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異界の師、弟子の世界に転生する  作者: 猫狐
四章 黄昏のステラ
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冬休み前、二人との手合わせ

「うぐー!今年も……やばい……ぜ……」


ショウがばたりと机に倒れると、レンターが呆れ顔で言い放つ。


「……去年あったから、皆で対策したじゃないか」

「それでもだぜ……なぁ、ファレス……」

「えっ!?私!?」


いきなり飛び火したファレスは、逆にピンピンした様子であった。

その顔は、私は大丈夫だと書いてありショウが更に落胆する。


「うおお……皆で対策して俺だけかよ……筆記やばいの……」

「まぁまぁ……」


クロウが宥めるように手を出すと、リアーがケラケラと笑う。


「私もやばいかも!」

「うおおお!本当か!リアー!本当か!?」


一縷の希望を持ってショウが起き上がると、リアーは笑顔で頷く。


(絶対手を抜いたな……)


自分はそう確信しながら、隣のシアに話しかける。


「今年も冬休みだな」

「だね〜!早いよ……」


思えばこの数カ月、早かった気がする。

皆で手合わせして、魔物の張り紙がされて。

魔力が使えなくなって、また使えるようになって……。

自分のエピソードだけでも多いのに、他の皆の事も合わせたら本当に多いだろう。

そんな中、コンコンとノックがされる。


「すみません、レテ先輩はいらっしゃいますか?」

「ん?いるよ」


女の子の声を聞いて扉を開けると、そこにはアステスとネイビア、それにナイダがいた。


「……冬休み前にすみません。どうしても、貴方に頼みたいことがありまして」

「頼みたいこと……?学年首席が二人揃って……?」


皆もどうしたどうした、と近づいてくるとナイダが言う。


「単刀直入に言う。レテ君。この二人と二体一で勝負してあげてほしい」

「理由は?アステスはともかく、ネイビアまで来た理由が分からない」


アステスは勝負してあげて、と言われていたので分かるがネイビアがわからない。

ネイビアは何かをグッと堪えて、口を開く。


「……冬休み、シアさんはレテ先輩の家に帰るのでしょう。それを否定する気はありませんし、止められもしません。

でも、そのままでは自分が納得できません。だから……強くなった自分とアステスさんで、挑みたい。貴方に」

「なるほど。理屈じゃ語れないことだね。その勝負、受けた」


皆、特にシアが心配する中自分はにかっと笑って言った。


「大丈夫。手合わせだからさ」

「……うん」


どこか複雑そうな表情を浮かべながら、シアは頷いた。



予約されていた訓練場に連れて行かれると、ネイビアとアステスが自分と反対側に行く。

アステスが前に、ネイビアが後ろに立つと内心感心する。


(二人ともお互いをカバーする立ち位置が完璧だ。流石首席……いや、鍛錬の成果かな)


一学年の先生が鈴を持ったのを見て、自分も木刀を握り締める。


「それでは……始め」


ちりん、と鳴らされるとアステスが地を蹴って突っ込んでくる。


勢い良く繰り出されるパンチをひらりと左に避けると、そこにゴーレムが顕現しているのが見えた。

ゴーレムが手を振り下ろす直前に後ろに飛ぶと、またアステスがこちらに突っ込んでくる。


「ふっ!」


アステスが光で広範囲を覆い、視界を奪われる。

だがただでやられる程自分も甘くない。


「炎の騎士よ。焼き尽くせ」

「「ッ!?」」


光で見えなくなったのはアステスも同じ。その言葉と同時に炎の騎士が地面に炎を吐き、地面を焼き尽くしていく。


「そこっ!」


下がっていく気配を感じて思い切り岩を投擲すると、鈍い音が響く。


「くっ!」

「まだ……!」


光が解除されると、周りに土のゴーレムがずらりと顕現していた。

物量で殴りかかるゴーレムに対して、自分は右の一体にジャンプして乗りあがり、更に蹴って上に飛ぶ。


「せいっ!」


身体を回転させながら、火と水を合わせて熱湯にした物をゴーレム達に上から広範囲に注ぎかける。

ゴーレム達が熱湯で溶けるのを見て、そのまま自分は空中に土の足場を顕現させてネイビアの方へと向かう。


「空中を!?」


驚くネイビアに対し、復活したアステスが地面から光の球を投げつけてくる。


「ふっ!」


水を付与した木刀で横薙ぎに叩き切ると、光の球が蒸発する。

その間に、アステスがネイビアのゴーレムを借りて足場に到着していた。


「はっ!」


素早い蹴りを繰り出すアステスに対し、自分は足場を増やして避ける。

更に追撃をかけるアステスに対して、自分はこのままだとジリ貧だと悟る。


(……ここまでにしておくか)


二人を心の中で称賛しながら、自分は口を開く。


「大雨よ。降れ」


そう言うと不自然な雲が形成され、二人の頭を上から雨が降り注ぐ。


「えっ!?ちょっとレテ君本気!?」

「シアさん……?」


焦るシアに、ミトロが不思議そうな声を出す。


「ま、待って!待ってあげて!?二人とも、ここで降参しておかない!?」

「降参する理由がありません!」

「シアさんの頼みと言えども!まだ負けてないっ!」

「……シアは何をそんなに焦っているんだ?」


レンターも不思議そうに言うが、シアはとにかく焦ったように言う。


「ああ!じゃあちょっと皆もっと離れて!もっと!もっっっと!流れ弾きたらまずいよ!?」

「流れ弾……って、雨だよな?」


クロウが下がると、自分は木刀を上に投げて強風で自分を浮かせる。


「雨粒よ。木刀となれ」

「……は?」


ショウが意味分からない、というふうに呟くと同時に雨粒が木刀に変わる。


「うわあああああっ!?」

「ぐああああっ!?」


木刀は、雨のスピードで二人に降り注ぐ。

アステスはネイビアの土の壁で一時凌いだが、壁が物量により破壊されたことにより地面へと降りる。

ネイビアもゴーレムに守らせていたが、ゴーレムに木刀が数多の如く突き刺さり、破壊される。


「そこまで!」


先生の号令がかかると、自分は雨雲を消す。

同時に、大量の木刀も消える。あれは魔力で作られたものなので、片付けなくてよい。


「レテ……おま、お前……」


ショウが口をパクパクさせているのを見ながら、シアが疲れきった二人に言う。


「……ね?言ったでしょ?これ、もっとひどいのあるんだから」

「なんですか……それ……顕現ってレベルじゃないですよ……」

「私達の、負けです……」


乾いたネイビアの笑いと、アステスの悔しそうな声が訓練場に響いた。

毎日19時に投稿を心がけて頑張っています!

面白い!続きが気になる!という方は明日も読みに来てくれると嬉しいです!

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