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異界の師、弟子の世界に転生する  作者: 猫狐
四章 黄昏のステラ
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リアーの魔法

皆が戦闘訓練をしている最中。今はミトロとレンターが光と闇をぶつけて戦っているところだ。

自分は風の球を生み出し、消してを繰り返している。そんな中、視線を感じた。


(……またか)


絡みつくような怨嗟の視線。前にも経験したことがある。

授業中に仕掛けてくるとは予想外であったが、とりあえず穏便に対処しなければならない。

だがどうやって……と考えていると、リアーがこちらを向く。

無言で頷く彼女に、スイロウ先生に言う。


「すみません、お手洗いに……」

「私も!まだあんまりこの辺分からなくて……」


言葉にリアーが乗ってくれた。彼女もこの視線を見たと思っていいだろう。


「おお、レテ君にリアー君!わかったぁ!遅くなりすぎないようになぁ!」


はい、と言って駆け出すと視線の主も移動する。


少し走って、校舎裏まで来るとリアーが来た方向に向かって呼びかける。


「ねー!バレバレだよー?」


そこにチッ、と舌打ちしながら現れたのは前に自分に嫌がらせをしてきた上級生だった。

三人組は明らかな憎悪の視線でこちらを見てくる。


「……魔法を使えない神童相手ならなんとでもなると思ったのによぉ……なんだよ、お前……!」

「そもそも何故そんな視線を向けられるかの心当たりがないのですが」

「……ハッ、神童サマは何でも持ってるから俺らのような人の視線には興味ないってか!?

お前は全部奪っていったんだよ!一学年のときからそうだ!神童だなんだと持て囃されて、少し俺らの下を行っているだけでチヤホヤされる!うぜぇんだよ!」

「はぁ……」


誠に私怨そのものである。呆れた顔で見ていると、リアーがニコニコしながら前に出る。


「ね、少し私と勝負しようよ!」

「……は?なんでだよ。てかお前……ああ、昼休みの。なんだ?お前もコイツの肩持つのか?」

「勿論!大切な友人だもの!」


微笑みながらリアーが結界を展開する。それに驚いた上級生が後退りする。


「なっ、結界を……」 

「これぐらいだったらレテ君も出来たんだけどねー、今は無理だもんねー!」

「……あの、どっちを煽りにいってるんですか?」

「勿論、あっちの三人組!」


そう彼女がケラケラ笑うと、相手は怒った顔で三人とも構える。


「……後悔させてやる……!」

「私ねー、本当は平等に皆扱ってあげたいんだ。

でもさ……親しい人の大切な人が危機に陥ったなら、そっちの味方をするよねぇ?」


リアーが風で鎖を顕現させる。鎖と言っても、質量がない。姿だけだ。


「はっ、やってみやがれ!」


三人がリアーに対して同時に攻撃を仕掛ける。


炎の礫、水の槍、砂嵐。三つの技がリアーを襲う。


「そーれっ!」


彼女は掛け声と共に、鎖を振り回す。

炎の礫が絡めとられ、水の槍にぶつかる。二つは自然の摂理によって蒸発し、残る砂嵐の砂の部分をキャッチする。

そのまま鎖を相手の方に振り下ろす。鎖、というより鎖の形をした粘着シートのようなものかもしれない。


(いや、風で相手の魔法を奪うとか反則では……)


そう思いながら、次の一手を見る。

相手は当然避け、三人が散らばって魔法を出そうとする。

しかし、リアーの方が早かった。


「あははっ!」


水の魔法を使っていた生徒の前へと風で移動し、そのまま風の勢いを使ってハンマー投げ。その矛先は炎を使っていた生徒だ。


「うおっ!?」

「うーん、対応力がないなぁ。それに周りが疎か!」


炎を使っていた生徒に気を取られている、土を扱う生徒に近づいて、真上に放り投げる。

無論、土を扱う生徒ならば土台を作れば安全に着地できる。だが……。


「ヒ、ヒイッ!」


あまりに高い。凡そ、普通の人が落下したくない高度に彼はいる。


「じゃあ君たちもごあんなーい!」

「く、くるなぁっ!」


縺れて手を伸ばして抵抗しようとする二人組に容赦なく近づくと、空にいる生徒目掛けてぶん投げる。風の力を使ってブーストしているからできる芸当だ。決してリアーが特別怪力なわけではない。

空中で彼らがぶつかると、最早安全には着地できない態勢となる。

その状態でリアーが風を使い、彼らを空中に浮かせる。


「どうするー?今なら謝れば安全に降ろしてあげるけど!」

「ぐ、う……!」

「誰が……誰が謝るもんか……!」

「……そっかあ。じゃあレテ君、一人お願い!」

「へ?」


その言葉を理解する前にも彼女が彼らの上から風を吹きかける。

慌てて近くの生徒を一人、地面で受け止める。リアーは土のゴーレムを作って二人を支えていた。


三人とも、泡を吹いて気絶していた。それはそうだろう。自由落下よりも素早く落ちてきたのだ。怖くないはずがない。


「じゃ、先生に報告にいこっか!……えっと、この人たち何組?」

「その必要はありませんよ。リアー……君」


声に気がついて振り向くと、そこにはジェンス総長が立っていた。


「その三人は然るべき先生に私が渡しておきましょう」

「ありがとうーっ!じゃあレテ君、戻ろっ!」

「……ありがとうございます、ジェンス総長」


悲しげに微笑むジェンス総長を尻目に、結界を解いたリアーの後ろを走ってついていった。




最近滅茶苦茶暑いです……

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