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異界の師、弟子の世界に転生する  作者: 猫狐
三章 破滅のタルタロス
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見捨てはしない

一方、ミヤコ撹乱部隊。第六部隊が必死に子供を探し回っていた。


「行為探知の方角はこちらで合っているのだな!?」


部隊長が叫ぶと魔術師が頷く。


「はい!小さな身体を捉えております!……ただ、他にも別の魔力が……!残りの影と戦闘をしている可能性が高いです」


その言葉を聞いて部隊長が命令する。


「移動速度を上げよ!小さきながら覚悟を持ち、尽力する彼らの命をここで散らすなッ!」

「「ハッ!」」


そう言って既に倒れ、燃え盛る街の中を飛んで行った。



一方でその小さき兵士はというと、苦境に立たされていた。


「ゲンブ!」


私が特異能力で結界を展開すると、怪我を負ってしまったクロウが後ろに下がる。


「いってぇ……!」

「……俺の光魔法では治癒が出来ない。済まないが我慢してくれ」


そういうレンターの声は悔しそうだった。こんな時アイツなら?レテなら?怪我をさせることなくこの場を切り抜けただろう。


(……実力、不足……!)


それがただただ悔しい。しかしそれを悔いている時間もない。迫り来る影に光の球を上空に投げつけ、詠唱する。


「『光の柱』ッ!」


その声とともに天から光が降り注ぐ。一段落したか、と思ったその瞬間にまた別の影が現れる。


「『闇の獄』!……ニア!、捉えましたよ!」

「任せて!せいやぁっ!」


ミトロの魔法により狭い空間の中で複数の闇の線が飛び交う中、殲滅者を発動させたニアが魔法ごと敵を消し飛ばす。


「……気分、悪ぃな」

「……良くないよね〜」


ダイナが広域化系統の風で敵を逆にこちらに寄せると、ショウが顕現にて炎の剣を持って一刀両断する。その度に鮮血……いや、血の臭いのする液体が撒き散る。


(その血にすら、光はない……)


シアがゲンブを消すと、急いでクロウの元に向かう。


「クロウ、歩ける?」

「……いや、無理だ。足に貰った」


見れば脚が大きく抉られている。痛々しくも、それで何とか気を保っているクロウの忍耐力にこんな場所だが尊敬してしまう。


「ッ!上!」


ミトロが叫ぶと、真っ先にショウが上に炎の盾を顕現させて防ぐ。


「長くは持たねえぞ!クロウを連れて退避しろ!」

「でも、それじゃあショウが……!」

「この場は何とかする!ていうか遠くまでは行くな!迷子になる!」


何だかいまいち噛み合わない会話をしながらも、レンダーがクロウを抱えて退避する。そしてそのクロウが、収縮させた岩の弾丸を敵の頭に向かって放つ。


「ガ……」

「助かったぜ、クロウ」


皆で安心している中、空から声が聞こえる。


「大丈夫か!」

「おい!怪我人が複数人いるぞ!この場で応急処置が出来る魔術師は応急処置を!早く!」


援軍が来てくれた。クロウも応急処置の光魔法を受けたことにより楽になったようだ。


「よく戦い抜いた。その諦めぬ心に敬意を表する!合流地点まで共に行こう!」

「「はい!」」


そう言って部隊の人に背負われながら合流地点へと向かった。



「司令!子供の救助を完了しました!」

「良くやった!……これで全てか?いや、少ないな……」


司令……レテのお父さんが呟く。


「ですが隊長。既にミヤコは崩壊状態。連絡も取れず……」

「連絡役がやられたか、クソッ!」


錯乱、戦闘。そんな事があれば当然身の安全など無い。だから部隊全員が生き残る確証なんでどこにもなかった。

けれど私は叫ぶ。


「……探しましょう。私の特異能力で人を見つけ出します」


その言葉に別の部隊長が叫ぶ。


「無茶だ!君たちにもうそんな力は……!」


目をギュッと瞑って、そして見開く。


「……イシュリア王は優しい方です。死人が出る、その事も想定しているのでしょう。……ですが!救える希望があるのならやるべきです!こんな時イシュリア王、アグラタム様、そして……ラクザで限界までラクザの人を守ったフード!彼らならどうするか!もう一度考えてください」


その言葉に一瞬静寂が訪れる。その後、大きな声でレテ君の父親が声を上げた。


「そうだ!イシュリア王も、アグラタム様も、そしてフード……我が息子も、そして民も!犠牲は望んでいない!探せ!救える命をひとつでも多く救うのだ!二部隊ずつに別れて東西南北を捜索せよ!これが撹乱最後の作戦とする!」

「「了解!」」


そう言うと皆が飛んでいく。その中、私は両手を合わせ、とある獣を呼び出す。


「『ビャッコ』!生存者を探して!」

「ウォーン!」


そう咆哮を上げると、とある方向へと向かっていく。


「お願いします!あのビャッコの向かった方へ!」

「承知した!幼き兵士よ!我々の背中に乗るのだ!」


皆が乗り、そして出発する。

十数分後、ビャッコが辿り着いた先にはボロボロになった部隊がいた。


「六番隊!負傷した兵を発見!位置は──」


連絡している間にも衰弱していく人々を見て、やるせない気持ちになる。


「何か……何か出来ないの……」


その時、ふと声が聞こえた


──私を呼びなさい。四神を呼ぶ者よ──


その声は私にしか届かなかったらしく、他の人は必死に手当している。だが確信を持って私は両手を合わせて呼び出す。


「お願い!皆を……民を守って!『セイリュウ』!」

「その命令、しかと承りました」


突然の声に皆が驚く。


「な……喋って……」

「それよりも、何を……!」


その言葉に応じる事はなく、淡々と身体の細長い龍は話す。


「今から一瞬、彼らを『麻痺』させます。その隙に安全地帯へ」

「麻痺だと!?そんな負荷を……!」


兵の一人が叫ぶ中、またしてもレテ君のお父さんが話す。


「麻痺。つまり一時的に身体の痛みを止めるということだ。その隙に門へ飛び込み、急ぎ治療施設へと運ぶ!全部隊に通達!各自門を展開、イシュリアへと帰還せよ!先に戻った者は負傷者の手当の準備を!」


そう叫ぶと別の人が門を開き、そこに飛び込む。


「ありがとう、セイリュウ」

「私達は貴方の力。ご存分にお振るいください」


そう言ってセイリュウは消えた。そして、私達も門に飛び込んだ。

そして、玉座の間に着いた途端に、意識を失った。

いつも読んでくださりありがとうございます!

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