選別戦 閑話
「いやぁー!強いねぇ……一つ下どころか何個上の先輩とやりあえるの?あの子」
「……魔力量が異常。使い方も下手したら親よりも上手」
双子が戻りながら感想を垂らす。それ程に完敗してしまうような相手だった。
「んー……」
そんな中、シアが一人悩む様子を見て、なんだなんだと女の子が集まって女子会もどきになる。
「なになに~?ルームメイトが私たちに勝ったのに何か悩んでるね?」
「何か気になること……あった?」
双子がまず絡み、わぁっ!と驚いて顔をあげる。そこにクラスメイトの一人……ニアがぱあっと顔を煌めかせて問いかける。
「もしかして恋!?恋しちゃった!?ルームメイトが勝ったから惚れちゃった!?」
「ち、違うよ!」
即否定すると、少し悩んだ様子を見せる。そこにミトロが冷静に話しかける。
「思えば朝から何か変な様子です。もし私たちに話せることなら話した方が楽になるかもしれませんよ」
「……そうだね。でもこれ、レテ君には秘密にしてね?」
秘密、というワードに幼い女の子は弱い。皆が集まってヒソヒソ会議のような場所が作られる。
「実は今日の朝ねー」
そう始めて摩訶不思議な現象な自分の行動を伝える。そして、さっきの戦闘を見て魔法や魔力の扱いにやけに慣れていること。特異能力で何かをしたのではないかという疑惑を伝えた。
「確かに、彼の技能は飛び抜けています。そもそも走り出した跡地に自分が得意ではない属性の魔法の球体を顕現させ、次々に後ろのフォレスさんへと直接狙う能力。更には近づいて風の剣を顕現させる同時顕現。これは彼の魔法技術が卓越している証です」
そうミトロは分析して、悩むように考察をあげる。
「もしも……彼が特異能力があり、それを他人に直接干渉する事すら可能なまでに昇華させているのならばこの学院生で勝てる人は居ないでしょう。確か心の内に温かな何かが残った、との事ですよね?」
「う、うん」
次々と頭脳明晰なミトロの考察に女子が黙って次の言葉を待つ。
「仮に彼が感情を操れるような能力を持っていたとしましょう。もし寝ている間……つまり隙を見せていたとしても彼はその間に相手の心に『干渉』して自分の元へとやって来させる……もしくはそうなるように干渉出来る。そうなると彼に勝つのは魔法技術ではほぼ不可能でしょう。
魔力を練る間に別の思念が入って魔法も打てないまま、強制的に引き寄せられるとしたら……近接戦闘もこなして見せた彼に学院生では勝てません」
その予測にゴクリ、と皆が喉を鳴らす。
彼は何故先輩に勝つ気で居たのか。
何故勝てると強気でいたのか。
何故、入学の演説で守護者や王を超える力を求めるべきだと発したのか。
「……まさか、レテ君は既に魔術学院の戦闘力を超えている?」
「仮、の話ですがね。けれど彼がもしも本当に感情に介入出来るとしたら……武術学院の生徒は心を惑わされ、魔術学院の生徒は魔法を練れない。それどころか彼と敵対する人自体がそもそもその何か分からない感情に対する対策がない限り、勝つことは難しいでしょう」
ふと目の前で男子に絡まれながら凄いなと言われ続ける彼。それに対していやぁ、と照れる彼。
彼がもしも本当にそんな能力を持っているとしたら。
そんな一抹の不安を女子は抱えてしまった。
いつも読んでくださりありがとうございます!