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異界の師、弟子の世界に転生する  作者: 猫狐
四章 黄昏のステラ
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首席の手合わせ

ネイビアと自分が対角に立ち、正面から向き合う。皆は観戦組として離れている。


「よぉし!ルールを説明するぞ!」


スイロウ先生が元気な大声で言う。ネイビアは少し緊張しているようだ。

それもそうか、と思う。まだ入学して間もない彼はシアに叩きのめされたばかり。鍛錬も知識も、経験もまだまだ無いのだから。


「大前提として、相手に重症を負わせるような攻撃は禁止!その技を確認した時点で先生が間に入って中止とする!

次に、先生が張った簡易結界から出ない事!特にレテ!利用しない事!

最後に、特異能力の使用は禁止!どちらかが降参、または戦闘が続行不可能と判断した時点で模擬戦は終了とする!」


「わかりました」

「はい……」


ネイビアは素直に答える。自分としては結界に干渉するなと言われて相当先生方に根に持たれているな、と感じて若干ショックだ。


「それでは合図はこのベルを鳴らすとしよう。お互い準備はいいかな?」


そう言うとネイビアがこちらを真剣な眼差しで見てくる。

それを返すように自分は微笑む。


「かかっておいで」


そう言った瞬間に簡易結界が貼られ、ベルがチリン、と鳴った。


「ふっ!」


まずは小手調べとばかりにネイビアが土の細かい礫を作り出して勢いよく飛ばしてくる。

自分は広域化系統の技術を使って、風を吹かせて礫を簡易結界にぶつける。


「……!広域化……」

「流石、首席だね。その通りだ、よっ!」


言うと同時に自分は片足でトン、と地面を軽く踏む。

その瞬間、土の杭が連続してネイビアの方に向かう。


「ふっ!」


それをネイビアは土の足場を作り出して上に飛んで避ける。

着地すると、彼はこちらを見ながら言う。


「……貴方の得意な属性は風のはず。なのに……土をこの精度で使える。土属性を得意とする私も精進しなければいけませんね」


「その心が大事だよ」


そう言いながらも、土の矢を放ってくる彼に対して同じ矢を作り出して相殺する。


「だからこそ、知りたい。貴方の……神童と呼ばれる先輩の力を!」


そう言って土の人形を三体創り出す。そして、その手には剣が握られている。

これは本気とはいかずとも、手を抜くのは失礼だ。そう思って風の壁を創り出す。


「行けっ!」


突撃してくる人形は、風の壁に当たる。

しかし風と壁は相性が良くない。そもそも風は空気であり、水属性のように激流で押し潰すことも出来なければ火属性のように溶かすことも出来ず、ましてや物理的に壁を作れる土属性とは真反対だ。

けれどそれは風の壁が単体である場合である。


「うん、いい人形だ」


そう言って風の壁を人形の後ろにもう一枚顕現させて挟み込む。

直後、土の人形が消え去ると同時に突風が吹き荒れる。


「っ!?」


「風は確かに壁にするには弱い。けれど、挟み込む事で真空状態にして無理矢理消し去る事は出来るんだよ」


その言葉に外野から、ほぇー!という声が聞こえる。恐らくファレスだろう。


「……なるほど。では役割を交代しましょう。貴方の力を……私は受け止めてみせるッ!」


その言葉に初めて微笑みからニヤリ、と顔を変えると言い放つ。


「じゃあ……遠慮なく!護ってみせてくれ!大切な人の為に!」


そう言って自分は風の騎士を顕現させる。ネイビアはそれに対し、壁を複数枚作り出す。


風の騎士が壁に切りかかる。騎士が持つのは真空の刃。いとも簡単に壁を切り裂いていく。


「……っ!」


人形を騎士の後ろに配置するも、回転斬りをさせる事で人形は姿を消す。

そして複数枚あった壁が全て消えた時、ネイビアはそこに居なかった。


「貴方が教えてくれました。護るには、囮も必要なのだと」


そう言って不意打ちで土の剣を顕現させて斬りかかってくる彼に言い放つ。


「いい判断だったよ。あえて人形に意識を向けさせて、壁の後ろにいるように錯覚させる。……流石、シアの後輩だ。けれど、まだまだ甘いんだ」


そう言って斬りかかってくる彼に対して、自分は風の壁を顕現させる。


「っ!」


瞬間、ネイビアが下がる。そうだろう、人形が数秒前にこの壁で消されているのだ。本能的に下がってしまう。


「さて、顕現の神童と呼んでくれた君達に対してそれに応じよう」


そう言って風の騎士が同時に『十五体』、つまり簡易結界の外周全ての方向から攻められるように設置される。


「これが……!」


「いやぁ、まだまだ」


その騎士を順番に、今回は真空の刃ではなく単純に突撃させるだけにしている。

けれど四方八方から攻めてくる騎士に対し、ネイビアは壁を張ることしか出来ない。加えて消えた騎士は次の瞬間にまた外周に生み出されている。


「ぐ……!」


彼を襲うのは騎士と、騎士が霧散する時の突風。やがて限界が見え始めた時、自分は騎士を一箇所に集める。


「ふっ!」


騎士が全て霧散する代わりに、猛烈な突風が吹き荒れる。簡易結界まで吹き飛ばされた彼に対して、自分は騎士を犠牲にして作り上げた剣を見せる。


「な、んですか……これは……!風のはずなのに色が、色が見える……!

違う!これは色じゃない!風が、風が集まって周囲の物を巻き込んでいる……!

……降参です。恐らくそれで攻撃されれば、私は間違いなく負けでしょう」


その言葉を聞くと、パッと剣を消して笑顔で言い放つ。


「元々あの剣で攻撃する予定はなかったけれど、威力的には……そうだね……。

大体一振りでスイロウ先生の簡易結界は軽く切り裂いて、その辺に突風をぶちかます……というか、この辺りの木々が何本か倒れるんじゃないかな」


その言葉に唖然とするネイビア。


「これが、顕現の神童……」


次にスイロウ先生がツッコミを入れてきた。


「レテ!絶ッ対にその剣を振るうなよ!そもそもその剣を出された時点でこっちまで風が届くのがおかしいんだからなぁ!?……結界には干渉してないから良しとするけども!」


「は、はい……」


ツッコミというより怒られた。素直にしょんぼりする自分に、クラスメイトも、アステスも、立ち上がったネイビアも笑っていた。




レテもしょんぼりする時はしょんぼりします。

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