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異界の師、弟子の世界に転生する  作者: 猫狐
四章 黄昏のステラ
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種明かし

試しに自分は光の魔法で周りを照らそうと、球体を生み出す。

しかし光の球は周りの闇を照らすことなく、ただそこにある、ということしか分からなかった。


(なるほど、これは奈落に相応しい名前な訳だ)


そう思って、ダイナに声をかける。


「そろそろ種明かしといかないか?暴走もしなさそうだしさ」


球体を土魔法で囲んでポイッと投げつけると、キャッチした音が聞こえる。


「……うん、そうだね~。そうしようか」


そう言うとダイナが奈落迷宮を解除した。その瞬間に周りの暗闇は消え去り、日が出る、あるべき場所の姿に戻った。


「……これか、自分が当たった壁」


ポツリと後ろにある壁を見て、それから風で空中に浮いているダイナを見る。

彼は頷くと、ゆっくりと降りてくる。その途端に、彼は疲れたのか訓練場の床に転がる。


「お、おい!ダイナ君!大丈夫かぁ!?」


スイロウ先生を始めとして、皆が駆け寄ってくる。付き添いの先生が彼を支え、水をあげる。


「……ありがとう、ございます。

にしても、能力が分かっていても、誰かを相手にするのは疲れるよ~。これ~……」


「そりゃこの能力を全部操っていたらそりゃそうなるだろうって」


自分とダイナの会話についていけない他の皆を代表してリアーが元気に質問してくる。


「ん、んん?操っていた?というか、結局ダイナ君の特異能力の性質は何なの?」


それに俯きながらも、ポツリと話し始めた。


「……ボクの能力、奈落迷宮は見た目は暗闇で周囲を包み込む『空間侵食』の部類だ。

だけど、その本質は違うんだよね。空間侵食した後の効果は、あらゆるものを奈落に落とす事。

ほら、ブラックホールって聞いたことあるでしょ?あれと同じで、暗闇に見えるだけで、実際は光と平衡感覚を吸い込むようにボクが操っているんだ」


「す、すご……」


クロウがポツリと呟く。それに呼応したように皆が頷く。それと同時にレンターが疑問を口にした。


「……しかし、それではレテがダイナに攻撃を当てることは不可能だったのでは?けれど、レテはダイナに攻撃を当てた。あれはどういう原理なんだ?」


それに対しては自分が答えるとした。


「平衡感覚を奪われている、それは事実だったよ。

ただ引っかかったのは奈落迷宮、特に迷宮の部分だった。

ダイナの言葉通り、光と平衡感覚を吸い込むだけなら『奈落』だけでいい。けど、なんで迷宮なのか?

それは、平衡感覚を奪っているのが奈落ではなくて、『迷宮の部分』だったからなんだ」


「む、むむむ……?」


ショウが難しい声を上げている。よく分からないと言った感じだろう。

しかし、そこでスイロウ先生が何かに気づいた。


「……もしかして、迷宮の性質は本人を迷わせる、戸惑わせる事だったんじゃないのかぁ?その性質と奈落によって、あたかも両方とも奈落の部分で補っているように見せた」


その言葉に、ダイナが乾いた笑いを上げる。


「あは、ははは……。スイロウ先生、正解です。

迷宮は相手を惑わせるもの。その性質を利用してこの奈落の闇にいる人を惑わせました。

けれどレテは途中で気づいたんです。きっと、その事実に。

だから参考に聞かせて欲しいんだ〜。どうやって、ボクに攻撃を当てたのか」


ふむ、それは弱点となる箇所だが。

それを汲み取ったのか、無言でダイナが頷いて水を一口飲む。ならば、と声に出す。


「大事なのは相手を戸惑わせる、という部分でした。

暗闇を体験した今なら分かると思いますが、どうしても奈落迷宮と言われると暗闇の中の迷路、と印象が彫られてしまいます。

それを利用してダイナは平衡感覚を奪いました。

ですが、戸惑わせるという事は裏を返せば自分が戸惑わずにいれば思った通りの行動が出来る、という事です。

例えば確固たる意志を持って、戸惑わずに前に進む、とかです」


「な、なるほど!凄いねー!ダイナ君、ほんとに凄い!」


リアーが手放しで褒めている。それに続いてシアやショウ、ミトロも賞賛の声を送っていた。

はは、とまた笑いながら彼はどこか憑き物が落ちたような顔をしていた。


「……スッキリした顔してるね、ダイナ」


そう言うと、彼は頷いた。


「……ボクはこの能力を使う機会なんてないと思ってた。いや、正確にはこれを使って嫌われるのが怖かった。仲良くなった皆が離れていく気がして。

でも、それは杞憂に済んだ。皆、この能力を凄いと思ってくれて。……それが嬉しいんだ」


「……そうだな、少し分かる気がするよ」


そう言ってダイナの手を取る。その行動にキョトンとしながらも、苦笑された。


「……考えてみれば、そうだよね。ニアの能力の時も、それこそレテの能力なんて周りが恐れたら離れていくものだ。

けれど皆離れていかなかった。それにもっと早くに気づくべきだったかな」


その言葉には正しいか間違っているか、なんて返せなくて。でも一つだけ言えるのは。


「大事なのはこの場で皆がダイナの特異能力を含めて、凄いと認めてくれた事だよ。

……誇りに思っていい。それは、君に与えられた天武なのだから」


「……?最後、なんかちょっと……大人びた口調だった?」


(やっべ!これアグラタムに言った時の言葉のままだ!)


そう思っていると、先生方から助け舟が出てくる。


「とにかく、一度校舎に戻りましょう。ダイナさんには少し休んでもらう必要がありますから」


「……うん、疲れたよ」


そう言うダイナは今までの笑顔よりも吹っ切れていて。

良かったな、と思った。

そろそろ黄昏のステラの本編を進めていきます!

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