表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異界の師、弟子の世界に転生する  作者: 猫狐
四章 黄昏のステラ
238/272

もしも加減をしなければ?

学院の医務室に運ばれたダイナの周りで、自分はスイロウ先生に怒られていた。


「殺さなければいいとは言ったが!あくまで比喩だということはわかっているのかぁ!?」

「わ、わかってます……」


正座している自分と、その前に立つ先生達。クラスメイトの皆も今回のは擁護できないぞ、とばかりに無言を貫いている。


「私達はあの暗闇の中で何があったのかは分かりませんが……。脇腹と脚に貫通痕、顔も若干掠っていますね。一体何を考えて攻撃したのですか?」

「本気で、と言われたので……」

「本気なら何でもやっていいと考えているのですか?」

「そんなことはないです……」


粛々と怒られている自分に助け舟を出したのは、ダイナだった。


「先生方……あんまりレテを怒らないであげてください。僕が本気を出して、と言った上に特異能力まで使ったからです……」

「……本人がこう言っているので私達からはこれ以上言いません。高学年になるにつれて、怪我の度合いは上がっていきますからね。

ただし!本当に相手が死ぬかもしれない攻撃は止めてくださいね。次は良くて謹慎、悪かったら退学ですよ」

「ハイ……」


先生がそう言って立ち去ると、ダイナがふふっと笑う。


「笑い事じゃないぞダイナ!?」

「いや、あまりにも……レテが容赦なかったからさ〜。本当に元に戻ったんだな、ってさ〜」

「あのなぁ……」


頭を抱えていると、ダイナがまた追撃をかけてくる。


「しかもレテ、本気出してないし」

「うっ!?い、いや!本気だぞ!?」

「それって最後の方だけでしょ?しかも、最後の攻撃、かなり手加減されていたし」

「いやいやいや!殺さない攻撃って結構難しいんだって!」


その言葉に医務室の先生とスイロウ先生、皆が唖然とする。


「殺さない攻撃が難しいって……どういうことです?」

「まさかレテ君……前科が……」

「無いです!本当です!前科、ないです!」


スイロウ先生の本気で退学処分になりかねない言葉に反論する。

前科はない。正当防衛だ、とタルタロスの事を思い出しながら言う。


「ええと……じゃあ参考に聞きたいのですが」

「何?ミトロ」

「もし、本当に加減しなくていい。ダイナ君を殺してもいい、という状況であったならどういう手段を取りましたか?」


その質問に少し考えた後、自分なりに考えてみる。

ダイナを、人を殺してもいいという条件下で加減をしない、となれば……。


「えっと、特異能力はあり?なし?」

「加減しなくていいので、ありです」

「……特異能力使って、相手を狂乱に落とし込んだところで土の顕現で相手を完全に包囲。その中に火を顕現させて、窒息死させるね」

「……本当に加減しないな……」


レンターが納得、というように頷くとスイロウ先生がどこか疲れた顔をしながら言う。


「……それ、絶対魔物相手以外禁止だからなぁ」

「分かってます……」


自分も反省しながら座っていると、ぽん、と肩に手を置かれる。


「大変だね。レテ君」

「大変だよ、シア……。待って、その顔はやめて。悲しくなる」


どこか哀れみを含んだシアの表情を見て、皆が噴き出す。

ダイナはそれを見て、微笑んでいた。


数十分後、ダイナと共に無事医務室から出てきた自分は正面からやってきた人と挨拶をする。


「あれ、ナイダ。こんにちは」

「こんにちは。……魔力が戻ったと聞いたの。本当?」


その言葉に皆が驚く中、自分は一人の人物の方へとぶんと身体を向ける。


「……へ?何?」

「リアー?」

「な、何!?私だって知ったのついさっきだよ!?」


あわわ、と慌てているが間違いない。この速度でピンポイントで重要人物に情報を流せるのは、イシュリア城で手術したことを知っていて、門を開ける人であり、尚且つナイダの正体を知っている人に限られる。

つまりイシュリア王……リアーで確定だ。


「え、リアーちゃん知ってたの?」

「ファレスちゃんまで!?うわーん!!濡れ衣だよー!!レテ君酷いよー!!」


嘘泣きをし始めると、ナイダがコホンと咳払いをする。


「それで、本当なの?」

「ああ、本当だよ」

「……そう。今度アステスに訓練付き合ってあげて。あの子、レテ君は武術も出来るって聞いたら俄然やる気出しちゃって」

「そうか、わかった」


それじゃ、と通り過ぎていくナイダ。それを見てリアーが思い出したように言う。


「じゃあ私、ネイビア君の誤解解いてくる!」

「ああ……お願い」


そっちもどうにかしなきゃだったか、と思いながらリアーは駆け出して行く。


「さて、俺はダイナ引き連れて休むぜ」

「そうだね〜。ご飯の時間まで休むよ〜」


ショウとダイナは二人で話しながら、寮の方向へと向かっていった。


「……あ、そういえばこんな時のために魔道具があるんだよな」

「……?レテ君、何か持ってるの?」


フォレスの質問に大きく頷く。 


「父さんが大人数で遊ぶ為の魔道具買ってくれたんだよ。皆で遊ばないか?」

「いいねー!賛成!」

「私も、賛成です」


ファレスとミトロが賛成。レンターとクロウも賛成。シアも当然賛成し、皆で自分とシアの寮の部屋に行って、遊ぶことにした。






毎日19時に投稿を心がけて頑張っています!

面白い!続きが気になる!という方は明日も読みに来てくれると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ