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異界の師、弟子の世界に転生する  作者: 猫狐
三章 破滅のタルタロス
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皆の結果を聞く前に

その夜。まさか寮に帰らないわけにも行かなく、約束通り皆ご飯の前にレインさんの屋敷の前に集まった。

あの後、ファレスとフォレスと共に本を読んだが難しい。とにかく知識が要求される。当然なのだがそんな軍師のような知識なんてものはないので、三人で手がかりになりそうな部分だけを途切れ途切れで収穫として持ってきた。


「よし、時間通り……かな?」


何せもう夜である。大まかな時間しか分からない。腕時計なんて便利な魔道具は持っていないので時間通りだと信じたい。


「それじゃレインさんの部屋貸してもらおうか」

「……レテ君。いつの間にレインさんの部屋気軽に借りられるような関係になったの?」


呆れたようにシアが言うがいやいやいや、と両手を振る。


「し、仕方ないじゃないか。子供じゃ郊外にはこの時間だと出られないし、レインさんにはもう見られているから……そこしか門を開けないんだよ」

「……とにかく、オバチャンの夜ご飯を食べてから各方面の成果を報告しよう。もう腹ペコだ」

「俺も……」


レンターが上手く纏めてくれると、今にも空腹で倒れそうなショウが腹を摩っている。


「それじゃ入ろっかー!」

「……私たちがいるから、レテ君以外も入れる」


思うが、レインさんの屋敷……というよりラクザの街はこの双子の発言権が強すぎる気がする。けれど、乱用しない辺りそれが許されているのだろう。


「門兵さん夜までお疲れ様ー!」

「……お疲れ様です」


二人が戻ると、昼に開けてくれた門兵さんは友達が増えた事は気にせず、門を開けてくれた。そのままレインさんの部屋を目指す。

コンコン、とノックをする。中から本日二回目の問いが聞こえてくる。


「む?何用かな?」

「お父様、今大丈夫でしょうか?」


昼間注意されたからだろう。一応ファレスがお嬢様になって確認している。天真爛漫とお淑やか。ある意味二面性だなと思いつつフォレスの方を見る。


「……?私の顔に何かついてる?」

「いや、何でもない」


フォレスは物静かでお淑やかだなと思っただけだが、即座に気づく辺り割と反応速度が良いのかもしれない。双子は似るという事だ。


「はは、昼間注意したからか。……大丈夫だよ。どうぞ」

「じゃあ失礼します!」


変わり身の早さも若干慣れつつ、中に入る。ぞろぞろと中に皆で入ると、レインさんが首を傾げる。


「……む?大勢揃って私に何か用事かな?執事長にはキチンと許可はしたと言ったが……」

「いや、学院に帰りたいんですけど、その……門を開ける場所がここしか無くて……ですね……」


申し訳なさが込み上げてくるがタルタロスで若干住民が怯えている中、隠れながら門でも使えば問題に発展しかねない。

恐らくその事が分かったのか、静かに頷くとレインさんが言う。


「なるほど。……中々興味深い術式ではあるが、私では使えない。時間がある時にでも教えてもらいたいものだ。はっはっは!」


多分本気でこの人は教えて欲しいと思っているのだろう。最後の笑い声で誤魔化されてはいるが途中の言葉は本気だった。


「では部屋をお借りして……はい」


門を自分の寮の部屋に繋ぐと、皆で礼をして中に入っていく。いつも通り、最後に入ろうとした時に一言だけ聞かれた。


「本は……役に立ちそうかね?」

「ええ。……と言っても、自分は基礎知識が無いので必死に解釈しましたが」

「そうか……ならば良かった」


それを聞くと自分も中に入って、全員が自分の部屋に居ることを確認したら門を閉じる。


「とりあえずご飯を食べ終わったらまたここに集合だな」


クロウが言うと、シアが苦笑しながら反応する。


「一応、私とレテ君の部屋なんだけど……いいよ」

「あ、自分の意見は……」

「別にレテ君もいいよね?」

「……うん」


ダイナやニアからすっかり上下関係が出来てるね〜とからかわれつつ、皆で部屋を出た。

食堂に行くと、良い香りが漂ってくる。スパイスの良い匂い。これは……。


「カレーか!」

「よっし!大盛りだ!」


自分とショウが大喜びするのを見て、他の皆もふふ、と笑う。その中でもミトロが一際大きく反応した。


「ほらほら、早く行かないと私が取っちゃいますよ?私もお腹空いてるんですからね?」


大食いではないミトロにしては珍しい発言だ。図書館でもどうやら苦労したらしい。


「……実はミトロ、休んでないの。私とレンター、ダイナは一応軽く食べたんだけど、ミトロは私は出来ることをしたいから、って……」

(……なるほどな)


ミトロは知的好奇心が強く、それ故に頭の回転も早い反面恐らく有事の時には自分の身体も厭わないタイプなのだろう。

本来ならば彼女だって普通に学び、調べたいことだってあったはずだ。ラクザの図書館なら尚更その類の本など沢山あっただろう。

なのにそれをさせてあげる事が出来なかった。皆の許可を得たとはいえ、行動を縛ってしまった心の痛みが襲ってくる。


「……」


クロウだって、あの商人の子供と遊んでやりたかったはずだ。ショウも、ニアも、ファレスも、シアも。ほかの皆も。

だからどんな形であろうと落ち着いたら、今度はラクザで好きに行動させてあげたい。


(そのぐらいならイシュリア様に頼めばこっそり護衛つけてくれるだろう……)


そう思いながら、大盛りのカレーに駆けつける皆を追いかけながら思った。

いつも読んでくださりありがとうございます!

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