腹ぺこな人達
下に降りると、既にショウとダイナが待機していた。
「天文盤のシチューが楽しみなんだな……」
「当然だろ!?名物だぞ!!」
ショウに呆れつつ言うと、彼が飛びかかりそうな勢いで言ってくる。
「まぁ、こんな感じだからさ〜。僕も腹ぺこなのはわかるんだけど……ショウは熱意がすごいっていうか……」
「これはすごいねー……」
ダイナもシアも感心しつつ言葉を漏らすと、ファレスとフォレスも階段から降りてくる。
「あ!はやーい!皆シチュー目当て!?」
「勿論自分も楽しみだけど、ショウが飛び抜けて待ってるな」
自分が席から手を振ると、二人も席に座る。
「そうなんだー!私もシチュー目当てでフォレスと荷物置いてきたんだよね!」
「……私も、楽しみ。他の都市の料理だから」
そういえばどことなく、フォレスもそわそわしている。流石ラクザの令嬢。都市の文化に興味津々だ。
「……となると、この流れで遅くなるのは……」
「レンター君とミトロちゃんだろうね……」
ふと思ったことを呟くと、シアが自分と全く同じ考えを言葉で出す。
知識欲の強い二人だ。荷物を置いたら星詠み盤の使い方や星の説明を見ているだろう。
一時間後、その予想が的中して五分前行動で現れた二人には皆で苦笑するしかなかった。
「……すまない、夢中になっていた」
「私も……」
二人して全く同じ時間の使い方をしていたことに皆が微笑むと、料理が運ばれてくる。
「お待たせ致しました。本日の夕食である、天文盤のシチューと付け合せのパン、サラダと水でございます」
「うおおおおおお!!!!美味そう!!!!」
「ね!!すごい綺麗な飾り付けで美味しそう!!」
一時間待ちをしていたショウとファレスは大興奮であった。かく言う自分や他のクラスメイトも、おぉ……と感嘆を漏らす。
シチューの中には見るからに美味しそうなお肉に、各地から取り寄せたであろう色とりどりの野菜を大きな星型にカットしたものが乗せられており、更に天の川と呼ばれる現象を再現するために胡椒が軽く振られていた。
サラダもその野菜の詰め合わせであり、彩り豊かで見た目が既に面白く、かけられたドレッシングも美味しそうだ。
付け合せのパンも焼きたてなのがわかるほどふっくらとしており、シチューに浸して食べれば美味しいこと間違い無しだ。
水自体は特に言うことが無いが、グラスの模様が星マークで面白い。食事にも星詠み文化がかなり通っていると確信していいだろう。
「それじゃあ皆!頂こうではないかぁ!」
「いただきます!」
スイロウ先生の言葉に合わせて、皆で食べ始める。
「〜〜!!ほろほろ……!ほろほろなのに旨味が凄い……!」
「わっ!野菜美味しい〜!滅茶苦茶良いもの使ってそう……!」
ショウとファレスはそれはもう、ご満悦だ。自分も見ながらシチューを口に入れる。
「……!うまい!」
シチューの味付は優しく、どこか甘みのあるものだ。
そこに白山羊の肉の旨味成分と野菜の味が広がり、独特の美味しさを形成していた。
ふと隣を見れば、言葉にする前に美味しそうに食べるシアがおり、そういえばシアもそっち側だったと思い知らされる。
「ふふ、美味しいー!」
リアーもそう言って食べている。確かにイシュリア様は各地を統治しているだけであり、こういった料理を直に食べる機会なんて早々ないだろう。とても嬉しそうに見える。
数十分後、腹一杯になった皆で雑談していた。
「そういやこの中で星詠み出来るのって誰だ?ミトロとレンターは出来るだろ?」
そんなクロウの質問に、自分とフォレス、意外にもニアが手を上げた。
「一応の知識、程度だけど出来るぞ。というか、ニアができる事が意外だ」
「読んでる小説の中に、星詠みで出会って結ばれたストーリーのものがあって!面白そうだと思って勉強したんだよね!」
「……私は、レテ君と同じで一応知識としてあるぐらい」
となると、本格的なものは案外ニアに頼むのが正解かもしれない。
「自分は……まぁ、ナコクの近くだからな。家には星詠み盤は無いが、空をよく見ていた」
「私は本で読みました。ニアさんに頼むのが割と良さそうですね」
レンターとミトロはそう言って、ニアを見た。その好奇心の目を受け取って、ニアが焦る。
「えっ!?いや、私そこそこ分かるけど本職さんほどじゃないよ!?」
「そりゃ誰だってそうだろ。本職には勝てないよ」
ド正論でクロウが言い返すと、ニアがぐぇっ!と潰れたカエルのような声を出して撃沈する。それを見て、リアーがくすくすと声を上げている。自分はそんなリアーに声をかける。
「リアーは出来たりしないのか?」
「私は出来ない!今は!」
「今は……?」
その言葉にショウが首を傾げた時に、自分は察する。
(あぁ……イシュリア様としては出来るけどそういう設定で通すのね……)
今度占ってもらうか、と思ったところでスイロウ先生が立ち上がる。
「よぉし!じゃあこの後は大浴場を借りさせてもらってから寝るぞぉ!学院と違って寝る時間に制限はないが、明日に支障がないようになぁ!」
スイロウ先生なりの、星詠み盤を使えるようにとの優しさだろう。それを聞いて自分とクラスメイトは立ち上がる。
「じゃあ風呂入るか!」
自分のその一言で決定したようで、皆で階段を上がってそれぞれの部屋に帰った。
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