合っていた。
「やっぱり美味いんですね!あそこの天文盤のシチュー!!」
「あそこは特に絶品だなー!!いやあ、いい宿に泊まっているじゃないか!!やはり食事は美味ければ美味いほど元気になるな!!!」
「わかります!!俺もめっちゃご飯に元気もらうタイプなので!」
どうやら、熱い者同士で共鳴するところがあったようだ。飯と聞いて、ファレスとシアも話に混ざり込んでいった。
「ねえねえ!気になるのね!貴方の底、見えないのね!これ直感なのね!どうなのね?」
「そうですね〜。よく何考えているかわからないとは言われます〜」
ベールの後ろではリゼットとダイナが話し込んでいた。そこをカバーするように、ニアとクロウがダイナは良い奴なんです、と説明をし始めていた。
「アストライア……。その名前を付けた上に均衡化という特異能力。すごいですね」
「ふふ、そうね。両親もこんなことになるとは思わなかったでしょうね」
アストライアにはフォレスとレンター、ミトロが星座の話で盛り上がっていた。星詠みの家系に生まれた、というだけあって彼らの好奇心を満たす言葉を告げられているようだ。
「スイロウ先生。彼らは、良い子達ですね」
「うむ!自慢の生徒たちですなぁ!」
先頭ではベールとスイロウ先生がその様子を微笑みながら雑談していた。
十数分歩いて、森の近くまで来た。するとリゼットがスルスルと何かを用意して、地面に設置する。
「皆、頑張って気配を消すのね」
そんな事言われましても、という感じだが自分が薄く魔力を皆に通して気配を遮断させる。
「確かに、貴方が強いと言われるのがわかる気がします」
カイに褒められると、ガサガサと音がして兎のような魔物が草むらから出てきた。
順番的に、自分からだ。リゼットがこちらへと気配を消しながら来て耳打ちする。
『どんな方法でもいいのね。あの魔物を倒せると思う方法で倒してみてほしいのね』
『わかりました』
小声で伝え合うと、ラビットクローはクンクン、と香りを嗅いだあと罠の方へと向かってくる。
ガチャン!と罠が作動し、ラビットクローが足を取られて悲鳴を上げた瞬間に自分は魔法を行使する。
次の瞬間、罠の中のラビットクローはバタリ、と命を失って倒れた。
「え?何をしたのね?」
リゼットの問いに対して答えたのはカイであった。それも、とても面白いというように。
「なるほど。この倒れ方は恐らく酸欠だろう。魔法の行使の仕方が風の系統だったからな。となれば、魔物の中に何らかの風の空間……恐らく真空だろうな。それを発生させて、呼吸器官を停止。同時に心臓部も停止して倒れた、といったところかな」
「はい。その通りです」
その答えに、ベールは大きく驚く。
「へぇ!てっきり最初からど派手に血を撒き散らすものだと思ったけど、そんな細かい魔法を使えるんだね。すごいね」
「ありがとうございます。血をど派手に撒き散らすのは、彼女にお任せします」
そう言ってニアを見る。ニアは自身の事を指差した後に、ポンと手を打つ。
「じゃあど派手にやります!」
「……??わ、わかったのね。じゃあ次の場所でまた罠を仕掛けるのね」
リゼットに連れられて移動し、また罠を設置する。
今度は複数のラビットクローが現れる。群れなのか、警戒しつつも罠に近寄ってくると一匹が罠にかかる。
「ギュイ!?」
その様子に仲間たちが周囲を警戒するが、そのときには既にニアは構えていた。
「そーれっ!」
火属性の複数の線が魔物の群れの中を通過する。その瞬間、魔物は血を撒き散らしながら順番に絶命していく。
「これはこれは!ど派手にやったな!!」
ガゼルが褒めると、ニアが答える。
「はい!私、敵と認識したモノには強いんです!」
「ああ、そういうことなのね。私と同じ、特異能力持ちってことよね?」
「はい!アストライアさんの言うとおりです!」
ニアが元気良く回答する。アストライアが続けてニアに質問する。
「仮にそれをレテ君に向けた場合、貴女は勝てる?」
「うーん、無理です!」
「それは何故?」
そう言うと、二人の視線が自分を捉える。
「……正直、彼の特異能力は発動したら対人間なら無敵なので……」
「へぇ、そうなの!俄然興味が……いたっ!」
そこまで聞いて、アストライアはまたベールに殴られていた。
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