二学年となって
当然の話ではあるが、一学年で優秀だからと言って二学年でも優秀とは限らない。
逆もまた然り。一学年で努力した者は二学年で高いクラスへと編入する。
それを図るのが、テストである。
元々Sクラスのスイロウ先生は教え上手だった。なので筆記テストなど、前世の知識も合わせてスラスラと解けてしまう。
実技に至っては問題など有り得ない。あれだけの修羅場を経験したのだ。悪いけれど、Sクラス以外の面子に負ける訳にはいかない。
全てのテストが終わった後。採点中にショウがヘトヘトになった様子で話しかけてきた。
「なぁ……筆記テスト、解けるには解けたけど不安でしかねえよ……」
「……大丈夫だろう。それにショウの場合、実技がかなり高得点なように思うが」
フォローを入れたのはレンターだ。もちろん、その本人は筆記も実技も通過出来る自信があるらしい。全くもって心配していない。
確かに夏休み前で勉学が不安なのはファレスとショウの二人だが、ファレスにはフォレスが付いていただろうし、何よりも実技よりの二人は実際に実技テストでは監督官の感嘆が密かに聞こえてきていた。あれならば、筆記がとんでもなく低くなければ大丈夫だろう。
テストが終わって数十分後。雑談をしているとスイロウ先生が扉を開けた。
「待たせたなぁ!いやぁ、Sクラスだけなら採点は人数少なくて楽なのだが、それだと人数が多いところが不公平でな!皆で採点していたんだぁ!」
その言葉の瞬間に自分の机にいたショウや、雑談席になっていたクロウの場所から皆が元の場所にスっと戻る。
来たということは、採点結果が出たという事だ。誰も落ちていなければいいが。
「さて、皆も知りたい採点結果だが……
ーーー皆、Sで合格だ!Sは定員いっぱいだからAやBから上がってくることも無い!つまり、一学年と同じと同じってことだな!良かったなぁ!」
「うおおおお!良かったあああ!」
そう言って机に突っ伏すショウ。無言でほっとしている双子。そしてそれを当たり前のように眺める周りの七人と自分。
学生は階段とは言うが、同じ階段を歩める訳では無い。そういった意味では一安心だ。いきなり知らない子がSクラスに編入してきてもらっても馴染めるか分からない。
「さて、二学年が始まるという事は数日後には後輩が入ってくるという事だぁ!皆、後輩の身近な手本になれるように努力してくれよなぁ!
後、気になる寮の部屋だが、皆合格ということで去年のままでいこうと思う!よし!皆顔を伏せて!」
そう言って顔を伏せさせられる。きっと、嫌だと言えない雰囲気を作り上げたくないのだろう。
この状態でそっと手を挙げれば、確かにバレない。
「寮の相方を変更したい人はそーっと、手を挙げてくれ!」
そう言って十秒、二十秒。三十秒経ったところに顔を上げて!と言われる。
「うむ!皆仲がいいのだな!変更はなしだ!去年に引き続きレテとシアだけは男女部屋になるが、後輩に同じような境遇の子がいたら先輩として色々教えてやってくれ!」
「はい!」
そう言われて元気に返事するシアだが、後輩に同じように男女のペアでよく話せる方法を教えてあげられるかは分からない。
そもそも自分達はテストの段階で面識があり、周りがフォローしてくれて、その上で秘密を明かしたことで上手くやれているのだ。どう言ったアドバイスをすればいいのか分からないが、スイロウ先生が言うことだ。つまり、どうしても一学年に男女混合になる部屋がどこかにあるという事だろう。
「よし!じゃあ今日は荷物を寮の部屋に持っていくぞぉ!よく去年と同じ部屋に持っていく子が多いが一つ上の階だからなぁ!気をつけてなぁ!」
そう言ってスイロウ先生は出ていく。そうするとクラスの皆が一斉に自分とシアを弄ってきた。
「良かったな、レテ。またシアと同じ部屋だぞ!」
「クロウ?お前それどういう意味だ……?」
「いやいや、そのままの意味だよ。歳頃の子供が……」
「さては夏休み中に変な本読んだな?」
そこにショウとレンター、ダイナも参戦して、最初は自分とシアの事を弄っていたものの次第に夏休みの報告をしていた。
ダイナだけは少し報告が作り笑顔だった。やはり、どこの家庭も順風満帆ではないということなのか。
一方シアもシアで、周りに言われていた。
「良かったね!レテ君居たら課題全部教えて貰え……いたっ!」
ファレスが言葉の途中でフォレスに叩かれる。それをミトロとニアが笑ってみている。
「……レテ君は多分、全部は教えない」
「そうだね、困ったらヒントはくれるけど……私が解けない訳じゃないからね」
そう言うと、うんうんと頷いた後にニアがズズっとこちらに身体を乗り出してくる。
「それで!?今年はレテ君と恋の発展はありそう!?」
「ちょ、ニア!?私とレテ君は……その、そういう関係じゃないからっ!」
実際には婚約者という話なのだが、まだまだ恥ずかしい。しかしそれに食いつくのが女の子というもの。
如何にレテ君と同じ家で過ごしてないか、夏休みどんな経験をしたのかを取り繕うのに必死だった。
皆に嘘をつくのは心が痛むけれど、後一、二年もしたらレテ君の家に居ることは言っていいだろう。
それまでは何とか誤魔化そうと思いながら皆の思い出も聞くシアであった。
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