寮での初生活
「ここが寮だぁ!いつ見てもデカいなぁ!」
スイロウ先生が案内してくれたのはその声よりも確かにデカい建物。七階はあるぐらいで見上げるだけで首が痛い。
「お前達は二階だなぁ!学年ごとに一階ずつ上へと移動していくから最終的には七階になるなぁ!けどそれ以外のスペースもあるから活用するんだぞぉ!地下とかにトレーニングルームや図書館があるからなぁ!」
がっはっは、と笑いながらそれじゃあ行った行った!と送りだされる。正直寮で生活するのがまさか異性だとは思わなかった。前世では異性と関係を持つことなんて無かったので新鮮である。とはいえすぐに欲情する変態では無いと自分に祈っておく。
寮の中に入ると、優しそうなオバチャンが迎えてくれた。こちらを見るとニコッと笑いながら「待っておくれ、寮の説明をするからね」とお手伝いしている人達に仕事を任せてこちらへとやってくる。
「ようこそ学生寮へ。ここは皆の第二の家だと思ってくれていいよ。ただし規則……守るべき約束が幾つかあるからこれだけは覚えておくれ。
一つ、深夜にいきなり他の人の部屋に行ってはいけない
二つ、ご飯は朝七時と夜二十時の二回。もしお菓子とか食べたかったらお駄賃で買うか、その頃にこの場所まで来て仕事を手伝っておくれ。ご褒美にあげるからね
三つ。お風呂は一階の二つの浴場を男女でわけて使うけれど、入る時間は基本的に同じだから覚えておいてくれ。ばったり異性と会っても保証はしないよ、分かったかい?」
全員が頷くといい子たちだ。と微笑んで一人一人の手に何かの板を当てていく。なんなのだろう、と思ったけれど当てられてすぐにピンときた。
「魔力が吸い取られて、尚且つ鍵の説明がなかった……つまり、自分達の魔力が部屋の鍵に設定されるのですね」
「おや!頭のいい子がいたね!そうだよ、自分達の魔力が鍵になるから鍵の携帯は不要だよ。だけどまぁ、いろいろな方法で他の子の部屋に行こうとする子達がいるのさ!君たちはそんな事考えないと思うけど、鍵は必ずかけてから風呂や食事にきておくれ!」
オバチャンに褒められると、優しく撫でられる。ニコニコしながらヨシヨシする様子は本当のお母さんのようだ。
「今日は初日だから疲れただろうし、早めに休むといいよ!番号じゃなくて名前で書いてあるから頑張って自分たちの部屋を探しておくれ」
そう言って戻っていく。それだけ?と混乱するSクラスの皆に「多分Sだから階段から近いと思うんだ」と伝えると確かに、と納得された。という訳で中央の階段を上る。
思った通りで、中央階段を境界線として左が男子、右が女子だった。自分とシアだけは自分が十四歳な事を考慮されたのか女性の方だったが。
「頭、よく回るねー。それじゃ休むよ!」
そう言ってシアが一番に自分達の部屋に行って魔力を纏いながらドアに触れると、ガチャりと開く。なんてハイテクなんだ。
皆とそれじゃあまた後でと挨拶を交わすと自分もシアと同じ部屋に入る。
「いやー、まさかレテ君と同室なんてね。入学前から縁が続くねー」
「ははは……確かに。これからもよろしく」
「こちらこそよろしく!」
ぐっと握手をすると、部屋を見渡す。
二段ベッドと机が二つ、後は洗面所やトイレなどが設置されているようだ。ホウキが置かれているので掃除は自分たちでやるということだろう。
(二段ベッドがあるということは……)
「私上がいい!」
キラキラした目でベッドを指さしながらシアが言ってくる。そんなことだろうと思った。自分は下でいいよ。と伝えるとやったー!と喜んでいた。
こうしてちょっと変な学園生活がスタートした。
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