表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異界の師、弟子の世界に転生する  作者: 猫狐
四章 黄昏のステラ
200/270

本探し 本屋の二人

数ヶ月前に書いて忘れていました。これからも書けたら投稿していきます

学院に魔物の張り紙が貼られてから数日。

休日、ニアは学院近くの本屋へと一人で出向いていた。


(魔物、魔物……)


魔物に関する本は、複数に分類される。


まず、魔物に遭遇した時の為の対処法。行商人などの人が読む事が多いだろう。


次に、魔物の弱点について書いてある本。これは行商人を護衛する人が読む本だろう。


最後に、魔物に関する考察本。未だに解明されていない部分を解明するという目的の哲学的な本だ。


ニアが探しているのは二番目の、弱点についてかかれている本についてだ。

学院の図書室でその手の本は数週間にわたって貸出が続いており、これならいっそ買った方が早いと判断したのだ。

同室のミトロもこれには同意したのだが、『皆が魔物に気を取られているうちに他の希少な本を借りて読みたい』と、何とも知識系なミトロらしい理由で寮で本の虫になっている。


とはいえミトロも読むものなので、買って帰ったら折半という形でお金は出してくれると約束してくれている。


(……ミトロの役に立つ本ってあるかなぁ?)


ミトロは広域化系統の闇属性使いだ。故に、魔物相手に有効な本が置いてあるとは限らない。


純粋に武力でごり押すわけでもなく、私のように火のような直接的な攻撃力がある属性でもない。

うーん、と悩んでいると後ろから声をかけられる。


「あれ?ニアじゃないか」

「……クロウ君?」


振り向くと、そこには同じSクラスでありながらもキョトンとしているクロウがいた。


「クロウ君、どうしたの?」

「いや、魔物関連の本を探しに来たんだ。学院の図書室の本は借りられているし、レンターも読むからな」


なるほど。しかし、そこにレンターの姿は無い。


「……レンター君は?」

「『今のうちに借り出しが難しい本を沢山読む』って言って寮の机に齧り付いているが……そういうニアこそ、ミトロはどうした?」

「そっちと、本当に寸分違わない同じ理由だよ!」

「あぁ〜……ミトロもそうだよな……」


深く頷くと、クロウは私に近づいてくる。


「どうせ目的は同じなんだ、一緒に探さないか?」

「ほんと!?ありがとう!私は魔物の弱点が書いてある本を探しているんだけど……」

「お。奇遇だな……って事は無いか。あんな張り紙貼られちゃ弱点の一つや二つ、知っておきたい」


目的が一致したところで、魔物のコーナーに向かう。

しかし、そこでも学院生が沢山いるのであった。


「……なぁ、これさ。買えると思うか?」

「うーん、私は無理だと思う!」


私がアッサリと切り捨てると「だよなぁ」と横で呟かれる。

ここまで来て魔物の本を買えないと少し離れた本屋まで行くことになる。

だがそこにクロウを巻き込む訳にはいかないので、話しかけようとする。


「ところでニアって、普通の本は読むのか?」

「え?」


普通の本、というと物語だろうか。唐突にどうしたのだろうと思ったが答える。


「うん!読むよ!特に恋愛系を読むかな!……それが、どうかしたの?」

「ここまで来て何も買わないのも寂しいだろ?だからニアがオススメする本があったら教えて欲しいと思ったんだ。……俺も結構恋愛系読むんだけどな」

「へぇー!意外!だけどそういう事ならオススメの本、教えちゃうよ!」


クロウ君が恋愛系の本を読むのは意外だったけど、それならそれで案内出来る。二人で恋愛系のコーナーに移動する。

こちらは程々に人がいて、先程の大混雑とは打って変わって落ち着いていた。


「クロウ君って、恋愛系ジャンルの中でもどれが好きなの?」

「うーん、割と雑多に読むけど……好きなのは純愛系かな?」

「ホント!?私も純愛系好きなんだ!……あ!これ見て!」


案内すると、クロウからも「おぉ!」と声が漏れる。


「この本続編出てたのか!最近忙しすぎて見てなかったけど……。気になるな」

「やっぱりクロウ君もこれ読んでたんだ!純愛系といったらやっぱりこれだよね!」


私たちが見つけたのは純愛系の中でも人気を博しているシリーズだ。

クロウ君の言う通り、最近ドタバタしすぎてチェックしていなかったけれど続編が出ていたらしい。


「ニアもそう思うか!?今ヒロインの葛藤が良いところなんだよな……!」

「そうそう!これは買わなきゃね!」


手に取ると、クロウ君も同じ本を持つ。


「じゃあ逆におすすめを教えてあげたいが……。あっ!珍しいな」

「ん?どうしたの?」


彼が見ている方向は少し高いところであり、私では何を見ているのか分からない。


「一冊完結なんだけどさ。学院の図書室にはないのが勿体ないぐらい面白いんだよ!こっちに来てくれ!」


そう言われて、連れられてきた本棚の前で彼が手を伸ばす。


「これこれ!ニアは読んだことあるか?」

「読んだことないかも!面白い?」

「あぁ!面白い!特に心情描写が細かくて感情移入しやすいんだよ!」


クロウ君が熱く語っているのを見て、これもまた意外な一面を見た気がした。


「へぇー!それじゃあこの本も買ってこ!」

「あぁ!他にもちょっとあるか、見に行こうぜ!」


結局、魔物の本は最後まで買えなかったけれどクラスメイトの知らなかった一面を知れて、私は満足しながら二人で寮へと戻った。


ミトロも『それ、私も読みます』と結局折半してくれた。ミトロも恋愛小説を読むのだと知って、尚更嬉しかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ