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異界の師、弟子の世界に転生する  作者: 猫狐
四章 黄昏のステラ
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東の異変

一方で、残された教室の面々が休憩時間に入った。

スイロウ先生は何かを察したように「ちょっと職員室まで戻るから、何かあったら来るように!」と笑顔で出ていった。


そうして私の机の周りにみんなが集まる。


「シアさ、やっぱり心配?」

「心配だよ……胃が痛くなりそうなぐらい」

「……実際痛そう」


ファレスの質問に声色を落として答えると、ファレスから突っ込まれる。

今は痛くない。ただ、昨日や今朝は少し痛かった。これはレテ君にも秘密だ。


「ちっくしょー!なんで俺ら、こういうときに無力なんだ!?」


ショウが頭を抱えて叫ぶと、皆が俯いて、肯定の意を示す。

そんな中ふと、レンターが呟く。


「……確か書物にあったな。魔力が練れなくなる条件が」

「本当!?」


聞いた瞬間に私は顔を上げてレンターに迫る。しかし、当のレンターはどこか困ったように呟く。


「いや……だがその条件は……」

「何!?何なの!?」


グラグラと肩を揺らそうとする私に対して、ミトロが優しく手を添えて言葉を紡ぐ。


「……決まって、『魔法の上達過程にある』人です。ですよね?レンター」

「……そうだ。そしてあのレテが、そんな上達過程で……魔力を練ることが呼吸のようになっていそうな人物は、到底これに当てはまると思えない」


それを聞いて、また皆がうつむく。


「……本当に、何があったんだろうね〜」


ダイナがそう呟くと、私もぽつりと呟く。


「……わからない。彼がわからないなら」


それもそうか、と皆が頷く。あのリアーさんでさえ、暗い表情をしている。


「……とりあえず、授業真面目に受けて、それから考えよう。ジェンス総長がいるんだ。レテだって秘策が何もないわけじゃないだろうし」


クロウが言った言葉に対して、口々に皆が賛成する。


「しっかし、魔物が来るっていうのに嫌なタイミングだよな……」

「まぁ、レテ君ならぶん殴って解決しそうじゃない?」

「……シアに同意だわ」


ショウとそんな会話を交わして、鐘がなり、授業に入る。


サラサラ、サラサラと皆が黙々とノートに書き写す。


(……大丈夫だって、信じてるから)


私はそう思いながら、スイロウ先生の言葉を聞いていた。


昼休み。レテ君も戻ってきて、皆でご飯を食べている最中にそれは来た。


─お気をつけください、主─

(……?どうしたの?セイリュウ)

─私の統治する方面に、何かが……─


セイリュウが統治する方面。つまり、東。ノボリビ方面だ。

それと同時に、ふとリアーさんが外を見て立ち上がる。


「ごめんなさい。少しお手洗いに……」

「行ってらっしゃい〜」


ダイナが言葉で送ると、急いで彼女はお手洗いへと駆け込んでいった。

しかし、それが私には偶然とはとても思えなかった。かと言って、セイリュウとリアーさんの繋がりは何もない。本当にただの思い込み。

これは偶然だ。そう思いながらレテ君に話題を振った。


────────────────

「……ええ。ノボリビ方面ね」

「はい。今ノボリビの兵士と共に退治しています」


お手洗いの一室に防音結界を貼り、リアー……イシュリアはアグラタムとブレスレットで会話をしていた。


「魔物はどれぐらいの強さ?」

「そこまでではないですね。……ただ、数が多いといいますか。普段のノボリビの三倍はいますね」

「……多いわね」


ノボリビの外はイシュリア皇国統治であるものの、魔物の巣窟と化していた。

とはいえ、実は四都市……セッカ、ノボリビ、ラクザ、ナコクの外はどこもそんな感じだ。

それでも四都市が安全なのは、イシュリアが施した結界によるものだ。

首都イシュリアの中心を起点とし、コンパスで円を描く。次に、正確に北から南へ、西から東に線を繋ぐ。その四つの先にあるのが四都市であり、コンパスの円こそが結界である。


しかし、その外でも暮らしている人はいる。大体が魔物を狩って生計を立てている人だ。

その人たちはもっぱら、近くの四都市や街などへ魔物の肉や皮、使えるものを納品して食料やお金をもらうのだが……。


(外の人は管轄外なのよねえ……)


そう。魔物を狩って暮らす、つまりイシュリアの結界から敢えて出ていくのはイシュリア皇国に良い思いをしていない者が大半だ。

そんな人たちに、イシュリアは関与しない。例え国の利益になろうと、不利益になろうと、一切の干渉をしていない。

だがノボリビ……結界ギリギリに現れた魔物は普段の三倍はいるという。


これがイシュリア皇国に対する嫌がらせ……外の人々がわざと見逃していないのであれば、どちらかだ。

外が負けたか、魔物が爆発的に増加しているのか。


「……アグラタム。その魔物の掃討が終わったら、結界外を少し見てきて頂戴」

「はっ、わかりました」 


そう言って通信を切ると、防音結界を解いて私はお手洗いから出ていった。

自分でこの作品を読み直して、「やっぱり自分の癖サイコー!」と思いながら、いろいろな箇所にあるグッドボタンなどの反応が嬉しかったです!

良ければグッドボタン、押していただけると次への励みになります!お願いします!

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