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異界の師、弟子の世界に転生する  作者: 猫狐
四章 黄昏のステラ
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学院への帰寮

手術から六日が経った。

すっかり体調も回復、魔力も問題ないということで学院に戻ることにした。


「ありがとう、アグラタム。イシュリア様にもよろしく言っておいてくれ」


そう言うと、アグラタムは頷いて微笑む。


「私としても、師が元気になられたようで何よりです。イシュリア様にはこちらから伝えておきますので、これからもお願いします。

……ええと、門はどうしますか?」

「自分で開くよ」


そう言って魔力を引き出すと、門を開く。


「それが使えるなら大丈夫そうですね。それでは、また」

「ああ。今度は気軽にお茶会とかに呼んでくれ」


シアが隣で「アグラタム様とお茶ッ……!?」と叫びかけていたが、手で口をふさいで耐えていた。


学院の部屋へと帰ってくると、シアが言う。


「今なら皆食堂にいるかな?」

「いると思う」


学生服に着替えて二人で食堂へ向かうと、ショウが真っ先に気づいて声をかけてくる。


「あっ!レテ!シア!おかえりー!!」

「ただいま、ショウ、皆」


にこやかに手を振ると、フォレスが心配そうに話しかけてくる。


「……その、魔力は……魔法は……」

「大丈夫。使えるよ」


その言葉に皆が力が抜けたように椅子にだらりとなる。


「スイロウ先生から一生魔法が使えない可能性があるって言われてから皆心配でさ……」

「生きた心地、しなかったよね〜」


クロウとダイナが言葉を紡ぐ。スイロウ先生、ということはジェンス総長からの連絡だろう。


「そうだな……実際一回死にかけてたらしいし」

「はぁ!?」


安心しきっていたショウが再び振り返って叫ぶと、シアが代わりに生命力の説明をしてくれた。


「……つまり、レテは魔力にその生命力が極度に混じっていたため、死にかけた、と」

「そういうこと」


それを聞くと、ふとミトロが質問してくる。


「……その、人工魔力は出てくるのに数日かかるのですよね?」

「そうだね、二日かかった」

「……では、魔力を抜き取った後に出てきた生命力は、一体どこから出てきたのでしょうか」

「……たしかに?」


疑問にすら思わなかったが、確かにそうだ。

生命力が魔力に引っ張られていて、魔力は全て抜いた。人工魔力が魔力を出すには二日かかる。

では、自分が生き返る要因となった生命力は一体どこから来たのか?


(体内の生命力……が枯渇したんだもんな。魔力もない、図を示してくれた人も知らない感じだった。だとすると自分の知らない力が干渉したことになる)


深く考えてこんでいると、後ろからツンツンと突かれる。 


「ん?」

「ふふ、ぷにーっ!」

「んぐ!?」  


振り返ると、にこやかに微笑んだシアに頬に人差し指を突っ込まれた。

どこか吹っ切れたような顔を見て、なんとなく察した。


(……シアの能力か)


ミトロもふむ、とそれで納得したようだった。


「……不思議な力、ですかね」

「多分ね」


他のクラスメイトは不思議な力で納得したらしい。


「そういえばレテ君とシアちゃんは朝ごはんは?」


ニアが食べなくていいの?と言いたげな顔で聞いてくるので、頷いてから答える。


「ああ、イシュリア城で頂いてきた」

「えーっ!!どんなの!?どんなの!?」


興味津々、といったニアに苦笑いで答える。


「……病み上がり人用の、卵粥」

「……なんかごめん」


素直に謝るニアに一同が大笑いしたあと、シアが追加で話す。


「一応私は普通のご飯を頂いてきたよ!でも豪華ってわけじゃないよ。オバチャンが作るような、素朴で美味しいやつ!」

「へーっ!そうなんだ!」


タルタロス侵攻の時はレーションだったか、と思い出すとレンターが言う。


「……ともあれ、戻ってこれてよかった。休んでいた日にち分のノート、見るか?」

「あ、見せてほしい」


分かった、と答えるとレンターが立ち上がる。それと替わる感じで、リアーがやってくる。


「あ!レテ君!手術は!?魔法は!?」

(演技上手だなあ……)


本当に心配そうなリアーに対して、自分は笑顔で答える。


「魔法も魔力も……まぁだいたい元通り。心配要らないよ」

「わーん!良かったー!!!」


嬉しそうなリアーを見て、ほっと心の中で安心の息を吐く。

レンターがノートを抱えて戻ってくると、ページを見せてくれる。


「この付箋から付箋のところまでが授業の内容だ」

「……予想はついていたけど、多いな。六日分って」


それは仕方ないだろう、と言うレンターに有難く感謝しながら、ノートを見る。


「……ああ、魔物の授業をしたのか。後、学院交流も二時間あった、と」

「よくわかるな、と思ったが武術学院の事も記載していたか。役立つことがあれば二人ともノートに写してくれ」

「分かった。少し待っててくれ」


シアを連れて、自室に一旦戻る。

バタンと扉を閉めると、シアに聞く。 


「……生命力の件、シアの特異能力だな?」

「そうだよ!レテ君わかってる!?私の力がなかったら本当に死んでたんだよ!?……ほんとう、に、しんで……」


シアがボロボロと泣き出す。自分がそっと抱きしめると、シアが叫ぶ。 


「手術してる最中にスザクが叫んで!レテ君死ぬって言われて!その時は必死だったからわからなかったけど!グラフ見たら本当に死にかけてて!レテ君が……いなくなるんじゃないかって……」

「……ごめん」


うわああああん!と泣きじゃくるシアを強く、強く抱擁すると、シアが更に泣く。

言葉はない。ただただ、嗚咽の声を上げていた。


毎日19時に投稿を心がけて頑張っています!

面白い!続きが気になる!という方は明日も読みに来てくれると嬉しいです!

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