表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異界の師、弟子の世界に転生する  作者: 猫狐
四章 黄昏のステラ
237/270

試すために

最後の方に軽い流血表現があります。お気をつけください

レテが出ていった後、ダイナが皆に向かって話す。


「……正直、不安なんだ。レテが」

「レテ君が?」


シアが聞き返すと、ダイナはこくりと頷く。


「今までは僕達が束になっても敵わない強さを持っていて、それがこの前失われて……。そう思っていたら、本人は復活したって言ってたでしょ。

……その実力が元通りなのか、本人がそう思ってるだけなのか……僕達は測らないといけないと思うんだ」

「……つまり、今までレテに頼んでいた訓練に、レテ自身が耐えられなくなる可能性があるということか」

「レンター、そういうこと」


不安な空気が皆の中に漂う。

少し前まではどんなことがあっても負けるビジョンが見えなかった相手が、簡単に負けるかもしれない。

それは喜びではなく、恐怖。

今まで目標としてきた人が突然消える恐ろしさ。

そう思っているところにシアが恐る恐る話しかける。


「多分……大丈夫だと思う」

「シアはなんでそう言えるの?」


ダイナがいつも通りののんびりとした声で聞くが、若干ぎこちなさがある。それに対してシアが答える。


「とても強い軍人の人と手合わせをした場面を私は見たんだけど……。あれは、私達には理解できない強さだと思う。私は、あのレテ君には勝てない」

「……強い軍人さん?」


誰でしょう、とミトロが呟くとレテがスイロウ先生を連れて帰ってくる。


「レテ君から大体話は聞いたぞぉ!ただ、病み上がりなのに加えて特異能力も使うつもりと聞いたので、複数人体制で見守らせてもらう!」


スイロウ先生の言葉を聞いて、ダイナがレテの正面へと行く。


「……本気、出してね」

「ダイナがそう言うなら」



訓練場の一角。特異能力を使う想定で組み込まれた結界の中に自分とダイナが入る。


「ルールはいつも通りだぁ!お互い本気で殺し合うのは禁止!後は好きにやってくれ!」

「はい!」

「わかりました〜」


二人で返事をすると、スイロウ先生がベルを取り出す。


「それでは……始めっ!」


ちりん、と鳴るとダイナが動き出す。


「ふっ!」


広域化系統の風。暴風を生み出して迫ってくる竜巻を、自分は風の騎士で対抗する。

強い風が吹いてお互いの初手が消え去ると、ダイナが風の壁で自分を挟もうと試みる。

だが自分が土の壁を生み出して物理的に消去したのを確認すると、ダイナは次の手を打ってくる。

風の玉を広域化系統で膨らませ、次々に飛ばす。更に竜巻を発生させ、逃げ場を塞いでくる。


「おっと」


自分が一個玉に当たりかけると、玉が爆発する。簡単な話が、爆弾だ。


「どうしたの?迎撃しないの?本気で来てって言ったよ?」

「……じゃあ、遠慮なく」


怒りを孕んだ声を出すダイナに対して、自分は手を翳す。


「反転」


そう言うと、自分の方へと向かってきていた玉と竜巻が、逆にダイナの方へと向かっていく。


「えっ!?」


ダイナもそれに驚いたらしく、慌てて風を消す。

その隙に自分は風の騎士を呼び出し、突撃させる。


「くっ!」


ダイナが竜巻を生み出して騎士を迎撃するのを見て、自分は地面に手を当てて言霊を発する。


「地よ。励起せよ」


その言葉に呼応するように、ダイナの足元が上がっていく。

バランスを風で保っている彼に対し、周りに風の騎士を配置する。


「一斉掃射」

「ッ!もう使うからね!」


そう言って、不意に視界が真っ黒に染まる。


(なるほど、奈落迷宮で避けたか)


前に奈落迷宮を一緒にコントロールしたとき、分かったことがある。

この状態でのダイナは、『浮遊』できる。

恐らく迷宮内だけだろうが、それでも十分強力すぎる能力だ。

前回は能力の様子見とコントロールが目的だったが、今回は自分に勝つための手段として使っている。

なら、こちらも手段を選んでいる場合ではないだろう。

手に風の剣を顕現させると、言霊を込める。


「二刀、審判」


そう言って自分の目の前をクロスで二つ切り裂くと、そこを中心に周りの物が引かれていく。


「えっ!?」


それはダイナとて例外ではない。言霊の力で目の前に来た彼に対し、自分は強風を込めた塊をぶつける。


「ぐっ!?」


ダイナが飛ばされていく。それでも彼が諦めた様子はない。


「ゲホッ、なにそれ……」

「まだ続ける?」

「当然ッ!」


彼は周りから竜巻を発生させ、一定の規則を持たせてこちらに当てに来た。

これがわかるのは、自分が風の能力を扱う都合で風に敏感な事と、動く音が規則的だから分かることだ。目には何も見えない。

だから、物量で押し切る。


「水の騎士よ。軍隊となり、竜巻を消せ」


大量の水の騎士を顕現させると、恐らく竜巻が通るであろうルートに突撃させる。

ビチャ、バチャと騎士が弾け飛んでいく。そもそも吹き飛ばすのに適している風に、頑丈ではない水の騎士を飛ばすのは普通なら得策ではない。土の騎士で消すべきだろう。

だが、今はこれでいいのだ。


規則正しく動く竜巻に一定の方向から水を当てれば、竜巻が広域化系統で作られた純粋なものだからこそ、水は一定の距離を飛ぶ。

上下左右、どこまでも飛ぶ。だから、自分の方に飛んできているのを浴びて実際びちょ濡れだ。

しかしそれはダイナとて同じ条件なのだ。冷たい水を浴びた。これが決め手になる。


「水よ。凍り付け」


そう言うとパキ、パキと音がしてくる。自分の身体は火を顕現させて溶かすと、ある一定の方向から不自然にパキパキと鳴っている方向がある。


「そこっ!数多の光の騎士よ!弓を持ち、氷を穿け!」


ミストルテイン。幾ら奈落と銘打っていて周りが見えなくても、顕現による光の矢は氷を捉え、熱量で攻撃する。

……流石に、威力は手加減しているが。


「ぐぁっ!?」


上空で声がしたと同時に、奈落迷宮が解除される。自由落下してくるダイナを、風の騎士で受け止める。


「あー……ごめん。今治療する」

「……本当に、戻ったんだね……」


脇腹や足から血を流しているダイナを急いで光魔法で止血すると、先生たちが急いでやってくる。


「勝負の結果は後だ!ダイナ君を運ぶぞ!」


先生が急いで運んでいくのを、自分たちは皆で追いかけた。




毎日19時に投稿を心がけて頑張っています!

面白い!続きが気になる!という方は明日も読みに来てくれると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ