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異界の師、弟子の世界に転生する  作者: 猫狐
三章 破滅のタルタロス
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遠い記憶と現世

白衣の男は部下に次々と指示を出し続ける。


「この子供は神経を切らしてはいないが他の箇所の損傷が……脚が特に酷い!回復魔法を使用せよ!

魔力供給、どうなっている!報告せよ!」


現場の指揮を取りつつ、自身も光魔法でこの少年を回復させる。魔力計を見ていた一人から報告が来る。


「魔力供給、今のところ順調に行われています!ただ……不可解な現象が起こっていまして」


「不可解?魔力供給を続けながら説明せよ」


不可解な事例で命を落とさせるわけには絶対にいかない。全身を回復させながら報告を聞く。


「はい。魔力計の数値を見る限り、魔力供給は順調。このままのペースで行けば数時間で元の魔力に戻るでしょう。

ただ……魔力を供給し続けているにも関わらず、微量……ほんの微量ですが、

『この少年が魔力を使っている』形跡があるのです」


「……何?」


それはおかしい。この少年は既に気絶し、身体を動かすことどころか魔力は底を尽いている。なのに魔力が供給し始めた時、魔力が使われ始めたのは何故なのか。


「……引き続き魔力供給を続けよ!他の数名で魔力を使われている原因を特定せよ!

相手は子供といえど侮るな!あの王を護った英傑だ!一時も気を抜くな!」


そうして深夜の治療は続いていく。その時だった。


「……よ」


「……?」


子供が、何かを話した。いや、何かを発した……というべきか。その瞬間だった。


その右手に純白の盾が出現する。


【……お前は、強くなりたいのだな。ならばこれを超えるところからだ】


「なん、だ……この……盾は……!」


最早自分の意思では制御が出来ない。他の皆もそうだ。この純白の盾に惹き付けられるように近くに寄っていく。


「わかり、ません……!ただこの盾の顕現時、魔力が少し減りました……!」


「馬鹿、な……!彼は今気絶しているのだぞ……!どうやって……!いや、それよりも魔力供給装置を自動に、設定……せよ……!我々は……この温かな盾に……」


負ける訳にはいかない、と言いたいがその慈悲深き……聖母のような温もりに無意識に寄り添ってしまう。



「ほらほら、攻撃してきなよ」


「くっ……!師よ……!その盾、は……!」


夢の中、自分の経験を追憶するようにそれを見ていた。

そう、これは初めて『慈愛の盾』を誰かに使った瞬間。だからどんな効果があるのかは自分ですら分からなかった。

その時は名前はなかった、ただの純白の盾としか呼んでいなかったのだが。


「……あぁ、温かい……。貴方のその盾は……私の心に戦意よりも慈愛を感じさせる、そんな優しい盾だ……」


「おいおい、これはタダの盾……だぞ?自分で生み出しておいて効果は分からないけどな」


フラフラとやってくる弟子に対して本当に敵意や戦意が無いことを感じるとその盾を消す。


「……ハッ!?私は……今……」


「ふむ、盾を消すと正気に戻るか。するとこの盾に何かあるのかもしれないな」


自分の右手を見ながらそっと弟子は近づいてくる。


「貴方の盾はとても……とても温かい。それは時に戦意を奪い、時に心を癒す……そんな慈愛を感じます」


「……そうか、ならばこの盾は今日から『慈愛の盾』……と呼ぶことにしよう。何か名前があった方が楽だしな」


右手をそっと弟子に包み込まれながらしみじみと言う。ふと、弟子に言われた。


「……貴方はとても優しい。それが特異能力に現れたのではないのでしょうか」


「とく……?なんだ、それは」


あ、そうか。と弟子がポリポリと頭をかくと、説明してくれる。


「私の国……異界では魔法とは違う、特殊な能力が稀に現れることがあります。それが特異能力と呼ばれるものです。

師のその力は魔法に当てはめる事は出来ず、更に唐突に弟子にして欲しいという私の願いを叶えてくれる優しさを兼ね備えている……。

まさに、慈愛と呼ぶべき能力かと」


「そうか……。因みに、お前にその特異能力……とやらはあるのか?」


興味本位で聞いてみる。するとあっさり答えてくれたが、その顔色は真っ赤だ。


「私にもあるのですが……。その、ここでは使えません」


「何故だ?……一帯を破壊するとか、か?破壊するとか、か?」


「……使うと筋肉痛に……動けなくなるのです……」


「……」


確かに。それは使えないだろうと思った。

毎晩こっそり……かは分からないがそこで動けなくなったら彼は帰れない。使う訳にはいかないのだ。


「なので師は辛くなければ、その力を存分に使って私を鍛えてください」


「言ったな?……『慈愛の盾』よ」


意識して弟子の強くなりたいという感情を優しく諭すように願う。すると弟子はあっさりと陥落したのであった。

その次の瞬間、ふっと意識が消えた。



盾が消えた。その瞬間に治療室の中で即座に行動が開始される。


「仕方あるまい!魔力供給はそのまま、本意ではあるまいが彼の動きを闇魔法で縛れ!ただし相手は怪我人、更に子供だということを忘れるな!」


「了解!」


その次の瞬間、レテの周りに縛り付けるような闇の鎖が出現し、身体の中に埋め込まれる。


「効果は大体五時間ほど、大人に使用するものよりもかなり弱めに設定しました」


「よくやった!そのまま続けよ!幸いにも彼の再生能力は子供だからか光魔法による回復が効きやすい!魔術学院にて授業を受けられる程には回復させよ!」


こうして、不可解な盾の現象を体験しながらも深夜の治療は進んでいった。

更新遅れて申し訳ないです!いつも読んでくださりありがとうございます!

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