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異界の師、弟子の世界に転生する  作者: 猫狐
四章 黄昏のステラ
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幕間 出立前に

「課題よし、着替えよし、その他……シアは?」


夏休み終わり。八月の最終日に向けて夜に最終確認をしていた。


「こっちも大丈夫かな。でも着替えとかシャンプーとか魔法具とか沢山買って貰っちゃって……いいの?」


シアが魔法のランプに照らされながらこちらを見る。それに対して苦笑しながら思い返す。


思えば、母の一言が切っ掛けだった。

何気ない夏休みの中盤の朝ごはん中。ふと母がシアに問いかけた。


「シアちゃんって着替えは?」

「あ、学院のものを……その前は孤児院から持ってきた数着を回して……」


それの言葉に反応して珍しく休みだった父が自分に対して耳打ちした。


「未来のお嫁さんにそんな数着しか着せてやれないのはこちらとしても胸が痛いぞ!レテもシアちゃんも成長するんだからいい機会だ!今日服を買いに行きなさい!」

「えっ」


パンを齧っていた自分は素で返事してしまった。思わぬ声にシアと母がこちらを向く。


「レテ君、どうかした?」

「レテ、今日は空いてるわよね?」


普通に疑問系なシアと、若干圧力のかかった母の声。つまり、訓練とか色々抜きにして買いに行けという事なのだろう。

確かに子供の身体の成長は早い。前の寝たきり自分ならいざ知らず、一年前の服なんて丈がそろそろ限界だ。


「うん、空いてるから……」


その言葉に間髪入れず母が喜びの声を上げる。


「良かったわねシアちゃん!レテも一緒に服買いに行ってくれるって!」


「……ん?自分『も』?」


てっきり二人で行くのかと思っていた。だから聞き返してしまった。


「あら、二人でデート?それも大事だけれど……貴方達二人で学院に行っている間の成長に合わせた丈なんて分からないでしょう?それに今回はお父さんが丁度休みだからレテの服も買うのよ。ね?良いわよね?アナタ?」

「勿論だとも!家族揃ってお出掛けなんて良いじゃないか!お父さんが全部出しちゃうぞ!」


あぁ、父もノリノリだ。しかし言われてみれば女性どころか自分の成長期の丈なんて覚えてない……というか、見繕って貰っていた気がする。

そんな自分が成長期の女の子の服なんぞ、わかるわけがなく。

この日は家族総出で出掛ける事になった。


「この服はどうかしら?」

「わ、私には似合わない気が……レテ君はどう思う?」


ほぼほぼ着せ替え人形状態と化していたシアはこちらに向く。女の子が産まれなかった母としては可愛くてしょうがないのだろう。

一方生まれた男子も着せ替え人形状態だった。余っ程息子と、その未来の嫁さん。そしてお母さんと外出出来たのが嬉しいのだろう。


「ん?あ、そのミント色すごく似合う。後こっちもどうか感想を教えて欲しい」


自分に着させられたのは白黒ボーダー柄のやつだ。それを見てシアは満面の笑みで言う。


「うん!似合う!」

「じゃあこっちもそれも買いだな!母さん!」

「はーい!うふふ……」


こんな感じでお互いに似合う、少し違うと言って意見を交わしながら服を買っていった結果。

まず、服が大量になった。


「こんな沢山……!ありがとう、お母さん、お父さん!」


シアが満面の笑みを浮かべてお礼を言う。実際孤児院ではこんなに服は無かっただろう。


「じゃあ次だな!」

「え?まだ服買うの?」


びっくりして自分が父親に聞くと、チッチッチッ、と人差し指を振られる。


「いや、魔法具だ」


そう言った父に着いていくと、どこか古めかしい魔法具屋さんに辿り着いた。


「おや、ラファの旦那さんじゃないか。……ん?おやおや!お子さん二人目かい?目出度いねえ!」


出迎えてくれたのは歳を取ったお婆さんだった。しかし、わかる。

この人は魔法具に精通している。商品を見れば分かる。

ざっと見ただけで綿密に組まれた魔法が採り入れられた魔法具が沢山ある。こんな穴場、そうそう無いだろう。


「いや!ウチの子じゃないんだが……引き取った感じだ!んで、これがウチの子!ほら、レテだよ。昔見せたろ?」

「おやおや、あの赤ん坊が大きくなって……!こんにちは、レテ君」


挨拶されると、こちらも笑顔で返す。


「こんにちは、お婆さん。……いい魔法具が沢山ありますね。例えば入口の左に置いてある、一見するとただの達磨。でも魔力を込めれば達磨が上下に開いてちょっとした小物入れになっていませんか?デザインもオシャレな上に、スペースも取らない。いいと思います!」


「おやおや、驚いた!ラファさんの息子さんは凄いねえ!」


拍手される。シアがほえー!と声を上げながらその魔法具に触れる。


「わ!ホントだ!開いた!」

「ほっほ!あの子は引き取ったって言ったけれど……フォンさんだってまだお盛んだろう?」


その言葉に母が前に出ると一礼する。


「私としてはもう一人増やしたいのですが……あの子は孤児院の子で、その上レテの将来のお嫁さんが確約されているのです。なので増やすのはもう少し育ってから……」

「ブフッ!」


自分が噴き出すと皆笑う。


「そんな感じで色んな魔法具があるから好きなだけ買っていいぞ!興味あるやつ全部だ!」

「太っ腹だねえ!可愛い子供のためってやつかい?ならオススメのやつを教えてあげないとね」


そう言ってお婆さんと自分、シアで色んな魔法具を選ぶ。


お香はあったので、雨の日に遊ぶ用の魔法具。これを二人で遊ぶやつと、クラスの皆で遊ぶ用のものを三つほど買った。

他にも色んな種類の魔法具を選んだ結果。


「毎度あり!」

「……いや、これ多すぎでしょ」


魔法具も大量に買ってしまったのであった。

そんな感じで、その日は大量の買い物をした。けれど、シアが楽しそうだったし自分も楽しそうだったのか、母は勿論、給料何ヶ月分もぶっ飛ばしたはずの父も笑顔だった。





いつも読んでくださりありがとうございます!

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