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異界の師、弟子の世界に転生する  作者: 猫狐
四章 黄昏のステラ
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唐突な張り紙

普段とちょっと変わった日常の中で、今日の夜もシアが就寝前にくっついて来た。


「わー!いい匂いする〜……安心する〜……」


「いや、あの……シア?最近どうした……?」


正直お年頃で、恋人同士で、自分だって男の子な訳なので美少女なシアに甘えられると興奮しない理由がない。

だが、最近こうした行為の回数が多い気がする。何かやはり不安事があるのだろうか。


「シア、何か不安事があれば話してくれ。自分で相談に乗れることなら聞くから」


そう言った所、腕の中でふるふると首を横にそっと振ってシアが答える。


「ううん、そういうのじゃないの。ただ……レテ君は温かいなって、そう再確認したいの。私が好きなレテ君だなって」


それならばいいのだが。とりあえず消灯時間なので引き剥がすと、シアが上のベッドに登っていく。


「それじゃあお休み、シア」

「おやすみなさい。レテ君」


一方でリアー……もとい、イシュリアの個室にはアグラタムが報告をしていた。


「……不可思議な痕跡?」


「はい。特異能力専用の訓練場にて、不可思議な痕跡が発見されました。私が解放の訓練などをした訳ではなく、もっと……そう、水です」


「水?」


ますます分からない、というように返すとアグラタムは答える。


「はい。訓練場に残された痕跡には武術に水を組み合わせたような技の痕跡が残されていました。……いえ、あれは技とは呼べません。純粋な暴力で、あの固い地面に痕跡を残したようでした」

「……分からないわね。この問題は保留としましょうか。それよりも貴方の目から見て、今の私はどう見えるかしら?」


そう言われてキョトンとした後に、アグラタムは言葉を選びつつ返答する。


「……何か、楽しんでいるような気がしますね。勉学や師や友人との交流以外にもするべき事が見つかったような……そんな気がします」

「流石はアグラタムね!今、貴方の師の恋人の精神を鍛えるために恋のライバルになっているのよ!」


ウキウキしながら答える王に対して、守護者はなんと言えばいいのか言葉に詰まる。

ただ一つ言えることがあったので、言っておくことにする。


「……あの、師は恋人一筋なので振り向かないのわかっているんですよね?」

「勿論よ!私は演じている……だけよ?」


一瞬の空白にちょっと不安を覚えながらも、門を開いてアグラタムは帰って行った。


「……不可思議な痕跡、繋がらない記憶。そして特異能力の訓練場……私が何かを施した記憶がない以上、考えられる要因は……」


そこまで呟いて消灯時間なことに気がついた。考えるの切り上げてベッドに横になる。


(……この身体も疲れるわね)


常に魔力を消費して変化しているので、疲れると思いつつスヤスヤと眠ってしまった。



翌朝。リアーが食堂に行くと、珍しく同クラスだけでなく他のクラス、学年も騒いでいた。


「おはよう!……どうしたのかしら、これ?」


近くにいたクロウに話しかけると、彼は困ったように答えてくれる。


「あぁリアーさん、おはよう。実は都市外訓練の授業が全学年に対して行われるって発表の張り紙があって、それで皆困惑している感じなんだ」

「……都市外訓練」


当然だが、イシュリアは皇国ではあるがその土地全てが安全な訳では無い。

首都イシュリアを始め、東西南北の要の街は安全性が高いが、そこから一歩踏み出せば魔物と呼ばれる動物の亜種のような類が襲いかかってくる。


しかしこのタイミングで全学年に対して都市外訓練の授業。これは良いかもしれないと王の視点で考える。


(……ステラから齎された情報によれば、少しずつ魔物は凶暴化していく。なら、今のうちに学院生を鍛え上げておくのはいい事かもしれないわね。……あら?でも、私こんな事誰かに指示を出したかしら)


これはスイロウ先生に聞いてみようと思いつつ、朝食に手をつけた。

今日はハムのサンドイッチだった。



「スイロウ先生!」


授業に入る前にスイロウ先生を見つけたので、私は声をかける。すると彼は振り向いて私に声をかけてくれる。


「おぉリアー君!どうかしたのかぁ!」


いつも通りの大きな声と同時に優しさを感じる。このような先生がいて良かったと思いつつ質問をする。


「朝、都市外訓練の張り紙を見たのですが……あれが誰の考案か、先生はご存知ありませんか?」


そう言うとスイロウ先生は少し困ったように言う。


「それがな。今朝になって私たち職員にもいきなり通達されたのだよ。この事は後でも教室で話すが、何やらジェンス総長が決定したらしい。

最近は対人の相手が多く、魔物といざ出会った時の対処が不安点になる。なればこそ、学年問わずに連携力を強めるために都市外訓練の授業をするべきだ、と……」


「なるほど……。ありがとうございます」


この口ぶり、そしてジェンス総長がいきなり発した言葉から恐らくアグラタムが親友に対して情報を提示したのだろう。


全学年を含める、というのも将来性の為だろう。そう思いながら教室に向かう。

しかし、はたと足を止める。


(……ジェンス総長がいきなり発令した。もしアグラタムが情報を流したのであれば、昨日の報告で私に伝えるはず。何故報告が無かったの?

……ステラが、ステラ自身がジェンスに接触した?)


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