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異界の師、弟子の世界に転生する  作者: 猫狐
四章 黄昏のステラ
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先生に借り一つ

自分が戻り際、後ろから恨みがかった視線を嫌々受ける。仕方ないだろう、こんなの皆には見せられないのだし、かと言って先生の前で公開処刑にするのはこの先彼らにとって良くない結果になるはずだ。


「戻りました」


そう言うと皆がおかえり、という前にアステスが言う。


「先輩!見てください!」


そう言って見せられたのは、まだまだ自分のよりは未熟だけれど先程教えた光の爆弾。ツン、と彼女がつつくと爆発したのを見て、自分は手放しで褒める。


「凄いな!ていうか皆早くないか?自分だってあm……んん、習得するの結構時間かかったのに!」


その言葉を聞いたアステスが何か神妙な顔をして近づいてくる。

それを皆が黙って見ている。


「……先輩、今なんて?」

「え?」


何となく圧力を感じる。何故かは分からないが、怒りなどの負の感情ではない。

ただ、確認するための問いかけのように。


「今なんて言いました?」

「え、だから習得するの結構時間かかったのに、って……」

「……その前。何か言いかけましたよね?誤魔化してましたけど」


しまった、嬉しさからか編み出した、という欠片を飲み込んだのがバレている。


「……うん、レテ~。今の隠し方は無理があると思うよ~」

「ダイナまで!?」


他の皆も頷く。先生がそこで一言助けをくれる。


「レテ。俺は実は光魔法やら闇魔法に結構知識はある。それこそ、各地の文献とかは結構読んでいるんだぁ。これでも先生やってるからな。

その過程で東西南北の首都や学院の本、小さな図書とか古本もなぁ。

そう言った本の中に確かにこれと似た技があった。もしかしてレテ、君はアレンジをしたのではないかなぁ?」


「アレンジ……!」


アステスが驚くのを尻目に助かったと思いつつ、頷く。


「……はい。光の玉を空中に浮かせて目隠しにする技は知っていました。けれど、自分はそこに火の力を込められないかと顕現で試していたのです。

それは偶然成功しましたが、広域化となると少し話が違ったので、体温を込める方法に違いがあったので……」


「ああ、なるほど……!」


クロウが頷きながら言うと、皆も納得してくれた。

先生に借りを一つ作ってしまったな、と思いつつアステスが唐突に謝ってくる。


「す、すみません!つい、一から全てを生み出したのかと」


「いや、自分でもそれは……出来な……くはないけど……」


出来ない、と言いかけて傍にレンターという光の柱を教えた人が居るのを思い出して言い直した。


「えっ……ええ!?」


その言葉に彼女が大きく驚く。スイロウ先生も驚いている。


「ど、どんな技なんですか!?」

「それは先生も気になるなぁ」


皆も……特に、レンターなんて見せてやれ、とばかりの視線を送ってくる。

仕方がないか、と思いつつ、手で後ろに下がって下がって、と合図すると、皆が無言で下がる。


自分は手から光の玉を生み出すと、そこに更に魔法を付与する。

そしてそれを天高く投げると、一泊置いてドゴォン!と地面に勢いよく着弾する音が聞こえる。

光が収まった後、皆に振り向いて……レンターを始め、あの合宿の同級生は知っているだろうが説明する。


「これが自分の生み出した光の技、『光の柱』です。玉に魔法を付与して、攻撃性能を高くしました」


「……なんて、威力」


抉れてしまった地面を申し訳程度に自分は土の顕現で直しながら、先生が言う。


「それぐらい知識があるなら、本を出してもいいんじゃないかぁ?きっと皆の参考になるぞぉ!」

「……まだ自分は光の魔法や闇の魔法に詳しいわけではないです。ただ、時期が来たら考えておきます」


そう言うと、アステスが何か覚悟を決めたようにこちらに寄ってくる。


「先輩。……私とも、戦ってくれませんか」

「……武術で、か?」


その真剣な目は断るに断れなかった。だから質問に質問で返した。


「先輩は魔法でも武術でも。私は……教えてもらった技を使って、少しでもあの人に近づきたい。

私をラクザで助けてくれた、あの人に」

「……そうか、アステスには目標になる人がいるんだね」


それが自分だということを隠しながらも、頷く。


「先生、結界をお願いします」

「……分かった。ルールは先程と同じで行くぞぉ。ただ武術が絡む都合でお互いに多少の痛みや覚悟はしておいてくれ。いいなぁ?」


自分とアステス、双方が頷くと結界に入ろうとする。そんな中、ブレスレットから連絡が入る。


(……アグラタム?)


不思議に思いながら、謝る。


「すみません、ちょっと木刀取ってきていいですか?部屋にあるので」


「アステスさんがいいなら、だなぁ」


その言葉にアステスは頷く。


「大丈夫です。……先輩は、木刀も使うんですね」

「あ、あはは……一応ね」


そう言いながら再び駆けだしながら、連絡を受ける。


「アグラタム、どうした?」


そう言うと、アグラタムから声が返ってくる。


「……警告を、しようと思いまして」

「警告?」


何のだろう、と思いつつ寮に入る。自室まで入って木刀を作って、詳しく聞く。


「最近、魔物が凶暴化して襲う事件が増えています。

今はこちらで十分対処出来るのですが、もしも……もしも、学院や街から出る時はお気をつけください。師の平穏な生活のためにも……」


「……分かった。その警告、覚えておく。ありがとう」


そう言うと連絡が切れた。自分は顕現で作った木刀を持って、アステスの元へと戻っていった。


毎度見ていただきありがとうございます。これも180話目(1話1話が短いとはいえ)となると、中々……(自分が)感動してしまいます

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