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異界の師、弟子の世界に転生する  作者: 猫狐
四章 黄昏のステラ
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学年対抗戦 魔術学院 3

先に動いたのはネイビアだった。


「俺は……守るんだ!皆を!」


そう言って土の人形を作成する。ネイビアが得意とするのは土属性の顕現系統だ。

対してシアはゆっくりと、水を手の内に収縮させる。そして人形に向かって放つ。

彼との特訓で扱い方を熟知したシアにとっても、まずはネイビアに『収縮系統』だけしか使えないという事を思わせるためだ。

案の定、人形は貫かれて霧散する。苦そうな顔をしながら彼がまた魔力を込める。

今度は土の板を複数生成し、こちらへと飛ばしてくる。左右、同時に正面から飛んでくる板を完全に避けるには後ろに避けるしかない。

恐らくネイビアの事だ。後ろに飛んだ所に何かを仕掛けてくるのだろう。故にシアは水を圧縮させた玉で左の板を相殺し、隙間へと入り込む。

案の定後ろには土人形が生成されていた。手を振り下ろそうとしているそれに対して、敢えて何もせずにシアはネイビアに近づいていく。


「俺だって、守る為に力をつけたんだ!」


そう言うと両手に剣を顕現させて振ってくる。

武術学院の生徒には及ばないが、それでも魔術を使うものにとっては近接戦闘は分が悪い。かと言って後ろには人形が迫ってきている。

シアは魔力を練って収縮した水の剣を生み出す。顕現系統でなくても、考え方一つでこれぐらいは出来る。

けれどそれが長持ちするはずもなく、剣を一本折ったところで消滅してしまう。

無論ネイビアは顕現という系統から、もう一本取り出す。


だが、時間稼ぎにはなった。


後ろから迫り来る土人形に対して、魔力にモノを言わせた大量の水を流す。


「なっ……」

「教えてくれたんだ。系統が違っても、別に使えないわけじゃないんだって」


シアが使ったのは広域化系統に近いもの。それが不可能でないことは、顕現系統を得意としながらも全ての系統を扱う彼が教えてくれた。


案の定人形から流され、ネイビアの方へと滝のような水が流れていく。それに対してネイビアは視界の邪魔になる人形を消さざるを得なくなり、水を防ぐために盾を顕現させている。


その隙に両手に水を収縮させ、さながら光線のように一点に収束させた水のビームを放つ。


「ぐっ……!」

「悪いけど、手加減するつもりはないからね!」


盾にミシッという音が入る。そのまま押し切れるかと思ったが、流石は土の顕現と言ったところだろうか。複数枚の壁を顕現させて凌いでいる。

これは貫通するのに骨が折れそうだと判断して、シアは水を収める。次の瞬間に壁がそのままこちらへと向かってくる。


それを避けるために敢えて水を地面に打って、反動で上に飛ぶ。そして、滝のような水流を空中から彼に向かって放つ。


「まだだ!俺は負ける訳には……!」


そう言って空中に盾を顕現させる。しかし地面に降りた私は彼に接近して、また水の剣を作って彼の喉元に突きつける。


「……魔力、切れかかっているでしょ?もう終わりだよ」


そう言った瞬間、ネイビアがふらつく。それを支えると同時に、試合終了の合図が鳴った。


「はは……強い……シアさん、本当に貴女は強い……」


魔力の残量がセーフティゾーンギリギリの彼に対してにこやかに微笑みながら言う。


「ネイビアこそ。顕現は難しいのに、よく扱えたね」

「沢山……練習したんですよ。それでも貴女に適わなかった。俺は守る事が出来ない……」


その言葉に対して、ふるふると首を横に振る。


「ネイビアは土人形よりも、盾を扱うことに長けてた。それは人を守るのに大事な……そう、とっても大事な事。

ネイビアが『誰かを守りたい』って思った証。だから誇って、学んで、強くなって。先輩や本、勉強をして!」


そう言うとハハッと笑ってネイビアが嬉しそうな表情を浮かべる。そして、ネイビアが最後であろう質問をしてきた。


「シアさん、貴女は収縮系統が得意なはず。……なのに、滝のような魔術は広域化そのものだった……。どんな理屈で、収縮系統からそんなものを生み出したんですか?」


ごく普通の疑問で、一番分からなかった事だろう。だからこそ、しっかり答える。


「収縮系統が得意だからっていっても、他の系統を使えないわけじゃない。……それを、教えてくれる友達がいた。私なんかじゃとても適わなくて、模擬戦でも一回勝つどころか、攻撃すらまともに当てられなかった。

その友達が一番得意とするのは顕現系統。そして、私を家族と呼んでくれた人。だから、落ち着いたら話を聞きに行こう?」


その答えに乾いた笑いがその場に響く。


「まさか、シアさんですら相手にならない、なんて……同じ学年でも、そんな強い人がいるんですね……」

「まぁね。去年は二年生をものともせずに勝ちをもぎ取った人だから。……でもまずは休もっか」


その言葉に誘われたのか、ネイビアは私の手を借りながら立ち上がる。係員の先生が彼を控え室へと連れていった。




「いやぁ、流石にレテ程じゃないけどシアも強いね」


観客席でクロウが言うと、ショウとファレスがツッコミを入れる。


「レテが規格外すぎるんだよ!普通はあれぐらいなんだって!」

「そうだよ!大体、さっきの滝の技を教えたのだってレテ君でしょ!」


それを言われるとポリポリと頭を搔くしかない。ついでにスイロウ先生が言った。


「去年の出来事を受けて、『結界に干渉するのは禁止』というルールも設けられたそうだぞ……」


「普通そんな事出来ない……」


ミトロが呟いた中、自分はそっぽを向くしかないのであった。

そもそもレテが規格外なだけで、魔術学院の先生が構築している結界はとても優秀なんです。

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