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異界の師、弟子の世界に転生する  作者: 猫狐
四章 黄昏のステラ
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スイロウの感嘆

双子の戦闘の後に、生徒が戦闘するのを見てスイロウは内心、ほう……と感嘆していた。

Sクラスは歴代、優秀な子が入るクラスだ。スイロウも何回も担当した。

しかし、今回はやはり一味違う。


「せやぁっ!」


今戦闘しているのはシアとショウであった。

シアが水の槍を打ち出し、ショウが炎の剣を顕現させて斬る。

それを見たシアは後ろから波を生み出して流そうとする。しかしショウは波を歩くように足場を顕現させてシアに迫る。


(……一体、何があったのだ?入学したてはレテ君を除いて皆、歴代の一年生と同じだった。それが、休みを挟むと一気にレベルが上がり……。かと思うと、タルタロスの後は戦闘するのが怖くなり……。今は並大抵の上級生に勝てるような戦闘力をしている)


ショウがシアに接近するが、シアは収縮した水を打ち出して、ショウと自分自身を吹き飛ばす。

ショウが態勢を立て直す前に、シアが滝のような水を流したところで鈴を鳴らした。


「そこまで!勝者、シア君!」


終わらせると、シアがショウの手を引っ張り、立ち上がらせる。

皆で二人を讃えあう中、一人。レテだけが遠くから微笑んでいる。


(……そういえば、シア君はレテ君の家に泊まったのだったなぁ)


入学前から、スイロウ自身はシアの事情を知っていた。

孤児院には帰れない、だから寮にいるのだと淋しげな顔をしていたのだが……。


何の因果か、七日間休みではファレスとフォレスというラクザのご子息に恵まれ、長期休みでは同室のレテの家に泊まった。

何故レテの家に泊まったのかまでは分からない。ただ一つ、言えることがある。


シアがレテを心の底から信頼しているということだ。


少なくとも、彼女の孤児院の事をクラスの中で一番最初に知ったのは彼だろう。

同室で仲良く……となるだけではそこまで行かないだろう。シアもそう簡単に話す内容では無かったはずだ。

となれば……。


(……特異能力、かぁ?)


彼の特異能力は、戦闘以外でも心を和らげる効果がある。その能力を使って聞き出した、というのも考えられる。

だが、隣で微笑んでいる彼がそんな強引な事をするだろうか?


「……あの、スイロウ先生?自分の顔に何かついていますか?」

「いや、君は混ざらなくていいのか?と思ってなぁ」


ついつい彼の顔を見てしまったらしい。彼が視線に反応すると、混ざってきても良いのだという建前を述べる。


「いえ。自分は今は……」

「……そうかぁ。でも、困ったら何でも言うんだぞぉ」


……戦闘では敵無しの彼。そんな彼が、魔法を使えなくなった。

それは本人にとってもショックで、周りも自分のことのように動揺していた。

それに驚いたのは生徒だけではない。スイロウ自身もそうだった。


(……ジェンス総長は、どこで知ったんだろうなぁ)


ジェンス総長がスイロウに直々に『レテ君を少し任せてほしい』と言った時は驚いた。

その情報をどこから……というぐらいである。


「先生!休憩時間ですか?」

「あぁ!皆ゆっくり休むんだぞぉ!」


クロウが声をかけてきたので、いつも通り元気に返す。


皆が水を飲んだり、雑談する中でレテ君が訓練場の真ん中へと歩いていく。


なんだなんだ、と皆が見る中、彼が口を開く。


「……、……」


小声で、何を言っているのかは聞こえない。

そこで何が起きるわけでもなかった。

だが、彼は諦めない。同じ言葉を何度も繰り返す。


「……何やってるの?」

「さぁ……わかりません」


ニアとミトロがお互いに見合ってそう言うが、スイロウ自身も分からない。


(……言葉?何をしているんだぁ?)


何か起きたら危険だからとスイロウが近づくと、彼の言葉がはっきりと聞こえた。


「風の球よ、ここに」


絶句した。そう表現するしかない。


彼はただ、風の球を只管作っては消していた。

彼の背中に隠れて、それが何も出来ていないように見えていただけ。


問題はそこではない。叱るつもりも毛頭ない。


(……何故、何故魔法を……使えるんだ……!?)


スイロウ自身も経験したが、魔力を練れなくなるという事案は一日二日で解決するような問題ではない。

だが、彼は解決している。内容は1年生のCクラスのような球だが、生み出している。


ジェンス総長に何を教わったらそうなるのか。

スイロウは、それに危険がないようにただ見つめていた。








いつも読んでいただきありがとうございます!

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