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異界の師、弟子の世界に転生する  作者: 猫狐
四章 黄昏のステラ
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何気ない朝

ご飯を食べ終わった後、風呂に浸かりながら考える。

(……やりたいこと……か……なんだろう)


「ねー、レテ君」

「ん?」


湯船に一緒に浸かっているシアが声をかけてくる。

結局、母さんの強い押しで風呂は二人で入ることが固定になった。そんなわけで、自分は衣装一つ纏っていないシアと二人きりである。


「なんか、ごめんね。見つからなかったら無理に見つけなくてもいいんだよ」

「いや、自分は何か見つけるよ」


シアの方を極力見ないようにしながら言うと、彼女もこちらから視線を外しながら言う。


「……レテ君、料理とか出来ると思うってお母さんに聞いたんだよね。やらないだけで、って」

「料理、料理か……」


菓子作り、アリではある。何かを作ることはいいかもしれない。

ただ菓子だと母さんの手が必要になる。父さんと母さんの手を借りず、かつ作れるもの……。


「……お守りでも作ってみようかな」

「お守り!いいんじゃない?」


お守りなら裁縫をしている二人の横で教えてもらいながら作れるであろうし、中に術式を組み込めば何かしら面白いこともできるだろう。


「お守りかー!孤児院の頃はよく皆で手作りのお守りあげてたなー!」

「シアも作ってあげてたのか?」

「うん!それこそネイビアとかにはもらった記憶あるよ!」


こちらを向いて微笑むシアに微笑み返すと、自分は立ち上がる。


「先に上がってるね」

「はーい!私はもう少しゆっくりしていく〜……」


自分とシアが最後なので、シアの気が済むまで浸かればいいだろう。

脱衣所で体を拭き、寝間着を身に纏うと部屋に戻る。

お守りに込める術式。お守りの中なのだから、そんな大層な術式は込められない。


(言霊を使うか。……いや、使ったところで何を込めるか……)


言霊で魔力を圧縮して入れたとしても、結局どんなものを込めるか。これが問題となってくる。


「ふぅ〜……上がったよー!」

「お疲れ様、シア」


寝間着姿で入ってきたシアにおかえりを言うと、この問題は後回しにしようとぶん投げる。


「どうする?もう寝る?」

「寝るー!列車に揺られたからか、クタクタで……」

「じゃあ寝ようか。……実は自分もかなり疲れた……」


クタクタなシアがベッドに入ると、電気を消してその横に潜り込む。


「おやすみ、シア」

「おやすみ、レテ君」


二人でぎゅっとお互いを抱き枕のようにしながら目を閉じると、すぐに眠気がやってきた。


翌朝。自分が眠気に抗いながら目を開けると、シアがこちらを見ていた。


「わ、わ!?お、おはよう!」

「……?おはよう、シア……」


もしかして寝顔を見ていたのか、と思いつつ彼女に聞いてみる。


「……何分前から起きてた……?」

「えーっと……二十分……ぐらい?」

「……ふぁぁ、なるほど……。二十分も寝顔見てて飽きなかった……?」

「全然!レテ君可愛い顔して寝てたなって思ってた!」


欠伸が途中からゴフッという咳に変わる。可愛い、可愛いとは……。


「それより何かいい匂いするよ!早く行こ!」

「……そうだね、行こうか」


扉を貫通して漂う良い香りに釣られ、自分とシアはベッドから降りてリビングへと向かった。


「おはよう!レテ、シアちゃん!」

「おはよう、父さん」

「おはようございます、お父さん」


リビングでは父さんが皿を出してお手伝いしていた。全身から滲み出る嬉しいを感じ取りながら、聞いてみる。


「今日の朝食は?」

「焼いたベーコンと卵焼き、白米に味噌汁!母さんのお手製味噌汁、やっと子どもたちと飲める……!」

「アナタ、そんな子供とお酒飲むみたいなテンションで言われても……もう!おはよう!レテ、シアちゃん!」

「おはよう、母さん」

「おはようございます、お母さん!」


自分とシアもお手伝いとして出来た料理をテーブルに運ぶと、父さんが本当に嬉しそうに言う。


「やっと、やっと休日が……!」

「……あれ?父さんって最近休日なかったの?」


そう聞くと、涙目で頷かれる。


「実は父さん、ノボリビ方面の警備に出張していてな?一時的にイシュリア城にいたとはいえ、それ以外は……ずっとノボリビで……」

「……よかったね、休み貰えて……」


また泣き出しそうな父を見ながら、軍人というのは大変なんだな、と思う。


「はい!出来たわよー!後は自分たちで白米よそって!」

「じゃあ父さんは最後でいいぞ!食べ盛りの二人とも、存分によそってきなさい!」

「ありがとう、父さん!」


自分とシアが立ち上がると、それぞれ白米をたっぷりよそる。その量に父さんも満足そうに頷いている。


「うんうん!沢山食べなきゃな!さて、父さんも!」


見越してあったのか、白米は多めに炊いてあった。なので、全員がよそっても大丈夫だった。


「それじゃあ、いただきます!」

「「「いただきます!」」」


そうして、また我が家の一日が始まった。


た、体調が……!暑い……!

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