それぞれの風呂にて
「あ゛〜……疲れた〜……」
「おお、ダイナが溶けてる」
授業も終わり、皆で風呂に入っている最中にダイナがぶくぶくと沈みかけていた。
クロウが感想を述べつつ、お湯が口に付く前に引き上げるとダイナがまた声を出す。
「だってさ〜?あちこち手助けしてたんだよ〜?もう疲れちゃって……」
「……意外だな。ダイナが世話焼きだったとは」
一緒に浸かっているレンターが呟くと、ダイナは頷く。
「もともとね〜こういう気質だから〜……」
「苦労人だな……」
自分がそう言うと、そうそう、とばかりにまた頷いて沈みかける。
「あぁもう!ダイナは俺が連れて行くわ。先に行くぜ」
「ショウ、頼んだ」
しびれを切らしたショウにダイナは引っ張り上げられ、連れて行かれた。
「……俺達も上がるか」
「自分はもう少しゆっくりしていくよ」
そうか、と言ってレンターや他の皆は上がっていった。
ふぅ、と風呂の中で息を吐くとふと考える。
(……女子組はどんな話題で盛り上がっているんだろう?)
一方、女子風呂。ニアが湯に浸かっているファレスとフォレスに声をかける。
「ねえねえ!二人はどうだった?今日の学院交流!」
「どうだった、かぁ……。……何人かには、ちょっと距離置かれたかも?」
「……生まれが生まれだから」
回答にそっかー、と納得するニア。
仕方がない。ファレスとフォレスは三代目ラクザ、レインさんの子だ。それこそラクザ出身の子には距離を取られるだろう。
「でもでも!二人ともいっぱい案内してたよね!すごいと思う!」
「そうだよね!リアーさん!」
そこにリアーが混ざると、ニアはそれに同意する。静かにミトロも同意の意を示すと、ふと周りを見渡す。
「……あれ?シアさんは?」
「……ここだよー……」
「あわわわ!シアちゃん、沈んでる!」
慌ててニアが引き上げると、シアがばったりと倒れそうになるのをリアーが抑える。
「だ、大丈夫!?」
「だ、だめー……私、疲れた……」
その言葉にファレスが納得する。
「そういえばシアちゃん、滅茶苦茶橋渡ししてたよね!」
ファレスが見て取れた範囲でも、あっちに行っては手助け、こっちに行っては橋渡しを繰り返していた。
上級生の人も聞いていたのか、近くに寄ってくる。
「ありがとう、助かったわ。貴女が話しかけてくれたおかげで何人もの子と打ち解けられたもの!」
「い、いえ、大したことでは……ぶくっ」
「あわわわわ……」
ニアがまた慌てて引き上げると、上級生の人がどうしたどうしたと集まってくる。
「あちゃー、逆上せてるね。同室の子はいるの?」
「そのー、同室の子、男の子で……」
上級生の人が尋ねてきたのでニアが答えると、上級生の人もあぁ……と呟いた。
「じゃあ私達で出してあげようか。このままだと本当に沈んじゃうよ」
「お願いできますか……?」
ミトロが申し訳なさそうに言うと、上級生の人はにぱっと笑って言う。
「勿論!私達は先輩だからね!……ほら、肩貸してあげるから掴まって!」
「はいぃ……」
シアがそのまま連れて行かれるのを見ると、リアーが声を出す。
「私もちょっとお先!シアちゃんが心配!」
「リアーさん、お願いします」
リアーも足早に去っていくと、残ったのはファレスとフォレス、ミトロとニアであった。
「レテ君、びっくりしそうだね!」
「あはは……そうですね。でも、彼なら何とかしてくれる、そう思います」
ファレスが言うと、ミトロが苦笑しながら答える。ニアもフォレスもウンウン、と頷いている。
「そういえばニアは今日どんな人と話したのですか?」
「私?私は先輩方と知識の交換会してた!」
「ほほう……」
ニアの特異能力と扱い方次第では、敵対する魔物はほぼ塵芥になるだろう。
「魔物って動物みたいな動きをするから、本能に従うって言われて!じゃあ私は距離気をつけながら撃とうかなーって!」
「……たしかに、ニアの力ならそれが適切」
フォレスが風呂の中で足を伸ばしながら言うと、ニアも頷く。
「でしょ!」
「私達も敵対と見なされないように頑張らないといけませんね」
ミトロがそう言うと、ニアは絶対そんなことない!とポカポカ叩きながら笑っていた。
「うぅ〜先輩、すみません……」
脱衣所で介抱されているシアが、先輩に対して謝る。
「いやいや。今日は本当に貴女のおかげで助かったから、これぐらいさせて!」
ぶおぉ、と髪を乾かす魔導具で乾かされていると、リアーも合流する。
「先輩ありがとうございます!……どう?シアちゃん」
「う、水分ほしいかも……」
リアーが慌てて水を取りに行くと、先輩が優しく言う。
「……なんだか、年齢が上の子と下の子を繋ぐのに慣れている、そんな気がしたよ」
「そ、そうですね。慣れてはいます……」
それ以上は何も詮索されなかったが、先輩の手付きは優しかった。
リアーが水を持って戻ってくると、シアはそれをごくごくと飲む。
「沁みる……」
「ずっと歩いてたものね!水もマトモに呑んでないんじゃない?」
「そうかも……」
そのまま、椅子の上で意識を失いそうになる彼女を見て苦笑しながら、先輩とリアーで起こしていたのであった。
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