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異界の師、弟子の世界に転生する  作者: 猫狐
四章 黄昏のステラ
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母さんの昔話

「じゃあお父さんの一目惚れから始まったんですね〜!ロマンチック〜!」


シアがうっとりしながら言うと、母さんは微笑みながら言う。


「それからはもう、トントン拍子よ〜。お父さんは偉い人になって、給料でここに家建てて。二人で暮らしながら、結婚してレテ産んで、って感じね〜」


そうだったのか、と両親の結婚のルーツについて知る。

そこまで考えて、ふと余計な考えが一つよぎる。


「母さん、関係ないんだけど一つ聞いていい?」

「うん、なあに?」

「母さんは魔術学院でAクラスで主席卒業したんだよね?」

「そうよ〜!」 

「じゃあ魔術学院のSクラスで主席……っていうか、強かった人?賢かった人?って誰なの?」


本来ならば主席卒業はSクラスの生徒が担うはずだ。なのに、母さんはAクラスの卒業生。じゃあSクラスはどうだったの?って話である。


「お母さんが主席卒業したのは、卒業試験の筆記で満点取ったのもあるけど……一番は、Sクラスの人が譲ったからかしらね?」

「Sクラスの人?」

「そう!とっても強くて、お父さんとも仲が良かったのだけれど……とにかく恥ずかしがり屋さんで、前に出たくない人だったのよ〜」

「へぇ〜!なんか意外」


Sクラスの人は全員が全員、見られることに慣れてないというわけか。


(って、卒業試験で満点!?)


心の中で戦慄する自分に続けて、シアが質問する。


「その方は今どうしてるんですか?」

「うーん、卒業したら魔物を狩りに行くって言ってて……。それからは何も連絡ないわね〜。お父さんなら何か知ってるかしら?」


父さんと交流があったのなら、父さん個人に手紙を書いていてもおかしくないな、とは思った。


「その人とも手合わせしてみたいな……」 


父さんとも手加減ありだが手合わせをしたのだ。ぜひ、その人とも手合わせをしてみたい。 

そう思って発言すると、母さんがうんうんと頷きながら言う。


「ふふ、スイロウさんも強かったわね〜!お父さんに頼んでみたらどうかしら?」

「……え?か、母さん、今なんて……?」


なんか、よく知っている名前が聞こえた気がする。震える声で自分が尋ねると、キョトンとしながら言う。


「お父さんに頼んでみれば?って……」

「その前!名前!」

「名前ね!スイロウさんっていうのよ〜!水属性が得意な人だったの!」

「あわ、あわわわ……」


世間とはこんなに狭かったのか。シアがアワアワし始め、自分はあんぐりと口を開ける。 その様子に母さんが不思議そうに聞いてくる。


「二人ともどうしたの?どこかで会ったことあるの?」


会ったことある、というより……。


「……Sクラスの担任だよ。スイロウ先生」

「まぁ!?スイロウさん、今は学院に戻って担任の先生やっているの!?あの恥ずかしがり屋さんが!?」


今度は母さんが驚く番だった。こくりと首を縦に振るとスイロウ先生について話す。


「声が大きい……なるほどね〜!スイロウさん、変わらないわね〜!恥ずかしがり屋さんなのに声が大きいから、余計注目されて縮こまっていたのが懐かしいわ〜!」 

「スイロウ先生、そんな事があったんですね!」

 

シアが先生の新たな一面を知れて嬉しそうにしている。自分もまさか、スイロウ先生が両親の同級生だとは思っていなかった。


「スイロウさんはその名前の通りなのだけど、水を使った技……特に、水牢と水狼っていう魔法を使った『二刀流』で戦っていたのよ!」

「すいろうと、すいろう……?」


言葉とは難しい。母さん的には違うすいろうが出てきたのだろうが、自分とシアはちんぷんかんぷんだ。

それに気づいた母さんが、詳しく説明してくれる。


「そうよね!言葉じゃわからないわよね!

一つ目の水牢は、みずに牢獄のろうの字を書いてすいろう、と読むの!簡単に言えば、相手を高圧の水の牢獄に閉じ込めて、その中を徹底的に攻撃する手法ね!」

「スイロウ先生そんなことできたの!?」


そりゃあ魔物なんてイチコロだろう。出ようとしたところを潰されてお終いだ。しかし、えげつない。対処法が無理やり突破するという力技しかないのが、特に。


「二つ目の水狼はみずにおおかみ、と書いて水狼ね。水の狼を扱って、精霊召喚のように一体多数の状況に持ち込んで戦う方法よ〜!」

「……スイロウ先生って、何系統が得意なんですか?」


シアの疑問はもっともだ。基本的に得意なものを伸ばした方が強いこの世界において、今の二つは収縮と顕現とバラバラである。


「収縮系統じゃなかったかしら?本人に聞いてみるのが一番よ〜!」

「それもそうか……」


スイロウ先生とは冬休み明けに会えるのだから、その時に聞いた方が確実だろう。


「なんだか、すごいお話をありがとうございました!」

「ううん!お母さんも懐かしくなっちゃった!……さ、ご飯片付けましょうか!二人は風呂入ってきていいわよ〜!」


食べ終わった食器を運んでいく母さんを尻目に、自分とシアは自室に戻って風呂の準備をする。


「『雷神』に『二刀流』……いつか本気で手合わせしたいな」

「あはは……レテ君本気でやりそうでこわーい……」


シアの若干引いた声を聞きながら、二人で風呂へと向かった。


 


毎日19時に投稿を心がけて頑張っています!

面白い!続きが気になる!という方は明日も読みに来てくれると嬉しいです!

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