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異界の師、弟子の世界に転生する  作者: 猫狐
四章 黄昏のステラ
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大いなる誤解

シアが泣き止むまで数分。ずっと抱きしめたままの状態だった。

ぎゅっとお互いが生きていることを確認するように、強く、強く抱きしめていた。


「……ありがとう。戻ろっか」

「わかった」


シアが泣き止むと、二人でノートを手に持って食堂に戻る。


「ここでは邪魔ですので、教室に行きましょう。……シアさん?目元が赤いですが……」

「ちょ、ちょっと目を擦りすぎて……」

「……??」


ミトロが不思議そうに首を傾げているが、彼女の言うとおりだ。食堂では邪魔になる。

皆で教室に移動して、自分とシアはノートに書き写す。

その間、皆は報告をしてくれた。


「そういえば風呂のときネイビアが訪ねてきてよ。二人はどこに?って言ってたから二人で入院って伝えたらなんか……すごい顔して戻っていったぞ」

「ちょっと待てショウ。二人で入院ってことしか言わなかったのか?」

「なんかまずかったか?」


無邪気なショウの言葉に、何も言葉を出せない。パクパクと水を飲む魚のように口を動かしていると、ダイナが言う。


「……それ、妊娠したから入院って捉えられてもおかしくないと思うよ〜」

「……あっ」


ようやく彼も事の重大さを思い知ったらしい。みるみる顔が青ざめていく。


「おいどう収集つけるんだこれ!」


ショウが思いっきり叫ぶと、クロウが頭を抱える。


「当人のレテとシアは報告に行けない。となれば他の誰かが誤解を解くしかないだろうな」

「私が行こうか?このクラスの中ならまだ話しやすい方だと思う!」


ニアが立候補してくれる。ニアなら十分誤解を解けるだろう。解けるのだが……。


「ニアはあることない事吹き込みそうで怖くて……」

「えー!?レテ君ひどい!私がどんなことを吹き込むと思ってるの!?」

「二人は恋人だからそういうことしてそうだよね!とか」

「……言うかも」


ほら言わんこっちゃない。自分が再び頭を抱えていると、はいはい!と手を上げられる。


「私が行くよ!」

「リアーが?」


リアーなら適切な情報を出せるだろうし、問題なさそうに見える。

シアもそう思ったのか、顔を上げて言う。


「じゃあリアーさん、お願いできる?」

「まっかせて!」

「というか、シアさんは動揺しないのですね」


ミトロの至極真っ当な意見に対して、確かにと思う。

別にそういう行為をしたわけではない。布団で添い寝したとして、及んだわけではないからだ。

なのに彼女はどうして涼しい顔をしていられるんだろうか。


「イシュリアの結婚年齢って、二十歳じゃない?」

「そうだね。二十歳だ」

「でもレテ君十五歳じゃない?」

「十五歳だな」

「五年のうちに既成事実作っちゃってもいいかなって思って」

「ぶっ!?!?」


自分が倒れると、ニアとクロウ、リアーが目を輝かせ、ショウが大笑いする。ファレスとフォレスはお互い何か考えており、ミトロとレンターとダイナは顔に「やめておけ」と書いてある。


「……うん。既成事実ね。大丈夫。作らなくていいよ」

「えー?でも入院中、襲ってもいいって……」


そこまで聞いて、クロウが身体を乗り出して聞いてくる。


「レテ!今の言葉本当なのか!?」

「えっ!!??い、いや、確かに自分が入院しているときは弱いから襲いたくなるのは分かるけどそれはダメだって言ったはずだ!」


慌てて弁明するも、恋愛大好き二人組はこうなると止まらない。


「在学中はまずいよね!となると……四年後?五年後かなぁ!?」 

「そうなるとレテとシアの子供が見られるのか……!可愛いだろうなぁ……!」

「ちょ、勝手に話を捻じ曲げないでくれ」

「えー……レテ君、私と子供作るのヤダ?」

「そうじゃなああああい!!」


叫んで机に突っ伏すと、ダイナが哀れむようにぽん、と肩に手を置いて言う。


「なんか……シア、積極的だね〜。レテ的には子供何人ほしいの〜?」

「考えたことないよ……」

 

本当に考えたことがないし、真面目に襲われそうで怖い。シアも常識と理性でセーブされている間は襲ってこないだろう。


「……そうだ、レテ」

「なんだ、ダイナ……」


疲れきった声で横を向いて尋ねると、ダイナがいたって真剣な顔でこちらを見ていた。


「魔力も魔法も戻ったんだよね?」

「ん?ああ、そうだね。一応元通り……とはいかないけど、まぁ応用術みたいなのを見つけて何とかなってるよ」

「……なら、この後。訓練場で僕と勝負してほしい」


とても真剣な目。それを見れば、自分は顔を上げて尋ねる。


「これまた、どうして?」

「スイロウ先生と戦って思ったんだ。自分より強い人と戦えば、僕はまだ成長できる。

そして風を使う系統で知る限り、一番強いのはレテ、君だから」

「……なるほどね」


その言葉に嘘はないと見た。レンターが更にフォローしてくれる。


「……居なかった間に学院交流があったことは知っていると思う。そこで、積極的に先輩とダイナは戦っていたんだ」

「へぇ、あのダイナが……」

「どの先輩も強かった。でも、同時に思ったんだ。

僕でもギリギリ勝ててしまう先輩は、仮に僕が奈落迷宮を展開したら簡単に勝ててしまうな、って」


そうだろう、とは思う。

ダイナの特異能力、奈落迷宮は視界と平衡感覚を奪う能力だ。言うなれば、一方的に攻撃できるに等しい、空間侵食の類だ。それを回避するのはかなり難しい。初見殺しといっても過言ではない。


「でも、レテはそうじゃない。奈落迷宮を展開したとしても、レテには勝てないと思っているんだ」

「やってみなきゃわからないだろうけど……やってみるか」


ノートを閉じて、レンターに返す。


「ノート、ありがとう。自分はちょっとスイロウ先生のところに訓練場の許可取りに行ってくるよ」

「……わかった」


そう言って皆に見送られながら、教室を出た。


毎日19時に投稿を心がけて頑張っています!

面白い!続きが気になる!という方は明日も読みに来てくれると嬉しいです!

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