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異界の師、弟子の世界に転生する  作者: 猫狐
二章 学院編
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武術学院 ナイダの恐怖

魔術学院で対抗戦が行われていた次の日。

魔術学院が授業をしている中、武術学院が対抗戦を行っていた。

そもそも武術学院とは魔法よりも武術の能力に恵まれた者の集まりであり、決して魔法が使えない訳では無い。

武術学院でも同じように、一年生と二年生による対抗戦が行われていた。


「……ふっ!」


武術学院一年生首席、ナイダ。彼女もまた一年生のSクラス担当として戦っていた。

剣の一振、綺麗な一太刀が二年生を襲う。


「まだっ!」


その後自分の背中に風の魔法を纏わせ、勢いをつける。鍔迫り合い。先輩が徐々に押されていく。しかし、その決着は呆気なく終わる。


「今年の一年生、中々強いね……!でも、まだまだ!」


そう言うと鍔迫り合いの中で二年生の剣に炎が纏う。付与系統の魔法だ。


「っ!」


ナイダは咄嗟に鍔迫り合いをやめ、後ろに飛ぶ。しかし、二年生は剣を地面に擦り付けるように素早く下から上に薙ぎ払う。

すると、そこから直線上に炎が出現し、空中にいたナイダは身動きが取れなくなった状態で炎の中に突っ込んでいく。


「そこまでっ!」


武術学院の先生が素早く水を唱え、炎を消すとナイダは綺麗に着地して剣を収める。


「……お手合わせ、ありがとうございました。まだまだ私は強くなれます」

「一年生にしては君はかなり筋が良いと思う。正直経験が無ければ自分が負けていたと思うよ」


そう言うと二人は握手を交わして、場の生徒がわぁっ!と湧く。

その後。生徒が移動する間もナイダは常に戦術について考えていた。


(今回負けたのは相手の系統を見ず、先に自分の魔法を使って突貫したせい。相手の系統や魔法を読めば、まだまだ戦える。まだ、強くなれる)


そう考えていた矢先。ふと武術学院の何年の先輩かは分からないがポロリと魔術学院の話をした。


「聞いたか?魔術学院の対抗戦のこと」

「ああ。確かSクラスのやつが結界にまで干渉したんだっけか。二年生にも凄いやつがいたよな。一年生涙目だろ」


「逆だ逆。今年の首席が結界に干渉して二年生を完封したらしい。何やら凄かったらしいぞ。

確か二年生の魔法を完封した挙句、顕現系統で騎士を顕現。更に呼び出せると言い切ったところで終わりだってよ。確か……結界から魔力を通して相手に結界を貼ってから敢えてそれを自分の騎士で壊して戦意喪失させたとか。

魔術学院の馴染のやつに聞いたんだが、その首席と戦ったら手加減ありでも恐らく自分は勝てない、だってさ」

「……マジで?確か今年の首席って十四歳だろ?授業もまだロクに始まってないんだぞ?」


(首席?……あの、男の子が?)


守護者や王を超えるべきだと言い切った子のことは覚えている。自分と同じぐらい小さかったが、言葉は何よりも力強かった。同じ首席として、少し気になる。

ナイダは魔術学院にも負けないように勉強してきた。剣技が優れていたため魔術よりも武術を選んだが、魔術にもそこそこ精通している。


(騎士を顕現、顕現系統……いや、待って。先輩はなんて言った?結界に、干渉した?)


ふと横にいた担任の先生に話しかける。気になったのだ。この二つの学院を覆う結界は恐らく魔術学院が担っている。ならば闘技場にも同じ性質、同じものが使われているはずだ。


「先生。この結界に干渉出来ますか?」


「ん?いや……先生は無理だよ。

この結界、強いては学院で何か行われるイベント……今回の対抗戦もそうだけど、その結界は魔術学院の先生が何人か協力して作り上げているからね。

例えば剣や槍などがどこか吹っ飛んでいってもクッションのように受け止められるはずだし、魔法が暴発しても外で見ている人はおろか、中にいる人の怪我も緩和できるぐらいに威力は吸ってくれるはずだよ。それがどうかしたのかい?」

「いえ、武術だけでなく魔術も嗜まないと一人前になれないと思いまして。ありがとうございます」


そう会話を終え、寮のオバチャンが待ってるぞと先頭の先生が声をかけ、学院の皆が駆け出す。その中、ナイダは恐怖を覚えた。


(複数人が協力して作り上げた結界、その中には複雑な術式があるはず。なのにそれに干渉して、更にはそれを繋ぎにして相手に結界を貼った?

……有り得ない。もしそれが本当にできるとしたら、魔術に詳しい、じゃ済まされない。先輩は気づいていないかもしれない。けど、結界に干渉して相手に何か出来るってことは、結界そのものだって崩せる事になる。むしろその方が楽なはず。

相手にパスを繋げるより、無理やり断ち切った方が早い。対抗戦では特異能力の使用は禁止されている。彼は正々堂々としていて、そんな不正をするようには見えないし、第一私たちよりもその手に詳しい人達が見逃すわけがない。

つまり、彼はただ実力だけで、学院が練り上げた結界すら壊せる……!?)


そう思うと震えが止まらない。

同級生が心配してくれているが、考えがドツボにハマって抜け出せなくなる。

聡明な彼女は、考察するが故にその恐怖が脳内で造り上げられていく。


(本当に出来るとしたら、結界に干渉する程の実力に、さっき聞いた騎士を顕現させて戦う魔法。余力があるならそれだけじゃ済まない。騎士だけでなく、彼自身からも魔法が来る……!)


そっと脳内でビジョンを浮かべる。

開始と同時に自分が踏み込み、その騎士に足止めされている間に彼は結界を壊す。

そしてその余力で、吸収されない、強力な魔法を打ち出す。


(……勝てない!私の特異能力を使ってもその騎士に止められたら意味が無い!それに、彼が特異能力を何か持っていたとしたら……そう、それこそ精霊顕現。精霊顕現でもしたら自分は間違いなく負ける……!)


理解する。魔術の化け物を。

ナイダとて努力をしてきた。だからわかる。結界とは知識無しに干渉できるものでは無い。そもそも作り上げた人しか干渉できないからこそ結界の意味がある。

結界への理解。自分の能力の使い方。相手を魔力切れにさせず、戦闘続行不能にするそのやり方。

一年生、いや。十四歳でそれを理解したら果たして魔術学院に通うメリットとはなんなのか。

何か底知れない恐怖を感じながら、ずっと声をかけてくれていたクラスメイトに返事をしてお昼ご飯に口をつけた。

いつも読んでくださりありがとうございます!

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