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異界の師、弟子の世界に転生する  作者: 猫狐
四章 黄昏のステラ
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ネイビアの告白

レテが武術学院へと向かった後。ダイナをベッドに寝かせて戻ってきたショウが合流して皆で駄弁る。


「なんであんなにダイナ君疲れてるの?」

「うーん……昨日の訓練じゃねえかな……?スイロウ先生との……」


ニアの質問に対して、予想通りの回答をもらう。ショウすら本人から聞いてないということは、ダイナのみぞ知ることなのだろう。


「おはようございます、皆さん」


そこに一人の男の子の声がした。丁寧で、柔らかい声だ。


「あ!ネイビア君だ!おはよう!」

「おはようございます、ファレス先輩」

「ありゃ?自己紹介したっけ?」


頬に人差し指を当てて考えるファレスに対して、ネイビアはふるふると首を横に振る。


「自分はラクザの孤児院出身なので。レイン様のご息女のお顔とお名前は覚えていますよ」

「ああ!そうなんだ!ありがとうね!」

「……ありがとう」


ファレスとフォレスが感謝を述べると、ネイビアはシアに対して言う。


「シアさん、少し時間ありますか?」 

「うん!あるよ?」

「すみませんが、少し聞いてほしいお話がありまして」


その顔は何かを決めた顔。それを無碍にするわけにはいかない。


「わかった!私だけで大丈夫?」

「はい。すみませんが、シアさんをお借りします」


そういってペコリと頭を下げると、ネイビアが食堂から出ていく。シアもそれに付いていった。


見送ったあと。ニアがコソコソ声で言った。


「ね!これってアレだよね?同じ孤児院の先輩を好きになったってやつ!」

「あぁ!有り得そうだ……!」


恋愛小説が好きなクロウが乗っかると、皆が顔を突き合わせる。


「……シアさんは受け入れるのでしょうか」

「どうだろうな……。今まで弟分だった人からの告白となれば少しは動揺しそうだが……」

「この時にレテがいればなぁ……絶対面白かったぜ?」


まだ恋愛だと確定していないのに、皆がヒソヒソと盛り上がっていた。


(……野次馬根性、ってやつね!)


一人、起きてきていないと思われていた生徒が光で身を隠し、シアとネイビアの後をつけていった。


 


校舎裏。誰もいない、日陰の場所で二人は向き合う。


「それで?私に話って何?」


シアが優しく問いかけると、ネイビアが言う。


「……シアさん。貴女は私の憧れでした。

いつも頑張っている、一つ上の人。真似をして、皆に世話をしていたらいつの間にか、貴女のように皆から好かれていました」

「う、うん?ありがとう!」


シアが褒められて照れると、ネイビアはグッと力を込めて口を開く。


「……いつからだったか、憧れは恋情に変わりました。

いつでも元気に振る舞う貴女、年下の子達を世話する貴女、他にも数え切れないほどの貴女全てを好きになりました」

「……」


シアは真剣に聞いている。それを見て、ネイビアは頭を下げた。


「シアさん。……自分と、付き合っていただけませんか」


それは、愛の告白。それに対して、シアは静かに首を横に振った。


「……ごめんね。その気持ちには応えられない」

「……ッ!」

「私には、もう将来を決めた人がいるから」

「……レテ先輩、ですか」


くしゃりと顔を歪ませたネイビアに対して、シアは頷く。


「まだ皆には秘密だけどね。……付き合ってるんだ。私とレテ君」

「……そんなに、一年だけしか知らない先輩の方がいいんですか」  


ネイビアの悔し紛れの口調に、シアは少し怒るように話す。


「一年しか知らないからって、孤児院の人より知っているかと思ったら大違い。

……ネイビアは私の本音を聞いたことある?貴方は常に私を気遣ってくれるような人だった?一緒に居ていいんだ、って安心感をずっと与えてくれる人なのかな?」

「そ、れは……」 


反論出来ずに俯くネイビアに、シアは畳み掛ける。


「レテ君とは一年しか知らないよ。それは事実。

……でも、私を知ってくれた。『シア』を理解してくれた。少しの私の行動から、気遣ってくれた。一緒に居たい。ずっとこの人と居たい。……私には、好きになる理由なんてそれで十分なの」

「……っ!」


ネイビアが更に顔を歪ませると、シアは謝罪と感謝を述べる。


「だから、ネイビアの気持ちには応えられない。……ありがとう、好きになってくれて」

「……っっ!認めない、認められない……!私は、貴女が欲しいんだ!」


諦めきれない彼がただ叫ぶ。それに対して、私はハッキリと言う。


「私はレテ君の恋人。レテ君の為なら何だってできる。私には、それだけの覚悟がある」

「……!?」


そこでネイビアがシアの目を見る。


彼女の目は、覚悟が決まっていて、どこか黒かった。


「彼を支えてあげたい。辛いとき。苦しいとき。嬉しいとき。どんな時でもそれを分かち合いたい。彼が重荷を背負うなら、一緒に背負いたい。彼が苦しむのなら、その原因を突き止めて消し去りたい」

「……シア、さん……わかっているのですか……?今の貴女の、その状態を……」


震えるような声でネイビアが尋ねると、シアは頷く。


「分かっているよ?……そうだね。言葉にしようか。 

私はレテ君に『依存』してるよ。……でも、だから何?クラスメイトの皆は良い人達で、良好な関係を築いてる。でも、それを壊すのなら……ネイビア。貴方だからと言って、容赦しないよ」


それに対して、ただ震えることしかできない。

孤児院という、甘えられない環境に居た中、初めて心の底から甘えられる人が出来た。

支えてあげたいと、そう思った。 

そうだ、シアは普通の恋愛をしてこなかった。だから……。


「さて、じゃあ帰ろっか!みんな待ってるよ!」

「……はい」


先程とは打って変わったように明るい声でシアが言うと、ネイビアも頷く。


それを見て、一人の傍観者は音も気配も無く、部屋に戻っていった。


毎日19時に投稿を心がけて頑張っています!

面白い!続きが気になる!という方は明日も読みに来てくれると嬉しいです!

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