合否結果
数日後。また呼び出されることも無く、家でまた窓から顔を出してぼーっと魔力の鍛錬をしていた。
今日は土……正確には石ころを作ってはそれがどれだけ綺麗なものに出来るかどうかという遊びをしていた。水魔法の布を作ってゴシゴシしてみたり、同じ土魔法でヤスリを作ってピカピカにしてみたり、と。
今日は試験の合否の結果が出る日だ。父さんも帰ってきてお昼を食べたら皆で見に行く予定となっている。
「レテ〜ご飯できたわよ〜」
「今行くよ」
考えてみたらなんとやら、ちょうどご飯ができたようなので綺麗になった石ころを霧散させてリビングへ向かった。
「レテは受かっているよな……受かっているに違いない……」
父が移動用の馬車でそわそわしている。
「もう、アナタがそわそわしてどうするのよ……」
そういいながらも母も若干そわそわしている。やはり子供の合否、その上飛び級入学ともなれば不安もあるのだろう。その為に試験では一手打っておいたわけだが。
無事学院に着くと、既にクラス分けされた番号が載っていた。
「えーっと、106番106番……」
多い。クラスが分かれているせいで余計どこにあるか分からない。
どうやら下からCクラス、B、A、Sとクラス分けされているようでざっと見ていく。
Cクラスが一番人が多く、相対的にSは少ない。
試験で一応試験官を驚かせたのだ。ならば……
「父さん、母さん、あったよ」
「本当か!」
「どのクラスになったの?」
ビンゴ。Sクラスである。座学の得点もかなり取れているが、魔力測定のアレがやはり大きかったようだ。魔力の訓練ができると気づいた時から怠ったりしていない成果が出た。
「あれ?レテ君じゃん!私はSクラスになったけどレテ君もSクラスになった?ね、どうなの?」
横からふと声をかけられてみれば、人混みの中から出てきたシアがいた。合格する事自体は最早疑っていないのは何故なのか。
「シア、久しぶり。自分もSクラスだよ。同じクラスメイトとしてこれからよろしくね」
「やったぁ!あ、レテ君のご両親様だね?
初めまして、シアと申します。レテ君には試験の時少し縁があって友達にならせていただきました。よろしくお願いします」
そう言って一礼する。そうか、友達か。この関係性を呼ぶならそれが一番適している。
「可愛らしい子だね、シアちゃんと言うんだね。ウチのレテを頼むよ」
「これからもレテと良い友達でいてくださると助かるわ」
父と母も一礼し、それぞれ言葉を交わす。
さて、合否の確認もできたし帰るとするか、と思ったその時。
「あ、レテ君。入学生首席だって、首席!凄いじゃん!」
表を見ていたシアが何故か嬉しそうにこちらに声をかけてくる。首席、首席……。
「あら!流石はウチのレテだわ!首席だなんて凄い!」
「うむ、父さんとしても誇らしい」
父さんと母さんは喜んでいる。一方自分は確認しなければいけないことがあると確信して早く帰るよう諭して、家に帰った。
夜。この前のアグラタムと同じ要領で門を開ける。門を開けるのは意外と簡単で、相手の魔力の場所を辿って道を一本に繋げる感覚だ。そのままするりと門を通ってアグラタムの部屋に入る。
……いない。そりゃそうだ。深夜こそ護るべき人の所にいるはずだからだ。そう思って今度はイシュリアの私室へ門を開いた。
「夜分遅く失礼します」
やはり居た。反射で攻撃を仕掛けてきたアグラタムに対して右手の盾で防ぎながらそのまま挨拶すると、アグラタムも攻撃を辞める。
「あら……レテ君、だったかしら。こんな夜分遅くにどんなご用事?」
ベッドから少し起き上がってこちらを見るイシュリア様。どうやら寝る直前だったらしい。
「イシュリア様というよりも、そこの弟子に質問が」
そう言ってアグラタムの方を振り向くと、キョトンとした顔でアグラタムは自分?と指さしていた。
「首席にされたんだが、これって何か挨拶とか考えなきゃいけないやつ?」
「あ、あー……考えないといけないですね……というかその為だけに門を開いてきたのですか……?あれも一応秘匿された魔法なはずなんですが」
「何、弟子の魔法ぐらい一度見れば覚える」
やはり考えないといけないのか。どうしようと思っていると唐突にイシュリア様が笑う。
「ふふ、あはは……いえ、笑ってごめんなさいね。貴方ほどの実力者でも、やっぱりこの世界で分からないことは分からないのだなって、そう思ったら笑いが出ちゃったのよ……それも父様と母様に聞かないでここに来るなんて……」
「こっちに聞きに来た方が確実かと思いまして。両親は首席には喜びしかありませんでしたし、いきなり首席からの言葉、なんて聞かされても思い浮かぶものではないですから」
丁寧に説明していくと、更にあはは……と笑う。イシュリア様はもしかすると、プライベートではツボが浅いのかもしれない。
「それでは帰ります。つまらない時間を取らせて申し訳ありません」
「ふふ、大丈夫よ。むしろ夜はアグラタム以外に誰も来ないから暇なの」
「……まあ、確かにそうですが」
アグラタムが苦笑いしながら答えると、自分は自分の魔力を辿って家に門を開けて帰る。
そして自分のベッドに着くと、門を閉じて寝ることにしたのだった。
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