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異界の師、弟子の世界に転生する  作者: 猫狐
四章 黄昏のステラ
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珍しい休日

「うぅーん……眠い……」


休みの日、朝の気持ち良い日差しが部屋の中に入ってくる。

とても起きあがる気持ちにはなれない。


「……シアー」

「んー?レテ君何?」


目を瞑ったままシアを呼ぶと、彼女はスッキリした声で返してくる。


「今日は眠いから……二度寝する……」

「ええー!?これから朝ごはんなのに!?」

「滅茶苦茶日差しが気持ちよく……て……」

「え、あ、ちょっ!レテ君!起きて!おーきーてー!」


そのまま意識は眠気の底に落下していくかと思われたが、シアが思いっきり身体を揺らしてくる。


「んぐ……ぐ……」

「起きて!せめて二度寝するなら朝ごはん食べてから!」

「……んぐぅ……」

「あぁー!?」


身体を揺さぶられた事で眠気が飛ぶかと思えば、逆に心地よい揺さぶられ加減で無事に眠気の勝利である。


数時間後、目が覚める。ハッキリとした視界に映るのは二段ベッドの下の天井。


「……え、今何時だ?」


枕元の時計を確認すると、針は無慈悲に頂点を指し示していた。

寝坊というレベルではない。大寝坊だ。シアになんて言われるかわかったものでは無い。


慌てて起きると、シアが共同の机で本を読んでいた。


「あ、寝坊助レテ君。おはよう!」

「う、うん……おはよう……」

「それで?今度は何をしていたの?」


はて、何をしていた……とは?

身に覚えがない言葉にはてなマークを浮かべながら答える。


「いや、何もしてないけど……?」

「えぇー?でも今朝のレテ君、今まで見たことないぐらい立派に二度寝してたよ?また何かやって疲れていたんじゃないの?」


あぁ、なるほど。また裏で何か試行錯誤して睡眠不足になったのではないのか、ということか。理解した。

しかし今朝に至ってはそんなもの全くない。本当の本当に、眠かっただけだ。


「いや……本当に眠かっただけ……です」

「……怪しいなぁ」


そんな疑われるような事をしただろうか。いや、これまでしてきたが本に栞を挟んでジト目で見つめられるような疑われよう。間違いなく何かしていると思われている。


「今回は本当に何もしてないんだって。朝心地よすぎて……それで寝ちゃっただけ」

「ふーん……。まぁレテ君がそこまで言うなら嘘じゃないんだろうね」


疑惑は解けたようだ。ホッと息を吐き出すと、洗面台へと向かう。

顔に冷水をパシャパシャとかけて微かに残っていた眠気を吹き飛ばす。

タオルで顔を拭くと、ササッと着替える。そうして戻ると、疑問に思っていた事を聞く。


「十二時ならご飯の時間だろ?なんでシアは残っていたんだ?」

「なんでって……そこに朝も昼も抜いて夜ご飯だけになりそうな寝坊助さんがいたから?見張り?」

「気にしなくていいのに……」

「やーだー。私が一緒に食べたいから気にするの!」


そういえばシアはご飯を食べる時、毎回嬉しそうに食べている。美味しいのもあるだろうが、自分と食べるのが楽しかったのだろうか。

確かに美味しそうに食べるシアを見ると微笑んでしまうのは会った時から変わらないが。


「ごめんごめん。じゃあお昼ご飯食べに行こうか」

「やったー!行こう行こう!」


ぴょんぴょん飛び跳ねそうな勢いで椅子から立ち上がってこちらへ来ると、部屋の外へと出る。


「えーと今日の昼ごはんは……ん?」


何やら列が作られている。普段は列が作られるような事なんてないのに、何かあったのだろうか。


「なになに?……ノボリビ産!朝市のフルーツパラダイス!だってさ、シア」

「フルーツパラダイス……なるほど、果物なんだね。うん。並ぶしかないね!」


だと思った。頷いて長蛇の列になっているフルーツパラダイスにトレイを持って並ぶ。

捌けるのは意外と早く、五分ぐらいで自分たちの番が来る。


「うわぁぁ……!新鮮な果物が沢山!どれ選ぼう!」

「一人五種類までって書いてあるから、どうせなら二人で違うもの五種類とって十種類食べないか?」

「えっ!?……う、うん。レテ君が恥ずかしくないなら……嬉しいけど……」


確かに恥ずかしさはあるが、こんな美味しそうなフルーツを五種類しか味わえないのは勿体ない。


「……よ、よーし!決めるぞー!どれにしよう!」

「そうだね、どれにしようか……」


悩んだ結果、シアは手前から5つ。自分は奥から5つという選択する頭を放棄してチョイスした。


ご飯物を貰い、二人で空いている席に座る。


「うーん、美味しい!ね!このカレー!」

「うん、美味しい」


いつ見てもシアは美味しそうに食べるなぁと考えながら食べる。


そうしてカレーを食べ終えた後、念願のフルーツタイムだ。


「じ、じゃあ食べさせ合いっこ……?」

「なんで!?一個ずつ交換で良くない!?」


なるほど、恥ずかしいってそういう意味かと理解して突っ込む。

そうして、自分とシアは周りから少し生暖かい視線を貰いながら、フルーツを堪能したのだった。

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