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異界の師、弟子の世界に転生する  作者: 猫狐
四章 黄昏のステラ
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星詠みの都 ナコク

ナコクに到着した。三日かかった列車の旅は、かなり過酷だった。

それでもまだ皆耐え切れたのは、列車に備え付けの暇つぶしの魔導具があったこと、寝台が快適だったこと、何より遠出したことのないシアの表情が常に嬉しそうだったことがあるだろう。

グーッと身体を伸ばすと、周りを見渡す。


ナコク。西の巨大都市であり、同時に『星詠み』と呼ばれる独自文化が発展している。

星詠み、というのは文字通り星が綺麗に見えるナコクの文化であり、星を見ながら五七五の詩を読んだり、星の移り変わりで未来を予測する占いの技術のことである。


「ナコクって、噂には聞いてたけど四階建て以上の建物って本当に少ないんだね」


見渡していたシアが言うと、ミトロが頷きながら言う。


「ええ。ナコクは星詠みの関係で夜寝る時に星が見えるように、との計らいで三階の屋根にはマジックガラスと呼ばれる特殊な建材が使われているようです。なんでも、外からは普通の屋根に見えるけれど内部からは外が見えるのだとか」

「へー!すごい!寝ながら星を見れるわけだね!」


流石ミトロ、と思いながら皆で移動を開始する。

数カ月お世話になる宿は魔物の出る平原まで一時間ほどの外れにあるようで、列車の駅から少しだけ歩いた。


「腹減ったー……」


ショウがそう呟くと、スイロウ先生が嬉々としながら言う。


「ナコクの料理は美味いぞぉ!特にこの時期、天文盤のシチューが有名だな!」

「天文盤のシチュー……!どんな料理なんです!?」


ファレスも食いつくと、スイロウ先生が解説をしてくれる。


「皆も知っての通り、ナコクは星詠みの文化が発展していてなぁ。その星詠みに従って育てられた、特別な白い山羊がいるんだぁ!

その白い山羊のお肉がもう、それはそれは美味くてなぁ!焼いてもよし、煮てもよしなんだが、それをホロホロの白いシチューにして、星飾りの野菜をトッピングをしたのが天文盤のシチューだぁ!」

「うわあああああ!それ食べられますか!?」


ショウが今にも暴れだしそうな勢いで聞くと、スイロウ先生は頷く。


「うむ!伝統的な家庭料理でもあるしなぁ!……おっ!着いたぞぉ!」


宿に到着すると、宿の人が丁寧に迎えてくれる。


「遠くからようこそナコクへおいでくださいました。何かあれば、私達に何なりとお申し付けくださいませ」

「す、すみません!天文盤のシチューって、食べられますか!?」

「おい、ショウ!」


クロウが腕で小突くも、宿の人は笑顔で頷く。


「はい!丁度今晩の料理にございますよ」

「やったー!!!」


飛び上がりそうなショウに皆が苦笑すると、宿の人も嬉しそうに話してくれる。


「楽しみにしてくれてありがとうございます。荷物を部屋に置いている間に、料理を作らせていただきますね。それまで、ごゆるりとお過ごしください」

「よーし!皆!いつもの二人一組だぁ!リアー君は……すまないなぁ。一人だ……」

「大丈夫ですよー!一人でゆっくり、星を見ます!」


リアーの合意も取れたところで宿の階段を上がると、シアが上を見上げて言う。


「わっ!すごい!本当に空が見える!」

「これは……すごいですね。私も実物を見たのは初めてです」

「……これはすごいな」


シアに釣られて、ミトロとレンターが首を上げて感想を漏らす。そのすきにクロウとニアが話しかけてくる。


「レテ君レテ君!」

「……な、なに?」


ニアとクロウの趣向はよく知っている。二人とも、ロマンチックな恋愛小説が好きなのだ。容易にこの後の言葉が想像できる。


「レテ、知ってるだろ?『今夜は月が綺麗ですね』……!古来から愛する人への告白として用いられてきた古語だぞ!チャンスは逃すなよ!?」

「だーーっ!そんなことだろうと思ったよ!」


がっくりとする自分に二人がケラケラと笑う。一通り見終わった三人が合流すると、部屋に毎に別れる。


「わーっ!すごい!星詠み盤?っていうんだっけこれ!」

「凄いよな、これ」


部屋に入ると、ベッドが二つに星の見えるテラス。そして、テーブルの上に魔導具が置いてあった。


「レテ君使えたりするの?」

「い、一応……?」


星詠み盤とは、簡単に言えば空に浮かんだ星に当てることで擬似的に占いの体験ができる魔導具だ。

本職である占いの人はそれこそ生年月日、産まれた時間まで聞いてから独自の星詠み盤で運勢を占うらしいが、流石にそこまで勉強はしていない。

用意されていた魔導具はもっとカジュアルで、星の種類を教えてくれながら『明日はこうなるでしょう!』ということを予測してくれる、初心者向けモデルだ。ある意味、ナコクらしいともいえる。


「夜に使ってみようか。とりあえず荷物を置こう」

「うん!」


二人で荷物をそれぞれのベッド近くの収納に入れると、必要なものだけ取り出して部屋から出る。


「あ!すごい!大浴場付きなんだ!……へー!午前二時までやってるんだって!すごい!」


シアが廊下にある張り紙を見つけて言う。大浴場、いいなと思う。

大浴場の上にはマジックガラスが貼られており、『湯に浸かりながらロマンチックな星詠み体験!』と書かれていた。


毎日19時に投稿を心がけて頑張っています!

面白い!続きが気になる!という方は明日も読みに来てくれると嬉しいです!

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