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異界の師、弟子の世界に転生する  作者: 猫狐
四章 黄昏のステラ
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一学年首席の訪問 3

暫くして、スイロウ先生を連れて自分は教室へと戻ってきた。


「いやぁ、先輩と手合わせとは感心感心!まだまだ二学年の君達も学ぶ事は多いだろうし、よく見ておくんだぞ!」


とりあえず訓練場の許可は取り付けた。屋外のスペースではあるものの、十分だろう。

それにしても後輩二人の顔が引きつっている。いや、畏怖の感情だろうか。

何かクラスメイトが言ったに違いない。が、それを追求するのも野暮なので歩き出す。


「でも対抗戦を見ていた感じ、ネイビアは『護る』顕現が得意そうだよね。やっぱり……孤児院の子を守りたいって思っているの?」


廊下を移動中に話しかける。ネイビアは少し気まずそうにしながらも、答えてくれた。


「……まぁ、はい。私は幼いですがそれでも誰かの役に立ちたかった。けれど私は魔物を討伐してお金を稼ぐことも出来なければ、治安を守れる訳でもない。せめて、私の手の届く範囲の小さな子と……頑張っている家族を護りたいのです」


「そうか、護る……か。なら一層頑張らないとね。自分との手合わせで何かを得られることを信じているよ」


そう言うとコクリ、と頷いてくれた。

次はその隣で歩いているアステスに話しかける。


「光魔法を教えて欲しいん……だよね?そういえば入学式の時にも何か言っていたけれど」


問いかけると、アステスはビクッとしながらも答える。


「はいぃ!……私は光魔法が得意と言われたのですが、如何せん上手くいかなくて。でも、あの人は凄かった。全身を光で纏ってラクザの民を一人でも多く護ろうとしてくれたんです。私も、救われた一人として力をつけなければと思って、蹴りや殴りなどの稽古をしました。孤児院には四属性の書物はあっても、光と闇に関する記述はなかったので!」


「なるほど。その光の人も、ラクザでの戦火で一人でも多くの人を救いたかったんだろうね」


少し自分の声が落ち込んでしまうのが分かった。

分かっている。あの規模の災害を、魔術で通信遮断されてアグラタムを始めとする軍が即座に駆けつけられないとなると被害は甚大だ。

それでも自分は、この子を救えてよかったと思う。だが、完全にしこりが消えた訳では無い。


「……?どうかしましたか?先輩方、顔が暗いような……」


ハッと皆が周りを見渡すと、ファレスとフォレスがすかさず機転を効かせてくれる。


「ほら、ラクザって私たちの故郷だからさ」

「……皆、私達を案じてくれている」


そう言われると、しまったという表情でアステスが言う。


「す、すみません。……ラクザさまのご息女の前で、こんな発言」


「ううん、大丈夫!今でもお父さんを筆頭に頑張ってくれているはずだから!」

「……生きている人が、こうして居てよかった」


それに対して皆がその通り、とばかりに頷く。

皆ラクザの戦火に乗り込んだ兵士たちだ。それに関しては思うところが無い、というのがおかしな話だ。

自らの力の無さを痛感する機会であり、現実の無情さを知った。それは犠牲と共に自分も含めて大きな成長へと導いてくれるだろう。


外に出て暫く他愛も無い雑談をしながら歩いていると、訓練場が見えてくる。


「見えてきたなぁ!いやぁ、何度目だろうな!ここ使うの!」


「分からない〜」


ダイナが即答すると、ネイビアが自分に改まって話しかけてきた。


「……お願いします。私を、私に護る術を教えてください。実戦で」


ふむ、と少し考える。それは少し違うのではなかろうか。

昔弟子に返した言葉を返す。


「……ネイビア、護る術って基本的にどんな事だ?」

「……え?そ、れは……圧倒的な壁や人形、それこそ顕現させられるもので……」


少し動揺している。やはりここで教えておかないとこの先つまずくであろう。


「確かに、実戦で得られる経験は貴重だ。でも、それ以前の問題もある。

顕現には魔力を消費する。いざその場面を目の当たりにした時、どういう方法で護るのか。敵を屠るのか、それとも壁を作って防ぐのか。或いは囮になるのか。……護る、一言でもそれだけの方法が詰め込まれている。

そしてそんな状況では力んで魔力を余分に入れてしまうことも少なくない。忘れないで欲しい。実戦で思い出して欲しいのは、こういった何気ない基礎だってことを」


皆ポカン、としてしまった。その中でスイロウ先生が口を開いた。


「確かに言うことはその通りだが……なんというか、大人びた……実戦に関わったかのような言葉だなぁ。それも、一回や二回じゃないみたいな感じだぁ」


その言葉に慌てて取り繕う。こんな時に名前を出せるのはいいことだ。ありがとう、弟子。


「い、いや!これは自分がアグラタム様に試験の証明証を貰った時に教えて頂いた言葉です!何事も基礎を忘れては行けない、と……幼いからこそ、きっと増長しては行けないよ、という意味で託されたのだと思います」


なるほどなぁ!と納得してくれる。ほかの皆もそれなら頷ける、とばかりに首を縦に振っていた。

ただ一人、シアを除いて。


(やっぱり、シアにはバレてるのかなあ。これ、弟子から受け継いたんじゃなくて自分が弟子に言った言葉だっていうの)


良くも悪くも感が良い彼女に、何故か安堵しながら訓練場に到着した。


((。´・ω・)。´_ _))ペコリン

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