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異界の師、弟子の世界に転生する  作者: 猫狐
三章 破滅のタルタロス
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決戦前日

「……とりあえず帰らないとマズイね」


イシュリア王が号令を発するとなれば学院でも何かしら連絡があるだろう。ジェンス総長直々という可能性も高い。


「そうだね。えっと……」

「……ここから、帰る?」


ジーッと周りから見られながら居心地悪そうな双子がいた。ほかの皆も何だかんだ注目されている。


「そうだ、レテ。お前どうやってここまで来たんだ?馬車か?」


父さんからとても回答に困る質問が来た。門を使えるのは軍人でも一部。さてどうしたものか、と考える。


(……門使えるってバレたらそれはそれで何かやだな、何だろうこの気持ち)


秘密を隠したままにしたいという心情から、チラッとアグラタムを見る。するとアグラタムが察したのか、前に出てくる。


「失礼。彼らの進捗は私が門を秘密裏に開き聞いていたものです。今日も私が門を開き連れてきたのです。なので帰りも私が寮まで送りましょう」


そう言うと父さんは納得してくれた。大きく頷くともう一度ギュッと抱きしめてから解放してくれた。


「あー、その……なんだ。……いや、かける言葉になんて細かい考えは要らないな。

夏休み、家で母さんとかき氷を一緒に食おうぜ」


その時に少しだけ自分から横に立っているシアにも視線が向いて小さく笑顔を見せたのを見逃さなかった。無論シアも気づき、笑顔で返す。


「それではアグラタム様。子供を頼みます」

「はい。それでは門を開きます」


そう言うとアグラタムが門を開き、逆に自分が真っ先に入る。

自室の奥まで行くと、全員が戻ってくる。そして門は閉じた。


「自分で門を開かなくて良かったの〜?」

「そうだぜ、自分の力を父親に見せるチャンスだったんじゃないか?」


ダイナとショウが言うので少し本心と離れた答えを返す。


「……恥ずかしいじゃん。フードだとバレた上に門を開けるのが分かったら」

「……んー?フードならそのぐらい出来るって思ってそうだけどね〜」


その通りだ。フードならその程度は容易く出来る。父さんもそれは分かっているはずだ。それでも門を開けたくなかった理由は一つ。

怖かったのだ。父さんから畏怖の目で見られることが。それでシアと共に帰れなくなるのでは無いのかと。

神童、実力者……それで済む言葉ではない。門とは秘匿された魔法。それで父さんに距離を取られることを自分が怖がったのだ。

そう思っていると何やらアナウンスが入る。


「イシュリアの民よ!聞こえているだろうか?私こそがイシュリア皇国が女王、イシュリアである!」


魔法のアナウンス……恐らくイシュリア全域に声を届けているはずだ。膨大な魔力量に感服しながら続きを聞く。


「我がイシュリアは明日、イシュリアの安全の為に異界を滅ぼす!そこで親愛なる民の皆に願いがある。今日の夜から明日……もしかしたら数日かもしれない。その間は安全を固めて欲しい。別の異界からの侵攻が無いとも限らない。出来る限りの自己防衛を頼む!その間、店や学院……他の施設に及ぼす金銭的な影響は後日補填しよう。だから店を閉め、恐怖に怯えることはなく、安全な場所に固まっていて欲しい!」


そう言ってアナウンスはプツリと切れる。


(……待て。もしかして今のアナウンス……!)


慌てて魔力を練って部屋の中の皆に魔法ではなく魔力を当てる。するとふらり、とした後に自分の方を見る。


「う、ううん?何か……明日俺は攻めなきゃいけないはずなのに休まなきゃって気になって……」

「……俺もだ。レテ。今の魔力は……」


やはりか、と思った。こんなアナウンスをしては変な輩が活動するに決まっている。しかしそれを恐れる事無く全域に声を届けた理由がそこにある。


「……イシュリア様は声に魔力を込めることで半ば洗脳のような形で皆を固めるようにしたんだ。恐らく軍議にいた人は平気だろうけど……先に帰ってきた自分達はその影響を受けただろうと思って急いで魔力で打ち消した」

「レテ君……どうやってそんな事実を知ってくるのですか……。いえ、それよりも打ち消してくれてありがとうございます」


ミトロに今じゃなかったら確実に深堀されそうな所を突かれるが、何とかなった。その後、学院のアナウンスの音が入る。


「学院の皆。総学院長ジェンスである。今のイシュリア王の放送の通り、イシュリアがタルタロスの殲滅を終えるまで学院は無期限の休みを設ける。部屋から出るなとは言わない。だが自分の寮からは出ないでほしい。休むもよし、鍛錬するも良し。勉学に励むもよし……その使い方は君たちに託そう。それでは放送を終える」


そう言って放送が終わる。だが自分達は別の言葉を口にしていた。


「……明日。そこからの戦いで影に決着がつく」

「ラクザを襲った事、後悔させてあげる」


二人が闘志を燃やす。


「影の世界……どんな所なのでしょう?」

「……滅ぶ世界だ。ならば生きた影とその姿を後世に語り継ぐ存在になれるように、俺たちは覚えておかなければな」


二人が知的好奇心により、その存在を覚えようとする。


「今までやられた分やり返す!」

「だね!やり返すしかない!」

「ラクザの時や学院の時みてぇにはいかないからな!」

「ふふ〜死なないぐらいに頑張ろ〜」


四人がやる気たっぷりに活を入れる。


「……私達は負けない。そうでしょう?レテ君」

「負けるもんか。愛に狂った王が相手ならそれを鎮めるのが愛を持ったやつの役割だからな」


二人が決意を固めた。

いつも読んでくださりありがとうございます!

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