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異界の師、弟子の世界に転生する  作者: 猫狐
四章 黄昏のステラ
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アステスは知りたい

顕現の神童。私は少しその言葉を疑っていた。

一つ年齢が下で、顕現が得意だからそう呼ばれているのではないか。私たちが教室で気づかれたのも、実はまぐれなのでは無いか。もしかしたら、風を巡らせて警戒していたのではないか。


けれど、ネイビアさんと先輩の手合わせで分かった。

私は実は顕現系統に関してはよく知らない。良いとこ壁や剣を生み出して戦う、どちらかと言うと武術系のものだと思っていた。

だから驚愕しか無かった。目の前で起きた光景は。


確かに知識量の差はあるだろう、ネイビアさんだって首席でも今年入学したばかり。それでも力があるから首席になったのだ。

そのネイビアさんが、為す術なく叩きのめされた。不意打ちだって、外野である私の目からしたら完全に決まっていた。もしも私が同じ攻撃をされたら食らっていたに違いない。

それをにこやかに、ただ風の壁を作り出しただけで退けた。先輩はその前に風の壁で土人形を消した事で、ネイビアさんの本能的な後退を風の壁一枚で成し遂げたのだ。

決定打となったのは、大量の騎士だろう。高学年の人ならともかく、ひとつ上の先輩があの量を次々に生み出して突撃させるなんて荒業。ゴリ押しと言えばそうだけれど、そもそもネイビアさんが顕現を一個一個出して対処したのに対し、先輩は同時に出して、消えたそばから新しい騎士を生み出した。

そして最後の剣。簡易結界が貼ってあるはずなのにこちらまで風が吹き荒れていた。本当に先輩の言葉を信じるのであれば、それは顕現に収まるものでは無い。

特異能力、それも攻撃系の能力でようやく成し遂げられるような事をただの魔法でやってみせたのだ。


(……もし、もしも。この人があのラクザの日に来ていれば……もっと多くの人が助かったのかな)


それは無理だと知っていても、思わずには居られない。これ程の実力者だ。居れば……と思わずには居られない。


結界が解け、ネイビアさんが立ち上がるのを見た先輩がこちらに来る。


「ごめんね、びっくりさせたかな」

「びっくりはしました。けれど……神童と呼ばれる理由は、わかった気がします」


そう言うと、いやぁと笑いながら照れていた。そこから、私の本題に入る。


「あの、光魔法を教えて貰えるって、本当ですか?」


その言葉は不思議と、疑いはなかった。

普通一つの属性、系統、特異能力を極める人にとっては異例の言葉であることは重々承知している。

けれど、私はどうしても知りたかった。強さが欲しかった。


「んー、広域化かつ武術系に使う魔法、か……」


先輩が考え出す。すると、横の先生が口を出した。


「あれ?レテよりもレンターの方が適任なんじゃないかぁ?」


その言葉に考えている先輩に変わってレンターさんが答える。


「自分のはあくまで付与なので……知識という点では彼が勝っています」


「ほほぅ……?」


なにかもう一言ありそうだったが、教え子の言うことなら、という感じで引いてくれた。


数分立って、先輩が話しかけてくる。


「試しに君の光魔法を見せてもらえるかな?」


「あ、はい!」


そう言われて、少し離れると私は光を無造作に広範囲にばら撒く。


眩しっ!と聞こえたがそれがメリットなのだから仕方ない。その隙に攻撃するのだ。


「なるほど。ありがとう。次なんだけど、使ってる武器とか得意な距離はある?」


「え、えっと……基本的に拳ですね。なので近距離が得意です」


なんでそこまで聞いてくるんだろう、と思った瞬間にふと違和感を感じた。


(……魔術学院の、顕現の神童なんて人が何で武術の事を知っているのだろう?それにナイダ先輩も、この人が何で光魔法を扱えると……?)


普通ならもっと上の先輩方が知るべきことをこの人が知っている、そんな気がしてならない。

きっと研究熱心な先輩なのだろうと思いつつ、言葉を待つ。

暫くして、声がかかった。


「お待たせしてごめんね。中々広域化で光って難しいから」


「い、いえ!それよりも、何かあるんですか?」


期待に満ちているのがわかる。ようやく教えて貰えるのだと。

それは叶った。ひとつ頷くと、先輩は拳を握って空振りする。


「ふっ!」


その掛け声と共に、光の球が空中に浮かぶ。なんなのだろう、と思った。


「レテー、なんだこれ?」


黒髪の先輩が尋ねると、サラッとえげつない言葉を吐かれた。


「ほら、光魔法って基本的に攻撃より支援でしょ?……って事は、相手は油断してるわけで。あれ光魔法の爆弾。触ると光ると同時に熱量で攻撃する」


「えぐっ!?」


別の先輩が私の心を代弁してくれる。確かに、習得出来ればかなり有利に運ぶことが出来るだろう。光の玉が空中にあるだけで警戒させられるのだから。


「でも先輩、あれ収縮系統では……?」


そう、そこが問題だ。この人はともかく、私は収縮系統まで扱えるほど練度は高くない。

そんな問いに反して、返ってきたのは意外な言葉だった。


「いや、あれは広域化だよ。要は自分の拳の中に光と体温を込めて、殴ったと同時に手を開いて球を広げる。……もっと威力が欲しいなら火の練習しないといけないけど、とりあえず今はこれを練習でいいんじゃないかな?」


私に合わせて、そんな技を教えてくれるなんて。凄い先輩だ。


(……?なんだろう、この違和感。でもまずは先輩が教えてくれたこの技を会得しなきゃ……!)


何か、とてつもないものを見逃している感じがしたが練習にのめり込んで、忘れてしまった。

久しぶりの投稿、今回は後輩視点でやってみました!

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