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異界の師、弟子の世界に転生する  作者: 猫狐
三章 破滅のタルタロス
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侵食

イシュリア王が掴まれている。ある程度案内屋との戦いで敵の能力が分かった自分はそれをさせることを許さなかった。


暴風を巻き起こし、強引に手を離させる。最早竜巻と言っていいほどだ。


「お前が、王か」


問いかけに対してその影は立ち上がり、笑う。余力など最早無いはずの身体で。


「そうとも。我が王。コキュートス。……案内屋を退けたか、小僧。だがその身体は治したてのはず。どうやって戦う?」

「どうもこうもない。ある約束に従って貴方を倒す」


そう言うと自分は両手に風の剣を顕現させ、持つ。

コキュートスはふぅ、と息を吐くとヤレヤレといった感じで言う。


「……約束?仲間とのか?……我は……負ける訳にはいかないのだッ!」


そう言うと、予想通り一瞬で距離を詰めてくる。やはり、と思いつつ風の刃で目の前を切り裂く。すると、相手は遠くへとまた一瞬で離れる。


「……コキュートス王。貴方の能力は『侵食』。人を蝕み、光を塗りつぶし、空間さえ侵食して食い潰す。それが貴方だ」


自分の言葉にコキュートスはフッ、と笑うとハッハッハと笑い出す。


「ああ、その通りだとも……まさか気づかれるとは思わなかった。して、わかったところで何になる?」

「何、分かれば対策が取れるということだ」


そう言って何もない空間を風の剣で緩く斬る。

するとコキュートスは目の前にやってくる。自分が風により空間を斬り、その空間が戻ろうとした時の風を利用してコキュートスを強引に引き寄せた。


「ぐっ!?」

「……仲間との約束もある。しかし、それ以上に貴方を想う人と誓ったんだ。貴方を解放すると!」


そう言うと風、火、土、水、光……属性を変えながら四方八方から騎士を顕現させて攻撃を仕掛ける。

その時、コキュートスの反撃も来る。氷の柱による騎士の撃破を狙って飛ばしている。しかし、それは不発に終わる。


「くっ……!」

「流石に賢王ならば気付くだろう。今の貴方ではあの騎士も、自分も捌ききれない」

「……ならば、我以外なら?」

「……何?」


そう言われた途端、騎士の一人が死角から撃破される。急いで距離を取ると、新しく騎士を顕現させて防御させる。

その時、イシュリア王が叫ぶ。


「今、味方の兵士が操られている!総員、フードの援護を!」

「「ハッ!」」


(……既に味方の意識を数人乗っ取ったか!)

防御しながらも空中にて飛んでくる氷の柱を魔力に包んだ手で掴むとそのまま投げ返す。

コキュートスはそれをひらりと避けると、氷の剣を持って距離を詰めてくる。

自分は火の剣を持つと、それを受け止める。


「多才なものよ!だが不思議だな。その魔力……どこから湧いてくる?案内屋と戦って貴様はボロボロになったと最後の情報が来たのだがな」


「不思議なものだな。ボロボロになったのは確かだがそれ以上に気付かぬとは」


「……何だと?」

「確かに傷ついた。あのままなら立ち上がることすら出来なかっただろう。だが……もう、見ることすら出来なくなったか?コキュートス」


そう言うと氷の剣の中央部分を溶かし、割れた破片を風を巻き起こしてコキュートスに襲わせる。

コキュートスはまたもや侵食により距離を取ると、地に伏したアグラタムの顔を掴む。

その瞬間、風による真空の刃がコキュートスの腕を飛ばした。


「ぐ、ぐ、ぉおおお……!」

「いつかはアグラタムを掴むと分かっていた。しかしその瞬間に手を……侵食そのものを阻止してしまえば問題はない」


次々に真空の刃を飛ばす。コキュートスはそれを避けながら真空を侵食することにより、真空の刃を手に入れる。

周りの枯れた木々は倒れ、地面にも刻むように跡が残る。見れば既に地面は荒れた後だった。アグラタムが暴れたのだろうか。


「隻腕にはなったが侵食は腕がないと出来ないとは誰も言っておらん。その刃、我が片腕にさせてもらうぞ!」


そう言って侵食により来る瞬間、風を消す。そして手に光の剣を持ってその瞬間を待つ。


「……!」

「その魔法は自分の魔法。ならば侵食されたとて強引に消去することなど容易い」


真空の刃に光の剣をぶつけて消滅させると、回転斬りの勢いでコキュートスの身体を新しく生成した火の刃で切りつける。


「ぐっ……!」

「距離はもう、取らせない」


そう言ってコキュートスが逃げるであろう先に土の壁を素早く顕現させる。するとコキュートスが壁に思い切りぶつかる。


「ぬぅっ!ならば小細工無しといこうではないか!」

「ほう……?」


氷の柱を纏わせながらその手に闇の剣を持って突撃してくるコキュートスに対して、自分は火の騎士を顕現させて対処させる。そして光の剣を持つと闇の剣と鍔迫り合いをする。

お互いの魔力が弾ける中、問いかける。


「まだ気付かぬか?コキュートス」

「何にだ……!」


光と闇が交互に散る。それはまるで花火のような光景であった。


「何故自分は立ち直ってここにいるのか。その中身をよく見ると良い」

「中身、だと!?」


互いの剣が弾け、お互い距離をとると自分は何の変哲もない騎士を顕現させる。

コキュートスは自分をじっと見て、ハッとする。


「……まさか、そんな……馬鹿な……!バカな……ッ!」

「そんな馬鹿なことがあるんだよ!この破滅に向かう世界でもな!」


そう言うと自分の中にある『ティネモシリ』の光を変哲のない騎士に移した。

いつも読んでくださりありがとうございます!

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