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異界の師、弟子の世界に転生する  作者: 猫狐
四章 黄昏のステラ
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手術、開始

医療班の人が準備している最中、自分は身体検査を受けていた。


「身体の方は異常ありませんね。健康体です」

「良かったです」


検査結果を告げられてホッとする後ろで、シアがイシュリア様に尋ねていた。


「なんで私も同行させたんですか?事情を説明してもらえれば、私は部屋に残ったままでも……」


イシュリア様はそれに対して、うーんと唸りながら答えた。


「それでも良かったのだけれど……。今回、手術をするわけじゃない?それも恋人のレテ君の。貴女はブレスレットを持っているわけじゃない。ましてや、逐一私やアグラタムが報告しに行くわけにはいかない。そんな状態で、勉学に励めると思えなくて」

「うぐっ……確かに……」


最低五日間、居ない恋人の安否がわからないまま過ごす。シアにとってはかなりキツイ出来事だろう。


「それでは、手術を開始します。また負担をかけてしまいますが、薬をお飲みください」

「分かりました」


その言葉でイシュリア様、アグラタム、父さんとシアが部屋から退出する。

自分は薬を飲み、また睡眠へと誘われた。



「開始します。失敗は許されない。各員、覚悟して臨むように」

「はっ!」


数人が機械を動かす。ぴと、とチューブが身体に貼り付けられる。


「まずは人工魔力の除去から」


ゴオオオ、と機械が稼働する。ピ、ピ、と規則正しく鳴っている画面を見ながら看護師の一人が言う。


「人工魔力の一部が彼の魔力と融合していますね。人工魔力の出力機関が五分の一混ざっています」

「分かった。魔力分離プロセスを起動させろ」

「はっ!」


機械のパネルを操作すると、チューブが光って、またゴオオオ……と音を鳴らす。


「……かなり、骨の折れる作業だが。我々は失敗するわけにはいかない。各員、厳戒態勢のまま続けなさい」


その言葉通り、朝を示していた太陽の位置はすぐさま昼の位置になっていた。

それでも、緊張を解くことは許されない。 彼を失うことは、守護者を失う事と同等だとイシュリア王より、強く仰せつかっているからであった。


「人工魔力と既存魔力の分離、完了しました」

「人工魔力を全て除去。その後、既存魔力の除去に入る」


チューブがまた唸る。規則正しく鳴っているパネルを操作し、看護師が頷く。


「人工魔力。全て取り除きました」

「では、既存魔力の除去に入る」


……手術は、まだまだ長い。



「レテ君、大丈夫かなぁ……」


イシュリア様の私室にて、私はそう零した。

当のイシュリア様は、用事が積み重なっている、とのことで私室をお父さん……ラファさんと私に好きに使っていいと言って去っていった。


「……信じるしかない。ウチの息子を」

「そう、ですね」


テーブルの上には用意された最高級の昼食。

でも、それを食べる気にはなれない。椅子に座ったままぎゅっと手を握って、その拳を膝の上に置く。

察してくれたのか、お父さんは微笑む。


「……帰って来たときに、こっちが元気なきゃダメだよな。ご飯、食べよう」

「そう、ですね。……いただきます……」


メイドさんは部屋の外で待機してくれている。何かあれば、いつでも気軽にお呼びくださいと言って。

二人で昼食を食べる。美味しい、美味しいのに……。


「……なんでだろう、レテ君が心配だからかな……美味しいのに……」

「そうだな……。心配事があると、味が頭に入ってこないよな」


お父さんもそうらしい。二人で黙々と食事を終えると、メイドさんが下げていった。


「なぁ、シアちゃん。レテは学院ではどうなんだ?」

「どう……?」 


話題転換をはかるように、お父さんは明るく言った。


「ああ。いっぱい友達に囲まれてるか?何かやらかしたか?なんでもいい、俺の知らない、シアちゃんが知っているレテを教えてほしい」

「……!はいっ!」


そうして、話し始めた。

レテ君は沢山の友達に囲まれて、好意的に接し、接されていること。

友達の特異能力に対して、訓練を施したこともあった。顕現系統の後輩に格の違いを見せたこと。


私にとっての日常は、お父さんにとっては新鮮だったようで。

時に笑い、時に驚き。詳しく話してほしいと言われた話題もあった。


「そうか、レテは愛されて過ごしているんだな!」

「はい!それは、とても!」


お父さんも話を聞いて、笑顔になった。

私達は、今貴方のおかげで笑えている。

だから、貴方にも私達の笑顔を見せたい。


そう思いながら、お父さんと雑談を続けた。

毎日19時に投稿を心がけて頑張っています!

面白い!続きが気になる!という方は明日も読みに来てくれると嬉しいです!

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